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平成21年01月27日

研究報告第7号

1.カキの果頂裂果に関する研究(第1報)着果条件が果頂裂果に及ぼす影響

橋本敏幸・玉村浩司

前川次郎には、花器の形態的特性により果頂裂果が生ずるので、その対策として、結果条件の要因別に調査を行なった。

  1. 結果母枝の条件として、母枝の伸長方向が斜上の場合は、水平方向に比べ裂果が多く、母枝の強弱による影響は少なかった。また、母枝当たりの着果数が多いと裂果は増加した。
  2. 結果枝の条件として、母枝の伸長方向が斜上の多い慣行園の場合は、短結果枝に比べ、長結果枝に裂果が多かった。
  3. 果実条件として、大果は小果に比べ裂果が多く、結果枝上の着果位置は、上部に比べ、下部は裂果が多かった。
  4. 以上の結果、果頂裂果は横内の樹液の流動が容易な条件の場合多いと思われるので、今後、せん定、摘果の参考資料に供したい。

2.コーングルテンフィードおよぴみかんジュース粕の肉豚への給与に関する研究

久松敬和・杉沢義民

グルテンフィードおよびみかんジュース粕を濃厚飼料の一部と代替して、肉豚に給与した場合の適正な配合割合、嗜好性、発育、飼料消費量、栄養価、消化率、枝肉に及ぼす影響について検討した結果、次のような成績を得た。

  1. グルテンフィードは20%区、みかんジュース粕区は10%区が、最も発育良好であった。
  2. 嗜好性はグルテンフィードについては、30%まで良く、みかんジュース粕については、20%までは良かった。
  3. 飼料要求率は、グルテンフィード20%が最も優れていた。みかんジュース粕は、10%で代替効果は認められたが、対照区に比較してやや劣った。
  4. グルテンフィードの可消化養分はDCP2.8%、TDN31.1%、みかんジュース粕ではDCP5.1%、TDN68.3%であった。
  5. と体成績は、対照区との間に差は認められなかった。
  6. 肉豚1頭当たりの飼料費が節減されたのは、グルテンフィード20%区の1,263円が最も高く、みかんジュース粕では10%添加でも149円で、20%代替区は159円の赤字となった。
  7. 養分含量からみた適正価格を算出すると、現在のグルテンフィードおよびみかんジュース粕の市価は、経済的といえる。

3.水耕装置の改良開発に関する研究 第1報空気式養液循環器の開発と機能および適用性

前田拓・細野満典

  1. 当農業技術センターで実施中の水耕栽培に関する試験の中で、装置改良について1974年~1977年に病害回避の面から各ベッド養液の個別管理の出来る空気式養液循環器を開発し、その機能を調査した。
  2. この装置は、各ベッドへ装着した循環器の中に吸入行程で自然流入した養液中へ、空気供給ポンプよりそれぞれの循環器へ新鮮な空気を送入し、この空気圧で養液を再びベッドへ吐出すると同時に、器内で養液中へ空気を混入きせる方式であり、養液は各ベッドごとに自転流動するのでこの装置では養液の貯留槽を必要としない。又吐出時にベッド養液と上下に強く撹拌されるので、十分な混和ができる。溶存酸素の混入は、基点となる酸素量が少ないと、1回の循環器通過で多く混入する。又基点となる酸素量が多くなると1回の通過で混入する量は少なくなってくる。作物の吸収が多い時期は1回の通過で多く混入するし、吸収の少ない時期では1回の通過での混入は少ない。生育ステージによる酸素要求の相違に対しての適応性は大きいと思われる。
    溶存酸素の制御法としては、空気噴射ノズル位置を上に上げることにより1/3程度の制御は可能である。循環量の制御については、供給風量を少なくする方法の他、ベッドの排水口の開口面積を小きくして吸入時間を長くすることにより1/5の面積にして5/5の70%に時間当り循環量を制御することができる。
  3. 循環器の容積別適合ベッドの長さは5リットル循環器では8m、10リットル循環器では16m、20リットル循環器では23mで30分運転で1回ベッド養液が換水する。
  4. ベッド養液の流速は20リットル循環器での調査では、メロン収穫直後根群域内で平均1.0cm/Sで、根の活性は生育末期迄失なわれていなかったと思われる。
  5. この装置では、作物の種類別、生育ステージ別の酸素要求量に適合するようにベッドの長さ、循環器の容積、供給風量、運転時間等を組み合わせることにより、作物栽培への適応性は大きいと思われる。

