令和3年度三重県保健環境研究所調査研究評価委員会(環境分野)
研究課題の目的
中間評価
リサイクル材の環境リスク評価に関する調査研究
廃棄物のリサイクルについては、廃棄物の性状に応じた適正な処理及び使用用途のもと安全・安心が確保される必要があるが、リサイクルを装った不適正処理や安易なリサイクルが実施され、有害ガスや汚水が発生する等の周辺環境に影響を及ぼす事案も発生している。
また、廃棄物・リサイクル課が実施した「平成27年度未利用廃棄物利活用検討調査」において、三重県下での排出状況やリサイクルの推進に対する課題等について調査したところ、バイオマスボイラー焼却灰、無機性汚泥、塩ビ管等の廃プラスチック、廃石膏ボード、タイル・レンガくず、鋳物砂、スラグが、リサイクルにおける課題として環境リスク等を把握する必要があるとされた。
このようなことから、本研究では、廃棄物の適正処理及びリサイクルの安全・安心の確保のため、環境リスクを把握することが急務であるバイオマスボイラー焼却灰等の廃棄物の潜在的な環境リスク評価を実施するとともに、有効利用方法の方向性を検討することを目的とする。
事後評価
汚泥肥料の利用における安全性確認に係る基礎的調査・研究
三重県は、資源循環型社会の構築を目指し、産業廃棄物の発生抑制など、3Rの推進を行ってきた。産業廃棄物の中でも下水汚泥は、下水道普及率が年々増加してきていることから、今後、発生量が増えていくことが予想されるもののひとつである。下水汚泥のリサイクル方法としては、燃料化、建材資材、緑農地利用などがあげられる。下水汚泥はリン資源としての有機性廃棄物として注目されていることから、汚泥肥料としての緑農地利用が推進されており、緑農地利用としてのリサイクル率は増加してきている現状である。肥料の品質は肥料取締法によって規定されており、汚泥肥料には、下水処理施設に流入する汚水などに由来する有害成分が含まれている可能性があることから、重金属類の含有量が規制されている。しかし、肥料取締法では、重金属類の含有量は植物にとっての有害成分の許容含有最大量として定められており、土壌環境基準の観点とは異なるものであるため、肥料取締法に適合する汚泥肥料であっても、土壌汚染を招く有害成分を含有している可能性がある。また、有害成分の含有量が微量であっても、連続施用によって、有害成分が農用地土壌に蓄積することが懸念される。
そこで、廃棄物の適正処理及び安全・安心なリサイクルを推進するために、汚泥肥料の有害成分の土壌中における挙動に関する基礎的な調査研究を実施し、汚泥肥料の安全性などを明確にすることを目的とする。
PRTRデータを活用した有害大気汚染物質モニタリング調査の全県域的評価に関する調査研究
平成8年5月に大気汚染防止法が改正され、低濃度ではあるが長期曝露によって人の健康を損なうおそれのある有害大気汚染物質の対策について制度化され、有害性の程度や大気環境の状況等により健康リスクがある程度高いと考えられる22(現在は23)の「優先取組物質」が地方公共団体(都道府県及び大気汚染防止法の政令市)においてモニタリング調査が行われるようになり、当県でも平成9年10月から調査を実施している。
同調査の事務処理要領および有害大気汚染物質モニタリング地点選定ガイドラインでは、人口や汚染物質の排出量の変化等により、地点を見直すことが明記されている。同一地点でモニタリング調査を継続することは、経年変化を確認するために重要であるが、当県では、平成17年に見直しして以降、10年以上、見直しを実施していないため、現在の汚染物質の排出量等の実状に合っていない可能性がある。そこで、有害大気汚染物質の状況を正しく評価するために、各地域における汚染物質の排出量とモニタリング調査結果の比較の検証および県内における有害大気汚染物質の広域的な調査を行い、通常時における状況をデータとして蓄積し、最適な調査地点を決定する。
事前評価
再生品の環境安全性に関する調査研究
令和3年3月に策定された「三重県循環型社会形成推進計画」においては、今後5年間の取り組む施策として、資源の循環的利用の促進が挙げられています。再生資源の適正な循環利用の促進にあたっては、産業廃棄物の不適正な処分を防止しつつ、再生品の環境安全性を確保することが求められます。排出事業者の自ら利用や産業廃棄物中間処理業者等により製造された再生品は一般環境中で利用されていますが、これらの再生品は製造者である中間処理業者において品質や環境安全性の管理がされているものの、管理体制が不十分な場合がみられ、その環境安全性は必ずしも確保されているとは限りません。また、日々技術が進歩し、新たな再生資源や処理方法を用いた再生品が開発されていますが、その製造時から利用中、廃棄時における環境安全性に関する知見は十分とは言えない状況です。
本調査研究では再生品を製造する中間処理業者へのヒアリング調査と再生品の環境安全性に関する試験を実施し、再生品の製造時から利用中、廃棄時における環境安全性を明らかにします。この調査結果を行政部局と共有して中間処理等の許認可や立入検査等に活用することで、再生品の環境安全性を確保し、資源の循環的利用の促進につなげていきます。