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平成21年01月27日

研究報告第22号

1.大果系イチゴ品種「アイベリー」の先つまり果発生原因とその対策(第1報)発生原因の解明と各種関連要因の推定

森利樹・庄下正昭・西口郁夫

  1. 花器の基部と先端部、それぞれの雌ずいの受精能力が最高になる時期は、基部で開花翌日、先端部は開花7日後であった。
  2. 先つまり果の発生原因は、花器基部と先端部との雌ずい発育の差であり、開花時に先端部の雌ずいが受精可能な状態にまで生育していないためであると考えられる。
  3. 先つまり果の発生には、果実当たりの種子数、花数、葉面積及び定植から開花までの日数が関与していることが示唆された。これらから、3つの要因、すなわち、花の大きさ、光合成同化産物の供給能力と競合関係および花の分化形成速度が関係していると推定される。

2.大果系イチゴ品種「アイベリー」の先つまり果発生原因とその対策
(第2報)花器の分化形成速度の品種間差と先つまり果の発生に及ぼす光合成同化能力の影響

森利樹・西口郁夫

  1. 先つまり果の発生要因である花の基部と先端部との間の雌ずいの発育差について検討するため「アイベリー」と「女峰」において花器の分化形成速度を比較した。
    1. 雌ずいの分化はじめから分化完了までの雌ずい分化所要日数は「女峰」が18日間、「アイベリー」が24日間であった。「アイベリー」は「女峰」に比べて6日間長く初期に分化した基部の雌ずいと、終期に分化する先端部の雌ずいとの差は、「女峰」よりも大きいと考えられる。
    2. 1番花の雌ずいは、「女峰」が385個に対して「アイベリー」が503個と明らかに多かった。雌ずい分化期間中の1日当たりの分化雌ずい数は、「女峰」が21.4個で「アイベリー」が21.0個と大きな差はなかった。従って、雌ずい分化所要日数が「アイベリー」で長い原因は、分化する速度が遅いのではなく、分化する雌ずい数が多いためであると考えられる。
    3. 分化後の雌ずいの発育速度は、基部の雌ずいでは「女峰」と「アイベリー」の間になかった。しかし、先端部の雌ずいでは、「女峰」に比べて「アイベリー」が遅く、両品種の間の発育差は分化完了時の差に加えてさらに拡大する傾向が見られた。
  2. 分化後の先端部雌ずいの発育に及ぼす光合成同化能力の影響を調べるため、葉面積の急激な制限による光合成同化能力の低下時期が、先端不稔種子率に及ぼす影響を調査した。その結果、先端部の雌ずいが分化してから葉面積が急減するまでの期間が短いほど、先端不稔種子率は高くなる傾向が見られた。このことから、光合成同化産物の供給量が充分でない場合には先端部の雌ずいの発育が遅くなり、先つまり果が発生しやすくなるものと考えられる。

3.シクラメンの底面給水栽培における施肥法に関する研究

西田悦造・中野直・鎌田正行

シクラメン大規模栽培の省力化を図る一方法として普及しているC鋼を利用した底面給水栽培における施肥法および施肥量について比較し、品種、鉢サイズによる違いは多少あるものの、緩行性肥料または液肥を利用することにより良品を省力的に生産するための施肥法が組み立てられた。

  1. 緩効性肥料の場合、施肥は元肥のみとし、鉢上げ時に5号鉢当たりIBワンス1~2粒または、ロング180タイプ7.5から10gを施用する。

  2. 液肥の場合、N濃度は、5~6号鉢生産で鉢上げ~9月中旬まで24~30ppm、9月下旬以降出荷まで40~50ppmの液肥を常時トイに給液する方法が適している。
  3. 液肥の場合、Nに対するP、Kの比率は同率で問題ない。

4.蓮台寺カキの果実型について

服部吉男

伊勢市の天然記念物である蓮台寺カキを調査したところ以下のことが明らかとなった。蓮台寺に見られる果型の変異を在来系、太平系小判型、どう菊型、同ヘソ型に分類して調査した。

  1. 在来系は果実が小さく、種子多く、やや腰高であり斜線溝、側溝が少なく、2重柿性はわずかである。
  2. 太平系小判型は、果実横断面が長形で果実の大きさは中くらいで、やや腰高であり斜線溝、側溝も中くらいであり、2重柿性はわずかである。
  3. 太平系菊型は、果実大きく扁平であり、斜線溝多く2重柿性も有する。
  4. 太平系ヘソ型は果実大きく側溝多く、顕著な2重柿性を有する。
  5. 4つの果型は1樹内に見られることがある。
  6. 蓮台寺のヘタ片数は5枚以上のものが比較的多く、花弁数も5枚以上が普通であり、子室数も10以上のものが多い。
  7. 伊勢市ではヘソ型のように果型の乱れたものでも評価は高いが、蓮台寺カキを知らない消費者には小判型の評価が高い。

5.三重県の農耕地土壌に関する研究(第5報)土壌環境基礎調査から見た土壌管理および土壌の実態について

安田典夫・石川裕一・大森螢一・米野泰滋

これまで、農耕地土壌の生産力については地力保全基本調査(1959~1977年)によって土壌の種類別に明らかにされているが、1979年から実施されている土壌環境基礎調査データを用いて、最近の土壌の実態を明らかにした。