4.集落内水田における大規模協業経営の成立と管理方式

小河内一司・山中種郎・西園幸雄

この報告は、水田部門協業経営方式をとる勝田実行組合を対象としている。
勝田実行組合は、昭和39年(1964)、農業構造改善パイロット事業を契機として、部落ぐるみ(73戸・82ha)の全面委任協業経営でスタートし、昭和52年(1977)現在で、15年を経過した。その間、組織の再編をはかり、有志による(40戸、40ha)協業経営組織として再出発した。その際、組織再編の方向が問題となり、次の点を要件とした。一つは、組織への水田提供者に対し、地代相当額を設定する。二つは、経営の管理者に対して管理者報酬相当額を設定する。この2点に加えて、農繁期労力の確保のため、面積割り出役義務をのこす。以上を要件の内容として、協業経営形態で再出発した。この改編は、昭和43年(1968)におこなわれたのであるが、それから10年間を経過している。現在では、男子4名・女子7名の就農者により、全面受託の内容をもつ形態に変質している。
ここでは、この組織を存続させた要因と考えられる、水田経営担当者に対し、管理者報酬が得られる構造と、この管理者報酬を生みだす生産性向上の要因について、追跡検討を加えた。
なお、生産性向上の要因については、10年間の経過の中で、つねに機械化への努力をはらい、田植・収穫・乾燥作業の大型機械化を完成し、一定の労働力で処理できる方法の体系化をはたした。この機械化については、農業技術センター・営農部農業機械研究室が大きく貢献し、常に先導的役割をはたした。

5.磁気利用によるやさい育苗用播種機の開発

前田拓・細野満典・横山幸徳

  1. やさいの機械化栽培体系を確立する一環として、育苗のための播種作業の省力化対策として、磁性粉体粉衣種子を用いるマグネット播種機の試作と、これを軸とした播種プラントを試作し、播種精度と作業能率および間引き、補植時間を検討した。
  2. 播種精度は、電圧の高低に応じ1株平均播種粒数も増減し、しかもその関係は一次式の関係にあることがわかり、同時に電圧は播種量の制御法として有効であることも明らかとなった。
    しかし、粒数分布の巾は広く、特に機械的欠株の生じない苗種粒数1個を下限においた場合でも、上限の広がりは大きく、共育ちの理論を考慮に入れても多い粒数となり、間引き時間を多く要する問題が懸念された。
    また、マグネット播種機は長時間連続使用すると、効率損失としての熱発生があり、これがコイルに帯びると抵抗を増し、その結果電流降下を招いて吸着性を低下させる原因になることが明らかとなった。しかし、電圧を上げることにより、容易に修正できる方法も見出した。
    なお、マグネット播種機の播種精度に重要な影響をおよぽす磁性粉体の種類について、附着性と磁着性を検討し、すぐれた粉体のあることを見出した。
    また、磁性粉体は発芽障害の物質にならないことを実証したが、実際に土を用いた場合の育苗では、欠株率ゼロとなる下限粒数は3粒であって、これを基準に播種すると上限の広がりは大きく、間引き時間の増大が懸念された。
  3. マグネット播種機を軸にした播種プラントの作業能率は、組人員が少ない場合には作業工程を分割して実施する必要があり、1工程で実施しようとすれば12人以上の組人員ほ必要であることを明らかにした。作業能率は、従来の人力作業に比べ高い能率を示し省力効果のいことを実証した。
    しかし、マグネット播種機により播種育苗の間引き・補植に要する時間は多く、今後この点の改善策についての研究が必要である。

6.カンザワハダニの茶園における生息分布に関する研究(第2報)平坦地の東西畦茶園におけるカンザワハダニの部位別の生息状況の季節的変化

谷浦啓一・横山俊祐・吉田元丈

平坦地の東西畦茶園について、茶畦の頂部、南北両肩部、南北両裾部におけるカンザワハダニの生息状況の季節的変化を、特に、早春の増殖期を中心に調査し、つぎの結果を得た。

  1. 調査茶畦におけるカンザワハダニの発生消長は、早春における産卵開始期(産卵成ダニ率50%期)、と春季の発生ピーク時期が、平年より1週間~1旬早かったほかは、ほゞ平年並に経過した。
  2. 生息数について、成虫は調査期間中を通じ、南側肩および裾部で発生量が多かったが、特に、早春には、これらの調査部位と他の調査部位で発生量に差異があった。幼若虫は南側肩および裾部では3月上旬に発生したが、北側据部では発生開始期が約1ケ月半もこれらの調査部位より遅れた。卵は南側肩部では2月1日に確認されたが、北側据部での発生は南側肩部より1ケ月以上遅れた。春季の発生ピーク時期には、各虫態とも寄生部位による生息数の差異は、早春に比較すると少なくなった。
  3. 寄生葉率について、寄生葉率は5月中旬まで南側肩部〉南側裾部〉頂部〉北側肩部〉北側据部の順に高かったが、春季の発生ピーク時期には南側肩部〉頂弧南側据部〉北側肩および据部の順になった。春季の発生ピーク時期を過ぎると各調査部位とも寄生葉率は急激に低下し、調査部位による差異は少なくなった。なお、北別据部では春季の寄生葉率の増加期ですら5%以下の低い寄生葉率の状態が4月下旬までつづいた。
  4. 早春における雌成虫のうごきについて、産卵成ダニ率は、いずれの時期も南側肩部〉南側据部〉頂部〉北側肩部〉北側裾部の順に高く、産卵開始期は南側裾部、頂部、北側肩部、北側据部は南側肩部より、それぞれ8、15、23、43日遅れた雌成虫1頭当たりの産卵数は南側肩部でも2月21日までは10粒以下であった。一方、北側据部では4月15日になってもこの値は10粒以下であった。
  5. 早春に初めて卵があらわれてから幼若虫があらわれるまでの期間およびその期間における半旬または旬別の平均気温をもとめると、調査部位による差異が少なく、その平均は30.4日で8.2℃であった。

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