平成22年度第2回三重県保健環境研究所調査研究評価委員会
研究課題の概要
事前評価
新たなSTIサーベイランス確立に向けた先駆的研究(平成23~25年度)
平成19年度から3年間をかけて実施した「性感染症予防推進戦略的サーベイランス研究事業」により、現在の感染症法に基づく性感染症サーベイランスでは、地域の正確な患者発生動向が把握できないことが明らかとなった。サーベイランスは、性感染症の発生・まん延の状況を明らかにするとともに、防止対策に必要となる科学的根拠を提供する手段として重要であり、現在の患者発生状況を考慮すると、特に若年層を中心とした発生動向を正確に把握できる仕組みに改善する必要がある。
上記事業の成果に加え、平成22年度事業「エイズ対策に向けたパートナー検診の推進に関する調査研究」により実施する、県内において性感染症患者を診察する可能性のある医療機関を対象としたアンケートの結果等も踏まえ、全国の取組に先駆けて、現状のシステムより有効に機能する性感染症サーベイランスシステムの構築を目指す。
三重県におけるリケッチア感染症に関する研究(平成23~25年度)
日本紅斑熱は、感染症法により4類感染症に指定されているダニ媒介性のリケッチア感染症であり、国内において患者が増加傾向にある。三重県は日本紅斑熱患者報告数が全国1位であり、患者の居住地域から三重県南部に原因となるリケッチア保有ダニの存在が推定されるが、県下全域における実態は不明である。また、日本紅斑熱は比較的新しい疾病であるためか市販検査キット等は存在せず、検査がなされていない可能性も否定できない。そこで、三重県下において、リケッチア保有ダニの分布調査を実施し、地域における日本紅斑熱発生リスク評価を行い、県民への注意喚起の科学的根拠とする。また、検査診断を容易に実施可能とするため、検査キットの理論構築および開発を実施する。手法としてはサンドイッチELISA法、イムノクロマト法を中心に検討し、迅速かつ多検体処理が可能な検査診断キットの開発を目指す。
健康づくり支援のための温泉資源の活用と保全に関する研究(平成23~25年度)
●本研究事業では、温泉資源を健康づくり支援に活用可能な地域資源と位置づけ、その「活用」の側面から健康科学的なアプローチによる研究と、「保全」の側面から温泉の資源工学的アプローチによる研究を、それぞれ進めていく予定である。
●健康科学的なアプローチにおいては、三重県内において、温泉資源を活用した地域保健施策に積極的に取り組む自治体や事業者・医療関係者の協力を得ながら、EBM(Evidence Based Medicine)の推進のための調査研究を実施する。その際、研究事業の成果を効率的に得るために、モデル地域を選定する。
●温泉の資源工学的アプローチにおいては、温泉資源の効率的な活用のためには、環境省が定める「温泉資源保護に関するガイドライン」の主旨に準じた温泉資源の地域的涵養・挙動に関する知見の収集に努める。これらの知見は、温泉法の行政処分等の際に、三重県自然環境保全審議会等への提供資料としての行政活用等の可能性が考えられる。
以上を整理すると、今後解決すべき主要な課題は以下のとおり整理される。
○研究モデル地域に特化した温泉成分のEBMに関連する知見の収集
○効果的な温泉利用(浴用・足浴・飲用・リハビリテーション)へ活用可能な温泉化学的データの蓄積
○研究モデル地域における温泉資源の賦存と挙動に関する知見の収集