3.定植の手順
一般的に定植時期は暖かくなりはじめ、周期的に降雨の見られる3月頃に行います。また、定植作業は苗の損傷を最小限にするため、風がなく降雨が予想される前日などに、できるだけ短期間で済ますことができれば理想的です。苗を購入する場合には、ほ場の準備は苗の到着までに済ませておくよう、天候等も考慮して計画的に作業を進めましょう。
また、慣行の定植の際、土壌の乾燥防止と雑草防止のために敷きわらやポリマルチによるマルチを設置しますが、いずれの場合も初期生育段階での乾燥防止と雑草抑制は初年度の苗の生育に大きく影響を及ぼし、重要とされています。近年は、ペーパーポット苗とポリマルチを組み合わせた茶園育成体系が普及しつつあります。ここでは慣行法とポット苗マルチ法のそれぞれについて記述していくこととします(場合によっては慣行苗とポリマルチの併用も考えられるでしょう)。
1.ほ場準備(例)
(1)慣行法
定植予定部分をロータリーで耕耘し、土を膨軟にしておき、同時に植え溝をつけていきます。
(2)ポット苗マルチ法
ポリマルチの場合、一年程度追肥ができないので、全量基肥として被覆肥料等を用い、同様にロータリーで耕耘しておき地表を平らに整地します。ポリマルチをたるみのないように張り、両端を埋め込みます(たるみがあったり、両端の固定が緩いと強風になびいて苗が損傷したり、マルチが飛ばされることがあります)。
ポリマルチの種類は、夏期の地温上昇が抑制できる白黒ダブルマルチが多く使われているようですが、近年は土壌で分解していく生分解性の資材も出現してきているようで、後の除去作業が必要なくなります。
2.苗木の取扱い
(1)慣行法
掘り取りの際、なるべく断根のないよう床土を付けて数本まとめて掘り取るようにし、掘り取り後は日陰におき、菰などでくるんで運搬しましょう。購入苗で搬入時にしおれている場合は、日陰の風のないところで水をうち、回復させましょう。
(2)ポット苗マルチ法
ポット苗では、運搬・定植時にポット底から土が崩れてしまうことがありますので、鉢土が湿った状態を保ち、定植時に各ポットをはずすときは底部を手で押さえながらはずすように注意しましょう。また、運搬時にはコンテナを使用しましょう。
3.定植方法
(1)慣行法
植え溝上に茶苗の根を自然状態(根が下方に末広がりとなる状態)に保ちながら、両側から土寄せして深植えとならないよう覆土し、軽く手で押さえて土と密着させます。
定植後は雑草抑制・乾燥防止のために株もとに敷きわら(草)を十分(1t/10a程度)行い、直後に必ず灌水(4~5リットル/株)し、根に土壌粒子を密着させ、吸水をスムーズにしてあげましょう。また、灌水後になお深植えとなっていたり、浅すぎて根が露出しているところなどは、地際部の根がかくれる程度の深さに修正しましょう。
写真 ポット苗マルチ法で定植後ソルゴーを間作例 |
図 慣行法による定植方法例 |
(2)ポット苗マルチ法
通常ポット苗は半年~1年生苗が多く、苗姿も小さく施設内で育ったものも多いため、定植後の寒害にあうとダメージが大きいので、4月中旬頃に定植した方が安全なようです。
定植の方法は、たるみなく張ったポリマルチの上から、タバコ苗の定植に使用する定植用器具などを用いて植え穴を開け、掘りあげた土を植え穴横のポリマルチの上に置き、苗の埋め戻しに用います。植え付けの深さはポットと同じ面になるくらいですが、植え付け部が周囲より低くなると降雨時水がたまることがあるので、やや盛り加減に植えた方がいいようです。
4.定植後の管理
定植・灌水後に地上15~20cmの高さでせん枝を行います。苗の分枝位置より上方に2~4葉(節)づつ残し、せん枝後に着葉数が10枚以上残るのが理想的です。また、主幹のみが強いような苗の場合は、主幹をやや強めにせん枝し、芯を抜くようにし、小さい苗は摘心程度とします。これは後に株を開張させ、分枝させるために行うもので、苗姿や品種(直立性、開帳性)により適宜調節しましょう。
また、活着までは根量が少ないため、降雨のない日が数日続くようなときは適宜灌水を行いましょう。定植1年目の生育はその後の成園化に大きく影響します。そのためにも幼木への灌水は重要と考えられます。