明和町では、小中学校の9年間を通じて地元である明和町について深く学ぶ「明和科」という取り組みを推進されています。今回はその一環として「ふるさと体験活動」が実施されました。この活動は明和中学校の2年生、約200名が1班7名ほどのグループに分かれ、明和町内、約30ヵ所の施設等で体験活動を行うというものです。三重県埋蔵文化財センターでは、11月6日(水)から8日(金)までの3日間、「歴史『遺跡発掘』」を希望した生徒7名を受け入れて講義や体験活動を行いました。
1日目は最初に埋蔵文化財センターの仕事と考古学の方法論についての講義を行った後、県内の遺跡から出土した旧石器時代から弥生時代までの遺物を観察し、道具の形や組み合わせなどから使われていた時代を考えました。その後、館内見学を挟んで、土師器焼成坑が多数出土している明和町内の北野遺跡についての講義を行い、年代別に展示した土師器を観察して形の変化などについて気づいたことを出し合う意見交換を行いました。生徒は本物の土器や石器に初めて触れたことで、生き生きと活発に発言してくれていました。
2日目の午前中は前日に続き、坂本古墳群や安養寺跡など明和町内の遺跡や、文学作品に登場する斎王と斎宮跡の発掘について学んだ後、斎宮歴史博物館の展示を見学しました。午後にはここまでの学習で得た知識を踏まえ、斎宮跡の発掘現場で発掘体験を行いました。生徒は「これは土師器やなぁ」などと話しながら、熱心に発掘に取り組みました。体験終了の10分程前になって、一人の生徒が直径15cmほどの弥生土器の底部を発見しました。斎宮歴史博物館の担当者からの指示を仰ぎながら、みんなで協力して掘り進め、なんとか無事に土器をとり上げることができました。遺物を壊さないようにと緊張しながらも、楽しそうに発掘を進める生徒の姿が印象的でした。
3日目は土器の整理作業として、発掘された遺物についた土を落とす「洗浄」と、遺物に必要な情報を書き込む「注記」を体験しました。なかには大変細かい字で上手に注記を行った生徒もおり、指導者からもお褒めの言葉をいただきました。最後に3日間の締めくくりとして、明和町「織糸遺跡(おりといせき)」の報告書を使い、専門用語などについての解説を行った後、遺物・遺構についての解説や写真、実測図を頼りに、展示のレイアウトを考える実習を行いました。生徒たちは報告書を読み込みながら、それぞれのセンスで遺物を選択し、展示レイアウトを完成させていきました。12月後半には生徒が考えたレイアウトをもとにして、織糸遺跡出土遺物の展示を行う予定です。
今後、生徒はふるさと体験学習の成果をまとめていく作業に入るそうです。この3日間で、参加生徒の地域の歴史、文化についての関心は確実に深まったように感じました。今回の体験をきっかけに、それぞれが「ふるさと」明和町についての探究を深めていってくれることと思います。
明和町北野遺跡についての講義 北野遺跡から出土した土師器など
発掘調査体験の様子 土師器を発見!
弥生土器の底部を発掘! 注記(ちゅうき)の様子