1.霜害(凍霜害)
越冬した冬芽は、早春から成長し始めるにしたがって耐寒(凍)性が低下してき、萌芽2週間前で-5℃(葉温)、萌芽期で-3℃、1~2葉開葉期で-2℃以下になると、それぞれ被害が発生すると言われています(降霜時の葉温は地上1.5mの(百葉箱)気温よりも5℃ほど低い)。特に開葉後の降霜による被害は、一番茶の減収、品質低下を招き、大きな損害を被ることになります。
<霜の降りやすい条件>
- 冬型の気圧配置で寒気が流れ込んだ後、移動性高気圧となって日本をおおうような気圧配置になったとき
- 夜間を通じて上空に雲がなく、風が弱い
- 前日夕方の湿度が比較的低い
被害回避対策
1.送風法(防霜ファン)
降霜時には地上6~10m付近の気温は茶株面付近に比べ4~5℃高くなる逆転現象が起こり、その暖かい空気を送風により強制的に吹き下ろし攪拌することで降霜を回避する方法で、防霜ファンの設置された茶園では、サーモスタットによる自動運転が可能となり、最も広く行われている対策です。
図 降霜日の夜間の気温(茶業全書)
<方法>
- (1)設置の目安は10aあたり3kw/時前後とされてますが、微細な地形により降霜程度が異なるので、微気象や気流の調査を行っておくことが大切です。
- (2)運転期間は予想萌芽時期の2週間くらい前(被害を受けやすくなる時期)からを目安とし、摘採時まで運転します。
- (3)サーモセンサーの設置位置は、茶園内で最も冷気の停滞しやすい場所の茶株面に設置します。
- (4)開始時の設定温度は3℃とします。
<注意しましょう>
- (1)始動前に作動の確認や方向の修正をしておきましょう。
- (2)サーモスタットの設定温度と実際の作動温度との誤差を考慮し、氷水などで確認しておき、正確な温度で作動するよう調整しましょう。
- (3)運転の際、早朝から騒音を伴うことになるので、近隣住民との間でトラブルとならないよう配慮しましょう。
2.散水氷結法
降霜時に散水し、意図的に氷結させる方法で、茶株に付着した水が氷結する際80cal/gの潜熱を放出するため、それにより新芽の温度を0℃前後に保つことにより被害を回避することができますが、多量の水源(30t/10a・日)と散水施設(スプリンクラー)が必要となります。
<方法>
- (1)散水強度は3mm/時程度とし、設定温度を2℃程度(最も冷えるところの茶株面)に設定します。
- (2)連続散水し、日の出30~60分後の気温5℃以上となり、付着した氷が溶けるまで行います。
<注意しましょう>
- (1)一日に30t前後の水源が必要なうえ連日にわたることもあることから、広範囲に導入するには相当な水源が必要となります。
- (2)排水不良の茶園では湿害の心配もあり、排水のよいところでの利用を考えましょう。
3.被覆法(棚、トンネル)
降霜時の熱放射を被覆によりくい止め、被害を回避する方法で、棚掛け被覆とトンネル掛け被覆の方法があります。
<方法および注意点>
a.棚掛け被覆
- (1)棚施設のあるところでは、降霜が予想される前日の夕方に被覆します。
- (2)被覆物は熱吸収率の高い黒色のものでしかも遮へい率の高いものほど効果が高いようです。
- (3)被覆の高さは摘採面から60~90cmが適当とされています。
b.トンネル掛け被覆
- (1)おもに光線透過率50~90%の不織布を用い、早出しを兼ねて行う場合もあります。
- (2)被覆の高さは摘採面から40cm程度とし、裾下20~30cm開けて被覆します。
- (3)棚掛け被覆に比べ夜間の昇温効果が高くないので、気温低下の激しいところには適しません。
被害後の対策
被害芽が混入すると製茶品質が低下しますので、摘採時になるべく混入しない対策が必要ですが、早い時期での被害ほど被害部分は後に乾燥・風化し、その後の遅れ芽や再生芽により回復してくることも多いので、次ページの表を参考に被害程度と生育ステージやその後の回復予測と収益性について十分検討し、事後対策を講じるよう心がけましょう。
表 生育ステージと被害後の処置例
生育ステージ | 被害の様相 | 処置 | |
---|---|---|---|
萌芽期~二葉期 | 被害の程度にかかわらず | そのままにしておく。 | |
3~4葉開葉期 | 部分的な被害で、被害部と無被害部がはっきりしている場合 | そのままにしておき、拾い摘みまたは部分摘採する。 | |
部分的な被害で、被害部と無被害部がはっきりしない場合 | 被害芽率が低い場合 | そのままにしておき、摘採時に被害部分が混入しないよう留意する。 | |
被害芽率が高い場合 | 被害部分のみ取り除く程度に軽く整枝する。 | ||
全面的被害の場合 | 被害部分のみ取り除く程度に軽く整枝する。 | ||
摘採直前 | 部分的被害の場合 | 拾い摘みまたは部分摘採する。 | |
全面的被害の場合 | 春整枝面で刈り捨て、再生芽を待つ。 |