令和3年度三重県保健環境研究所調査研究評価委員会(衛生分野)
研究課題の目的
事後評価
要因別ノロウイルス流行状況に関する研究
現在の調査対象であるノロウイルスを原因とする食中毒等の健康被害事例や小児の感染性胃腸炎に加え、これまで対象外であった地域や成人の感染性胃腸炎、さらに動物から検出されたノロウイルスのVP1遺伝子を解析し、要因別に流行株の遺伝子型を分類する。このことにより、これまでの経時的な流行株の変化だけではなく、同じ時期の地域、年齢、動物種などの間における流行株の違いを明らかにし、より詳細なノロウイルスの流行状況の把握に努める。
中間評価
公衆浴場等におけるレジオネラ属菌抑制を目的とした先駆的手法の実地検証
Legionella属菌は、公衆浴場に代表される人工水系の衛生管理に不備があると増殖し、エアロゾルを介して経気道感染すると、重篤な肺炎を引き起こすことがある。レジオネラ症は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づく届出数が年々増加し、現在は全国で年間2,000件を超えるまでになっており、レジオネラ肺炎にかかると、特に高齢者等のハイリスクグループでは重症化し、死亡することもある。
平成29~令和元年度に当研究所が実施してきた経常研究事業「従来型の塩素系薬剤に阻害要因を有する浴用水の衛生管理方法の最適化」では、三重県の温泉に特徴的なアルカリ性の温泉やアンモニウムイオンを多含する温泉を対象として、従来型の塩素系薬剤である次亜塩素酸ナトリウム消毒に対する阻害性を実験的に捉えるとともに、次亜塩素酸ナトリウムに代わる消毒剤のひとつであるモノクロラミンを用いて、その消毒効果の有用性について明らかにしてきた。当研究所が実施してきたモノクロラミンの研究成果は、厚生労働科学研究班とも共有された。同事業成果を根拠の一部として、厚生労働省健康局長通知「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」(令和元年9月19日付け生食発0919第8号)と、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長通知「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」(令和元年12月17日付け薬生衛発1217第1号)が発出され、モノクロラミン消毒が、次亜塩素酸ナトリウムに並ぶ消毒方法のひとつとして追加された。
しかしながら、モノクロラミン消毒は、従来型の塩素系薬剤に代わる新規消毒法のひとつとして認識されつつあるものの、三重県内ではほとんど普及していないのが実情である。そこで本研究は、三重県内で特徴的な泉質の温泉水を用いて、モノクロラミンをはじめとする従来法に代替する消毒方法の実用化を目指した検証実験を行う。本研究によって得られた成果は、厚生労働科学研究班等との情報共有を積極的に行い、情報発信と成果普及を通じて、生活衛生営業施設の自主的な衛生管理の推進と、県民の健康被害の未然防止に資するものとする。