5.三番茶硬化期病害虫(コカクモン、シャクトリ、ハダニ)の防除
対象となる病害虫
○コカクモン(チャノコカクモンハマキ)
△シャクトリ(ヨモギエダシャク)
△ハダニ(カンザワハダニ)
(記号の意味◎:重要病害虫、○:注意が必要な病害虫、△:発生に応じて対応)
意義
開葉して硬化し始めた三番茶を直接食害するような害虫(シャクトリ、コカクモン)からの被害を回避し、秋芽の発生へつなげていくことが主な目的です。ただし、三番茶~秋期は生育ステージが茶園によっても異なってきたり、同一茶園内でも様々なステージが混在する時期となりますので、防除に際しての判断が難しくなってくる時期でもあります。生育ステージ、病害虫発生(予察)情報、薬剤の特性を十分把握し、様々な状況に応じた防除対策がとれるよう日頃から整理ておきましょう。
防除時期の考え方
コカクモンは、フェロモントラップにより発生時期が把握できます。成虫発生ピークを確認し、その一週間後が防除摘期となります。
シャクトリは、幼虫がスポット的に発生する場合が一般的ですが、まれに全園的に発生する場合もあります。8月中旬以降の発生が多く、体長が1cmの若齢幼虫頃の防除で高い効果が得られます。
夏期に降雨が少なく乾燥状態が続くと、このころからハダニが急激に発生することがあります。気温が高く増殖スピードが速いため、発生初期に防除しておくことが大切です。
防除要否判断の目安
コカクモンでは、この時期の大まかな要防除の目安として、ファネル型フェロモントラップへ一週間当たり150頭以上と考えられますが、茶園によって発生量が違うこともあるので、成虫飛来状況も確認しておきましょう。
高温で乾燥状態が10日以上続いており、今後も降雨の見込みが少ない状態で、ハダニの寄生葉率が5%を超えるようなら防除しておくことが望ましいでしょう。逆に、発生が少なく、降雨も多く見込める場合は、天敵の活動が活発化するので防除の必要はないでしょう。
資材および方法
コカクモンとシャクトリは、同時防除が可能となる場合もあるので、双方に効果的な薬剤を選択します。なかでもIGR系の脱皮阻害剤や、脱皮促進剤は、防除摘期の幅が比較的広いので計画的な防除に向いています。
また、ハダニ類は特に薬剤抵抗性がつきやすいため、防除する場合はこれまでに使用していないものを選択しましょう。
他の病害虫も発生が見られる場合は、状況に応じて適宜防除対象に加えましょう。
<土壌改良資材の投入と深耕>
土壌改良資材投入の目的は、大きく分けて二つ挙げられます。
ひとつは土壌酸度(Ph)の矯正を中心とする土壌化学性改善で、茶樹は本来好酸性作物ですが、現状の茶園では極度の酸性(Ph:3.0前後)に陥っているところも多いようで、適正値(Ph:4.0~5.0)に近づけることが必要です。同時に石灰や苦土は毎年溶脱していくため、補給していかなければなりません。こうした目的で、一般的には苦土石灰などの石灰資材を100~150kg程度投入しますが、茶園土壌の化学性については土壌やこれまでの管理によって異なってきますので、事前に土壌診断を実施し、診断結果に基づいて資材や施用量を選択していきましょう。
一方、もう一つの目的は、土壌の腐植を高め、物理性や緩衝能力を良好にし、根圏環境を好適にするためです。そのために、堆肥や敷き草を毎年茶園に投入することは有効と考えられ、古くから土づくりの基本とされています。
深耕は、土壌の通気性・物理性改善を目的に行われ、投入した有機物が分解し、腐植が表層に蓄積するため、反転鍬を用いてそれを下層にすき込むねらいもあります。しかし、この場合、畦間の細根を断根してしまうので、一般的には新根の成長が著しくなる前の9月上~中旬に行うのが適当とといわれ、真夏の干ばつ時に実施すると逆効果となるでしょう。
また、乗用型管理機にみられるサブソイラー(振動式心土破砕)方式の深耕では、断根は少なく、通気性改善を中心に考える場合、有効と考えられます。