今回の講座は、「製塩遺跡―紀北町道瀬(どうぜ)遺跡から―」と「近世参宮街道の考古学―古市・中之地蔵町(ふるいち・なかのじぞうまち)遺跡の発掘調査―」の2つで、それぞれ三重県埋蔵文化財センター職員萩原義彦(はぎわらよしひこ)、水谷侃司(みずたにつよし)が講演を行いました。
一つ目の講座で取り上げた道瀬遺跡は、1997(平成9)年度に調査された、紀北町道瀬の海岸沿いにある製塩遺跡です。講座では、まず日本の製塩について時代順に触れ、次いで三重県の製塩遺跡や製塩に使われる土器等について地域別に説明しました。
道瀬遺跡の発掘調査の話は、夏の暑い中、草刈りをして人力で掘削したといったエピソードを交えながら進めました。表土の下から火に焼けて赤くなった砂が見つかり、土釜(どがま)の破片がいくつも出土したので製塩炉だと分かったこと、さらに炉の壁の中から12世紀末から13世紀初頭の山皿(やまざら)が見つかり、この製塩炉が築かれた時期が判明したことを解説しました。
二つ目の古市・中之地蔵町遺跡は、1991(平成3)年度に調査された、伊勢市中之町・桜木町の近世参宮街道沿いにある遺跡です。講座では、まず外宮と内宮の間にあるこの遺跡周辺は、伊勢詣でが盛んだった江戸時代後期には多くの旅人が立ち寄る伊勢国最大の歓楽街だったことに触れました。そして、調査では礎石がいくつも見つかったこと、礎石の位置から街道に沿っていろいろな形の建物が建っていたこと、建物の中で常滑焼の甕が埋め込まれたところはトイレだと考えられることを話しました。さらに、講座に先立って収蔵庫の出土遺物を丹念に再調査した結果、出土品の重量の7割以上が甕であること、陶磁器は日本各地の産地から運ばれていること等を発表しました。
参加者の方々には、最後まで興味深く聴講していただき、ご質問もいただきました。また、アンケートでは、多くの方に「非常に有意義・有意義」「良く分かった・分かった」等のご回答いただきましたが、改善するべき点もご指摘いただきました。今後に生かしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
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