「選択マーカーを含まない組換え植物の作出方法、ならびに該方法により作出される組換え植物」で特許を取得しました。
本発明は、植物に有用な遺伝子を組み込む際に、同時に組み込む選別用の遺伝子「選択マーカー」を、遺伝子分析をもとにした選抜によって効率的に除去する方法です。
出願日は平成14年3月18日で、特許登録は平成18年1月6日(登録番号特許第3755876号)です。なお、職務発明として本県が取得した特許は、これで25件目です。
1内容
植物に「病気に強い」「高収量につながる」といった有用な性質を持つ遺伝子を組み込む際には、目的の遺伝子と同時に、遺伝子導入が正しく行われたかを確認するため「選択マーカー」という選別用の遺伝子を組み込みます。確認後には不要となるため、「選択マーカー」は除去することが望ましいとされていますが、除去してしまうとその後の選別作業が煩雑になるため多くの場合そのまま残されています。
科学技術振興センター農業研究部では、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)による遺伝子分析をもとにした選抜によって、これまでの植物体に現れる特徴的な性質(形質)によって選抜する方法に比べ、より効率的に選抜する方法を開発しました。
この技術によって、目的とする遺伝子だけをもった(選択マーカーを含まない)植物を着実に作ることができるようになります。それによって、機能がわからない遺伝子を解明する場合など、ゲノム解析研究に役立てることができます。
2今後の対応について
平成16年12月に日本をはじめとする国際的なプロジェクトにより、イネゲノムの全塩基配列の解読が終了しました。今後は膨大なゲノム情報の中から、収量性、耐病性といった有用な遺伝子を探し出すことが重要な課題となっています。
農林水産省では、平成15年度からイネゲノム研究に実績のある国内の大学、独立行政法人等を集め、イネの重要な形質に関係する遺伝子を解明するプロジェクトを開始しています。本発明の研究内容が評価された三重県も、名古屋大学を中心とした研究グループで機能性物質を作る遺伝子を解明する課題に参画しています。
このような遺伝子の機能解明が進むと、高収量、高品質、高機能性等の優れた形質を持った品種を効率的に作出できるようになると期待されています。
本発明は、選択マーカーの分離・除去及び目的遺伝子を導入した植物の効率的な選抜技術として、ゲノム解析研究の進展に寄与できると考えています。
三重県農業研究所
経営・植物工学研究課
橋爪不二夫
連絡先
電話:0598-42-6357
FAX:0598-42-1644
電子メール:nougi@pref.mie.jp