令和6年度三重県保健環境研究所調査研究評価委員会(衛生分野)
研究課題の目的
中間評価
浴槽水のモノクロラミン消毒の普及と効果的な衛生管理に資する研究
レジオネラ属菌は、公衆浴場等の衛生管理に不備があると増殖する病原菌で、特に高齢者等のハイリスクグループではレジオネラ症と呼ばれる重篤な肺炎を引き起こし、死亡することもある。
これまでに当研究所では、このレジオネラ症の未然防止を目的とした浴槽水の衛生管理手法を研究の対象としてきた。その研究対象とした新たな消毒剤であるモノクロラミンに関する当所の研究成果は、特に高アルカリやアンモニウムイオンを多く含む温泉水に対するモノクロラミン消毒の有用性を明らかにするものであった。この研究成果を厚生労働科学研究班とも共有した結果、当所の研究成果がバックデータとなり、厚生労働省健康局長通知「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」(令和元年9月19日付け生食発0919第8号)と、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長通知「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」(令和元年12月17日付け薬生衛発1217第1号)が発出され、モノクロラミン消毒が、遊離塩素に並ぶ消毒方法のひとつとして追加されるに至った。この通知の発出を受けて、三重県公衆浴場法施行条例および三重県公衆浴場法施行細則も改正され(令和4年3月29日公布、令和4年10月1日施行)、浴槽水の消毒方法のひとつとしてのモノクロラミンの使用が、法的な裏付けを獲得した。
ただし、現時点で県内では、モノクロラミン消毒の導入事例はほとんどなく、モノクロラミン消毒の情報が十分に行き届いているとは言いがたい状況である。条例改正を機に、モノクロラミン消毒の導入を含めた検討が進んでいくものと考えられるが、その検討には、モノクロラミン消毒がどのような浴槽水で有効か、自施設の浴槽水では有効か、といった情報や知見が必要となる。
そこで本事業では、公衆浴場の浴槽水における適切な消毒方法の選定を、技術的に支援するための指標化を試みる。必要に応じて、個別の浴槽水を対象とした、アンモニウムイオンをはじめとする消毒阻害成分の分析を行い、その結果をもとにした具体的提案も行う。加えて、前身事業に引き続き、三重県における浴槽水に対するモノクロラミン消毒の効果試験も実施する。
これらの情報発信と成果普及を通じて、公衆浴場の自主的な衛生管理の推進と、県民のレジオネラ症発生をはじめとする健康被害の未然防止に資するものとする。
伴侶動物におけるウイルス性胃腸炎の研究-ヒトの感染性胃腸炎との関係性―
毎年秋から冬にかけて感染性胃腸炎が流行しており、大きな社会問題となっている。伴侶動物においても秋から冬にかけて胃腸炎が増加する傾向が認められる。このように、伴侶動物(イヌおよびネコ)とヒトの感染性胃腸炎の発生時期は同じであるが、その関係性は明らかにされていない。ヒトの感染性胃腸炎の病原体の9割以上はウイルスである。一方、伴侶動物の胃腸炎においてウイルスが関与するか否かについては不明な点が多い。本研究ではヒトの感染性胃腸炎の病原体と同じ種類(ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルスなど)のウイルスが伴侶動物においてどの程度浸潤しているかを調べるとともに、それらのウイルスの性状を解析し、ヒトの感染性胃腸炎との関係性を調べる。また、これらのウイルスを用いることでヒトの感染性胃腸炎の動物モデルの作出も検討する。