4.三番茶新芽病害虫(ウンカ、スリップス、ホソガ、炭疸病、新梢枯死症)防除
対象となる病害虫
◎ウンカ
◎スリップス
△ホソガ
△炭疸病
△新梢枯死症
(記号の意味◎:重要病害虫、○:注意が必要な病害虫、△:発生に応じて対応)
意義
三番茶芽は後に翌年一番茶の親葉の中心となるため、いかに順調に生育させるかが来年の一番茶に大きく影響します。そのため、新芽生育初期から病害虫の被害を受けないよう防除していくことは大変重要とされています。
この時期から秋期にかけて様々な病害虫が発生しやすい状況にありますので、予察情報や新芽生育状況を十分注意しながら翌年の親葉づくりを行っていきましよう。
防除時期の考え方
この時期の新芽には二番茶期と同様にウンカ、スリップスが発生しやすい時期であり、また、最も被害が出やすい時期でもあります。そのため、ウンカ、スリップスの防除は欠かせません。二番茶期と同様に新芽生育に伴って増殖してくるため、萌芽~開葉初期に防除し、初期密度を低くしておくことが大切です。
一方、ホソガが開葉期に飛来し産卵が多く見られた場合、被害が発生することがあります。こうした場合、この時期は被害発現(巻葉)までの期間が短いため、基本的に産卵ピーク(フェロモントラップ発生ピーク)直後に防除を行います(産卵が少なければ防除は不要)。
炭疸病は開いたばかりの新葉が最も感染しやすく、新梢枯死症は新芽の包葉や不完全葉が落ちる時(2葉期頃)の傷口から感染します。この感染期前後が防除適期となり、これらも開葉初期が防除適期となります。
防除要否判断の目安
二番茶期と同様ウンカ、スリップスは必須防除と考えましょう。
ホソガは7月下旬以降にはダラダラと発生しますが、高温によってふ化幼虫が発育阻害を受けやすく、また、天敵の活動が最も活発な時期でもあるので、成虫の発生の割に被害が少ないことも年によって見受けられます。また、一番茶期のときのように成虫飛来時期に新芽がまだ開葉していない場合などは防除の必要はないでしょう。
炭疸病、新梢枯死症等の病害は降雨により感染するため、梅雨明け後の天候が安定し三番茶新芽発生初期の降雨が少ないときは、比較的発生が少なくなり、防除が不要な場合もあります。しかし、二番茶後はならし程度にとどめたため葉層が残っている場合、梅雨末期の天候不安定期と三番茶新芽発生初期が合致すると、逆に発生が多く、防除が必要です。
資材および方法
三番茶を摘採しない場合、収穫のない時期なので、収穫前日数が長い農薬の使用が可能となります(ただし秋番茶を収穫する場合、最終摘採後となっている農薬は使用不可)。
また、病害を対象とする薬剤の場合、予防的効果の高い薬剤(予防剤)と治療的効果の高い薬剤(治療剤)およびその中間(予防治療剤)に大別され、予防剤は感染(降雨)直前に使用し、治療剤は感染(降雨)後に使用しないと効果を十分発揮できないことがありますので、資材を選択するうえで、留意しておきましょう。
このように、対象となる病害虫の種類も多く、農薬によって対象病害虫や使用タイミングも微妙に異なりますので、下表を参考に対照とする病害虫に応じて農薬を選択し、場合によっては組み合わせて使用ましょう。ただし、すでに使用した農薬は薬剤抵抗性が獲得されるのを回避するため、できる限り連用を避けましょう。
<三番茶芽の生育が順調で伸びすぎた場合>
二番茶後せん枝を行った場合でも、後の三番茶芽が順調に生育し、8月中旬時点で十分な葉層が確保できそうなことも年によっては見られます。そのような場合、このまま秋番茶(整枝)まで放置すると秋枝が伸びすぎ、節間のよく伸びた位置で整枝することになり、翌年の一番茶は芽の粗い芽重型仕立てとなってしまうことがあります。
そのような場合、整せん枝時に意図した仕立てと違ってくることもありますので、そのときは整せん枝面より5cm程度程度高い位置(2~3葉残す)で整枝するか、または生育が不揃いな場合は、徒長枝のみを切除して分枝数を確保することができます。
ただし、実施時期が遅れると後の秋芽生育も遅くなりますので、遅くとも8月中旬までに行った方が安全でしょう。