1.二番茶後整せん枝
意義
この時期における茶園の整せん枝は、その程度や時期によって来年以降の茶園の状態を決定する重要な作業ともいえます。
現在の茶園の状態と意図しようとする茶園の姿を十分考慮しながら整せん枝の時期や深さを考えていかなければなりません。
特に、この時期に更新を目的としたせん枝(古葉・枝条を刈り落とす)を行う場合は、秋整枝時までの回復期間が短いため、夏期の天候によっては十分な葉層が確保できない場合もありますので、こうした点も考慮して実施していく必要があるでしょう。
強度(深さ)の考え方
基本的な考え方として、樹勢の弱っている茶園や、中切り更新翌年のように芽数の少ない状態の茶園等で、芽数型の仕立てを意図する場合は、通常の整枝(ならし)を行います。
また、葉層の更新と毎年樹高が高くなってくるのを軽減するのが主な目的の場合は、樹勢に応じて摘採面から3~10cm程度のせん枝を行います(前述のように回復期間が短期であるため、強くても摘採面から10cm程度までとした方が無難でしょう)。ただし、連年行う場合、同じ高さ(部位)でせん枝すると細枝が密生し、かえってその後の芽の生育が不良となることもあり、さらに下部でせん枝する必要があります。この時期にせん枝を行う場合、こうした点を考慮してせん枝強度(深さ)を決定しましょう。
さらに、せん枝を行った場合の副次的な効果として病害虫の発生抑制が挙げられます。とくに、炭疸病や新梢枯死症等の病害はせん枝が強い(深い)ほど後の発生抑制につながっているとされています。また、葉層を生息場所とする害虫類(コカクモンハマキ等)も生息場所がなくなるため、発生抑制につながっているとも考えられます。こうした点は、後の病害虫防除の際、農薬散布量削減に役立てることができます。
時期の考え方
一般的には、せん枝強度を強く(深く)行う場合ほど、早い時期に行った方が安全と考えられますので、二番茶摘採時期が遅れた場合、強いせん枝は行わないようにしましょう。特にこの時期は梅雨明け時期にも近くなるため、強い(深い)せん枝直後に梅雨明けとなり、しばらく降雨のない状態が続くと、後の回復にかなりのダメージをうけることがあります。
二番茶後の整せん枝は、長期予報や労力配分等を考慮し、意図するせん枝強度(深さ)と関連づけて実施していく必要があります。
<一番茶後実施した中切り更新茶園のその後の処理>
一番茶摘採後に中切り更新を実施した茶園は、順調に生育するとこの時期には再生芽が出揃ってきます。このまま秋整枝まで伸ばしておくと枝条の密度も荒い状態で整枝することになり、翌年の一番茶の芽数も極端に減少し、収量減につながります。そのため、分枝数を増やし、枝条密度を高めるため、再生芽の硬化が進んだ時点(中切り後60~70日、平均開葉数5~6葉)で再整枝を行います。
整枝の深さは、中切り更新位置より5cm程度高い位置(2~3葉残す)で整枝します。ただし、更新後の回復が遅れたり、再生芽の生育が芳しくない場合(目安として7月中に十分伸育しなかった場合)はこの時期の整枝は見送り、秋整枝まで待って養分蓄積を優先させましょう。