平成30年度三重県保健環境研究所調査研究評価委員会(衛生分野)
研究課題の目的
事前評価
要因別ノロウイルス流行状況に関する研究
現在の調査対象であるノロウイルスを原因とする食中毒等の健康被害事例や小児の感染性胃腸炎に加え、これまで対象外であった地域や成人の感染性胃腸炎、さらに動物から検出されたノロウイルスの遺伝子を解析し、要因別に流行株の遺伝子型を分類する。このことにより、これまでの経時的な流行株の変化だけではなく、同じ時期の地域、年齢、動物種などの間における流行株の違いを明らかにし、より詳細なノロウイルスの流行状況の把握に努める。
結核サーベイランスによる薬剤耐性結核に関する研究
薬剤耐性のある結核患者情報を調査研究することで、臨床医が確実な治療等の取り組みを進めるための情報を提供する。
中間評価
遺伝子解析によるノロウイルス流行株の把握に関する研究
県内で発生した食中毒等の健康被害事例や小児の感染性胃腸炎から検出されたノロウイルスの遺伝子を解析することにより流行株の遺伝子型を分類し、その動向を早期に把握するとともに、これらの情報を関係機関と共有することによりノロウイルスの予防対策に資する。また、国立感染症研究所が検討している新しい遺伝子型分類法を導入し、遺伝子解析の精度向上を目指す。
症候群サーベイランスシステム(さっちみえ)の効果的な活用の検討
平成23年度から三重県で導入された症候群サーベイランス(さっちみえ)の効果的な活用を検討する。
従来型の塩素系薬剤に阻害要因を有する浴用水の衛生管理方法の最適化
レジオネラ症への感染者数は、近年増加傾向にあり、現在は全国で年間1,500件を超えるまでになっている。レジオネラ肺炎に罹患すると、特に高齢者や既往症を持つハイリスクグループでは重篤化し、死亡することもある。レジオネラ症未然防止対策として、公衆浴場の多くでは、次亜塩素酸ナトリウムを用いた浴用水の消毒を行っている。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは、アンモニウムイオン等の消毒阻害要因を含む温泉を原湯とする施設で用いると、殺菌力が大きく低下することが知られている。次亜塩素酸ナトリウムに対する消毒阻害要因を持つ温泉は、本県にも散見されることから、本研究では、これらの浴用水に対する適切な衛生管理方法を検討する。本研究から得られた成果の情報発信と成果普及を通じて、生活衛生営業施設の自主的な衛生管理の推進と、県民の健康被害の未然防止に資するものとする。
事後評価
防かび剤一斉分析法の開発
防かび剤は食品のかび等による腐敗・変敗の防止のため、主に輸入農産物に多く使用されている食品添加物であり、食品衛生法第11条第1項においてその規格基準が定められている。現在、食品衛生法で指定されている防かび剤は、従来から指定されているオルトフェニルフェノール、ジフェニル、チアベンダゾール、イマザリルに加え、近年、新たにフルジオキソニル、アゾキシストロビン、ピリメタニルの3物質が追加され計7物質となっている。新たに指定された3物質については、従来の4物質の一斉分析法とは異なり、各々に個別の試験法が厚生労働省から通知されている。このため、現行の体制で全ての防かび剤について試験を行おうとすると、一斉分析法を含む計4種類の試験法を実施する必要があり、現状の試験法では迅速に結果を得る事は困難である。現在、収去検査は従来の4物質のみを対象としているが、県内でも新たに追加された防かび剤を使用する農作物の流通が確認されているため、新たな物質を含めた防かび剤7物質の一斉分析法を開発し、収去検査に適用することで、迅速な結果の提供を行い食の安全・安心に貢献する事を本研究の目的とする。