平成25年度三重県保健環境研究所調査研究評価委員会(環境分野)
研究課題の概要
中間評価
環境大気中微小粒子状物質(PM2.5)発生源推定に関する研究
これまで保健環境研究所においては、PM2.5の質量濃度や主要内容成分の測定を実施し、主に汚染の実態把握に務めてきたが、県下全域でPM2.5の常時監視が近く開始されることから、環境基準の維持達成に向け効果的なPM2.5対策を講じていくため、本研究を実施する。
PM2.5内容成分の詳細解析に加え、気象条件、他汚染質データ等との関連を検討することにより高濃度出現要因、地域特性等の把握を行う。また、PM2.5については県境を越えた広域汚染や大陸からの越境汚染の影響が無視できないとされ、同時期に測定された他府県のデータや気象データ等を解析することによりその影響についても検討していく。
環境大気中におけるアルデヒド類の測定法などに関する研究
有害大気モニタリング調査は、昭和60年度から環境庁(現環境省)によって実施され、平成9年に改正された大気汚染防止法により地方公共団体においても順次実施され、三重県では平成9年11月から実施してきている。
採取、分析方法等については、有害大気モニタリングマニュアルに示されており、通常時における採取、分析方法等については特に問題は見られないが、アルデヒド類は親水性を示すため、多湿時における採取では、オゾンスクラバーやオゾンスクラバーと捕集管を接続するチューブ内に発生する水滴に吸収されてしまい捕集管に適切に捕集できなかったり、さらにひどくなると水滴によりオゾンスクラバー等が詰まってしまい採取自体ができなかったという問題が発生するため、これらの問題を解決する必要がある。
そこで、本研究では、多湿時の環境大気中における測定方法等について、捕集管を加温し水分の影響を少なくできるとされている捕集管加温装置と、高価でかつ場所及び電源の確保が必要な捕集管加温装置が不要でオゾンスクラバーの機能を内蔵したBPE-DNPHについて検討を行い、より適切な方法で調査が実施できるように改善することを目的とする。またBPE-DNPHについては、オゾンとアルデヒドを同時分析することができるとされているため、光化学オキシダントの主成分であるオゾンとアルデヒドの関連性(相関性)についても確認する。さらにポンプがなくても採取できるパッシブ法についても検討し、屋外測定における適用性及び通常法であるアクティブ法との関連性(相関性)について確認する。
事後評価
産業廃棄物不法投棄現場の環境修復に関する研究
三重県桑名市の不法投棄によるVOC汚染環境修復サイトでは、汚染地下水の拡散防止・浄化が図られてきた。今後、当該地の浄化(安定化)評価を行い、浄化遅延区域での浄化促進対策を行うことが課題となっているが、迅速で安価なVOC残存量調査・評価方法及び短期間で安価に確実に浄化できる技術が必要となる。
本研究では、ボーリングによる試料採取・化学分析によらない簡易迅速で安価なVOC残存量調査技術を開発すると共に、汚染残留箇所での確実な浄化技術が必要となることから、従来にはない、低温加熱による中性化領域での処理を特徴としたVOC除去技術の開発を行う。また、VOC汚染地下水が拡散した周辺地域の安定化を評価するため、微生物叢の解析を行い、地下水水質調査結果と比較検討することで、細菌叢調査を取り入れた新たな安定化評価手法を確立することを目的とする。
有害化学物質による土壌汚染の自然・人為由来推定に関する研究
土壌汚染対策法及び三重県生活環境の保全に関する条例に基づき土壌・地下水汚染の規制が行われているが、汚染の原因が人為由来か自然由来かによって行政の事案に対する対策方針が大きく異なることから、汚染原因の判別は重要なポイントである。
原因判別の支援となる情報が少ないこと等が課題となっており、既存情報の収集・整理及びデータベース化が必要であること、改正土壌汚染対策法(H22施行)で、情報の収集、整理、保存、提供等の努力義務化を規定していることから、利用し易いデータベースの仕組みの構築を行う。
また、実際の土壌試料を化学分析することによって原因を判別することは多大な時間と労力を必要とすることから、化学分析による容易な判別方法を開発する。