  1. 三重県の水田における土壌管理実態について、有機物は堆肥やきゅう肥の施用は少なく、生わらの施用が多かった。また、土壌改良資材はケイ酸石灰および熔リンの施用が多かった。普通畑では野菜を中心として有機物の施用が多く、樹園地では有機物は茶園で施用が多かったのに対し、果樹園では少なかった。
  2. 土壌系群別の水稲収量は、細粒灰色低地土・灰色系、中粗粒灰色低地土・灰色系、細粒強グライ土、細粒グライ土、中粗粒グライ土が比較的多く、表層腐食質黒ボク土、礫質黄色土、礫質強グライ土は少なかった。
  3. 水田土壌の変化について、作土の厚さや腐食含量は低下したが、可給態リン酸およびケイ酸は増加した。
  4. 主成分分析の結果、水田作土の物理・化学性を総合することによって全体変動の約60%を説明する第1主成分、第2主成分を抽出できた。第1主成分は腐食の集積、第2主成分は塩基状態による作土の肥沃度を総合した因子と考えることができた。
  5. 第1、第2主成分スコアによる解析の結果、多くの土壌で作土の腐食が不足しており、有機物の多投に重点をおいた改良が必要であった。また、腐植質多湿黒ボク土についてはリン酸対策が、礫質黄色土については塩基の補給が重要な改良対策であることが示唆された。

6.稲ホールクロップサイレージの品質評価

浦川修司・水野隆夫

稲ホールクロップサイレージの発酵品質評価、栄養評価のために、近赤外分光分析計の利用を検討し、さらに流通のための総合評価基準を設定した。

  1. 稲ホールクロップサイレージの発酵品質を評価する場合、発酵形態、嗜好性から考慮して従来のフリーク法よりも「新評価法」を用いる方が望ましいと考えられた。
  2. 発酵品質関係の各成分をNIRSで推定するための検量線を作成したが、必ずしも推定精度の高い検量線は得られなかった。しかし、判別分析によりサイレージ品質を大まかに分類できることが示唆された。
  3. 栄養評価のための各成分をNIRSで推定するために、未乾燥サイレージを用いて検量線を作成した。その精度は、各成分とも推定精度の評価指数(EI)で分類するとBランク以上となった。
  4. 稲ホールクロップサイレージの総合評価のため、AHP手法により各成分の重要度を算出し、総合評価基準を設定した。

7.牛の胚移植技術に関する研究(第3報)体外授精技術の確立

西康裕・榊原秀夫・余田行義

和牛の卵巣を利用した一連の体外受精・体外培養の技術の確立を目的として、未成熟卵子回収方法、完全体外培養条件、媒精に用いる溶液、凍結方法について検討を行ったところ以下の成績が得られた。

  1. 未成熟卵子回収方法では注射器・メス併用法の回収卵数が多かった。
  2. 完全体外培養の条件では、培養液として粉末培地を基に調整したTCM199が、共培養においては卵丘細胞と培養した卵の胚盤胞への発生率が高かった。CO2濃度に関しては5%と4%で胚盤胞発生率に差はなかった。
  3. 媒精に用いる溶液では10倍濃縮保存BO液(使用時に10倍希釈)が新鮮BO液とほぼ同等の分割率であった。
  4. 凍結方法では胚の凍結に用いる耐凍剤については、エチレングリコールによる生存率が高く(54.7%)、直接移植法の適用の可能性を示唆した。

8.肉用鶏における去勢とその影響

佐々木健二・出口裕二

去勢鶏はフランスにおいて最高級鶏肉とされているため、本試験において去勢鶏の性能調査を目的に試験を実施した。

  1. 去勢は肋間法で21日齢時に行った。手術の影響で初期の増体は雄よりも劣ったが、その後回復し、110日齢時にはその差はなくなった。
  2. 飼料摂取量は去勢が少なく、去勢の飼料要求率は最も優れた。
  3. 肉質では去勢は保水力が優れ、肉中の粗脂肪含量が少なく、粗蛋白質含量が多く含まれる傾向を示した。
  4. ももの肉色の赤味は去勢が最も薄くなった。
  5. 食味検査では、僅かに雄より去勢が好まれる傾向を示した。

9.地下水の揚水に関する研究(第1報)自由面地下水の場合、砂礫の透水係数算出方法

磯島義一

  1. 井戸の中心、鉛直線をy軸、砂礫層の下の面との交点を原点とし、水平方向にr軸をとる。任意の半径rにおける地下水位をy、もう一つ任意の半径Rにおける地下水位をHとすると
    h=H-y=Q/2pπkH×ln(R/r)(4)
    但しQは揚水推量、kは透水係数である。2基の観測井戸で水位観測すると、透水係数は算出できる。同時に次に示す方法で透水係数を求めることができる。
  2. 揚水井戸で流量を観察すると同時に、井戸の水面低下を観察することにより
    λ/(4tH)R2-Q/(2πHh)×lnR/r-Q/h×1/Σ(a/l)=0(8)
    k=λR2/(4Ht)(7)
    これを変形するとR=√(4kHt/λ)(7')
    (8)式及び(7)式より、影響圏半径及び透水係数を求めることができる。但し
    λ:砂礫の空隙率
    t:揚水時間
    H:帯水層の厚さ
    R:影響圏半径
    r:井戸の外側における半径(Σ(a/l)算出する時、決定する)
    Σ(a/l):作図によって求める数値

10.地下水の揚水に関する研究(第2報)被圧地下水の場合、砂礫の透水係数算出方法

磯島義一

λ/(4tH0)R2-Q/(2πH0h)×lnR/r-Q/h×1/hΣ(a/l)=0(7)
但しH0:帯水深、被圧地下水
λ:砂礫の空隙率
t:揚水時間
r:井戸の外側から内側へ地下水が流入するとき、流線より得られる数値、aは流入断面、lは透水長さ、透水係数kは(6)式よりk=λR2/(4H0t)

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