平成26年度三重県保健環境研究所調査研究評価委員会(衛生分野)
研究課題の概要
中間評価
飲料水・食品中の有機物質(農薬等)の迅速検査法に関する研究
飲料水・食品中の農薬等の有機物質迅速検査法を確立することにより、健康危機発生時において農薬等の混入の恐れがある場合、膨大な種類の有機物質の中から原因物質を早期に特定し、迅速に検査結果を関係行政機関に提供し、県民の食の安全・安心の確保に貢献することを目的とする。
無承認無許可医薬品等の網羅的試験法の開発
当研究所の保有機器に即し、これまで確立した麻黄・エフェドリン、甲状腺末及び強壮薬(化学合成品)の成分を網羅し、さらに検出事例の多い無承認無許可医薬品等の健康危害成分(糖尿病治療薬、局所麻酔薬、消炎鎮痛薬、副腎皮質ホルモン等)と添加剤を対象とした一斉分析法を開発し、検査体制を確立する。それにより違反発見時や健康被害発生時のような緊急事態における迅速な対応、買い上げ調査のような平時における行政検査へ適用することを目的とする。
事後評価
新たな性感染症サーベイランス確立に向けた先駆的研究
平成19年度から3年間をかけて実施した「性感染症予防推進戦略的サーベイランス研究事業」により、現在の感染症法に基づく性感染症サーベイランスでは、地域の正確な患者発生動向が把握できないことが明らかとなった。サーベイランスは、性感染症の発生・まん延の状況を明らかにするとともに、防止対策に必要となる科学的根拠を提供する手段として重要であり、現在の患者発生状況を考慮すると、特に若年層を中心とした発生動向を正確に把握できる仕組みに改善する必要がある。
上記事業の成果に加え、平成22年度事業「エイズ対策に向けたパートナー検診の推進に関する調査研究」により実施する、県内において性感染症患者を診察する可能性のある医療機関を対象としたアンケートの結果等も踏まえ、全国の取組に先駆けて、現状のシステムより有効に機能する性感染症サーベイランスシステムの構築を目指す。
三重県におけるリケッチア感染症に関する研究
日本紅斑熱は、感染症法により4類感染症に指定されているダニ媒介性のリケッチア感染症です。三重県においては県南部に原因となるリケッチア保有ダニの存在が推定されているものの、県下全域における実態はわかっていません。また、日本紅斑熱の市販検査キット等は存在しておらず、検査は当所や国立感染症研究所等に限られるため実態把握が困難となっています。そこで、三重県下において、リケッチア保有ダニの分布調査を実施し、地域における日本紅斑熱発生リスク評価を行い、県民への注意喚起の科学的根拠とします。また、検査診断を容易に実施可能とするため、検査キットの理論構築および開発を目指します。
健康づくり支援のための温泉資源の活用と保全に関する研究
我が国では、地域の温泉資源が、住民、特に高齢者の健康増進の活動拠点およびコミュニティの場として利活用され、古くから地域福祉に貢献してきた。高齢者医療や介護に対する社会的需要が高まる中、地域の健康づくり施策が重要な行政課題として位置付けられている。これらの背景から、温泉資源を持続的に有効活用し、さらにこれらの健康づくり活動への利用に貢献することを目指し、本調査研究を実施する。
具体的には、温泉資源の「活用」の観点からの「健康科学的アプローチ」による研究と、温泉資源の「保全」の観点からの「資源工学的アプローチ」による研究をそれぞれ並行的に進める。これらの研究により、健康科学的な利用に活用可能な知見や、温泉資源の地域的賦存分布に係る知見を収集することによって、県民の健康づくりや温泉資源の保全の推進を図ることを目的とする。