ADHDを乗り越え、誰もが輝ける社会づくりに挑戦中
PROFILE
生野 幸さん【2018年ファイナリスト】●株式会社JSK(四日市市)
専任宅地建物取引士
業種:リフォーム業・不動産業・クリーニング業・マンション管理業
34歳の時に、発達障害の一種ADHDと診断を受ける。7度目の転職先となった株式会社JSKで、『生野さんの個性も生かせる職場にしたい』と社長に提起され、社長と話し合いを重ねながら社内環境を整備した。2018年4月からは、個人的な取り組みとしてフリーペーパー『にじいろマチコ』を創刊。自身が発達障害であることを公表し、誰もが輝く“にじいろ”の社会実現を呼びかける。イベント『にじいろマルシェ』も開催中。
私の使命
特性を生かす働き方を社長に提案
これまでに退職は6回、原因はいつも人間関係の悩み。生野さんは、リフォーム・修繕業を営む株式会社JSKで事務員として働いていた34歳の時に、ADHD(注意欠如・多動症)と診断を受けました。「JSKも居辛く、退職を考えた日もありました。それを引き止めてくれたのが齋藤穣助社長です。『どうしたら生野さんの持ち味を生かせる?』と、仕事を続ける道がないか問いかけて下さいました」。そこで生野さんは思案しました。「1人でも完結する仕事がしたい。そのためにどうしたらいいか」。以前に取得した宅地建物取引士の資格を生かし、不動産事業の立ち上げやテレワーク(在宅勤務)、業務連絡へのSNSの導入などを提案しました。テレワーク導入で他の社員も働きやすく
生野さんの提案に、社長は「ええやん!」と二つ返事で快諾。2016年に、生野さんひとりの部署が始動しました。社長は「テレワークはニュースで見る新しい働き方。社員の皆が、きっと便利になると思いました」。テレワーク導入決定後は、社内の書類や図面をすべてPDFにデータ化しました。これにより、現場技術者が出先からでも図面や書類を確認できるように。特に社長が驚いたのは、求人募集だったと言います。「“テレワーク可”と記すと、予想以上の応募が来てビックリしました。建築業界は慢性的な人手不足。求人募集にも特別な予算が必要だったのに」。生野さんが提案したテレワークは、会社にも良い効果をもたらしました。私流リーダーシップ
誰もが輝く“にじいろ”の町を目指して
生野さんの新しい仕事は、主に不動産の売買。商談へは時に直行直帰し、申請書類の提出や物件調査は我が子を背負い出かけます。1人の仕事を「快い状態」という生野さんは、明るさを取り戻しました。「会社がユニバーサルデザインに変われたのだから、町全体もできるはず」。生野さんは誰もが輝ける“にじいろ”の社会を目指し、フリーペーパーの制作・発行や、イベント開催にも着手。そこでは自身がADHDであることを公表し、理解や協力を呼びかけています。公私ともに仕事が増えた生野さんですが、元気は十分。「これもADHDの特性の一つ、“過集中”です。デキる人と見られがちですが、他が見えなくなります。理解してもらえたら嬉しいです」。心の変化によりチャンスも協力者もUP
自身のリーダーシップについて「今まで皆無だった」という生野さんですが、齋藤社長と働き始めてから、変化があったといいます。「私は“できない人”を責めるのに、社長は“できない私”を黙って見守ってくれます。人への共感を、社長から学びました」。フリーペーパーの発行やイベントの開催では、今や多くの協力者が集まるように。またADHDの公表により、仕事でも良い縁ができたとか。「物件売買の商談に、発達障害やパニック障害などの悩みやハンディを抱えたお客様も来て下さるように。同じような背景があると知ってメールを下さいました」。誰もが輝く“にじいろ”の町を目指す生野さんは、自らの手で夢を着実に前進させています。社外メンターとして
お話&アドバイスできる内容
■キャリアアップ・キャリアデザイン
■仕事と家庭の両立
■障がい者雇用
■多文化共生
■離職率の改善・働き方改革の提案
こんな講演・相談に対応できます
■社会的弱者のための職場改善
■発達障害を持つ人の特性や働き方
■ユニバーサル就労のアイデア
所属事業所概要
●株式会社JSK
三重県四日市市大字西阿倉川1085-1
http://jsk-gp.com
従業員数:16名
私の癒し
私のパワーの素は家族です。たくさんの人に煙たがられて、距離を置かれた私を、夫は「天然」と笑顔で受け入れてくれます。そして娘は、私の苦手な掃除や片付けを手伝ってくれます。お腹の中には2人目の子が。家族も私の大きな応援団です。2018年12月