5.一番茶芽の被覆(かぶせ茶・色沢向上)
意義
茶は新芽を被覆により遮光することによって、葉が薄く大きくなり、新芽は柔らかく維持されます。また、葉緑素の分解速度が抑制され、新芽は濃緑となり、荒茶色沢が向上します。また、内質面では一定期間遮光するとうま味成分であるアミノ酸からタンニンへの変化が抑制され、品質の高いものとなり、同時に「かぶせ香」と呼ばれる独特の上品な香りを発するようになります。
こうしたことから、被覆期間や遮光程度を調節することにより、「玉露」に近い品質のものから、「煎茶」の色沢を向上させたものまで、様々な荒茶品質となる生葉を栽培することができます。
時期の考え方
あまり早い時期から強い遮光を行うと新芽の生育が抑制されますが、逆にあまり遅すぎると収量は確保できる反面、品質が伴いません。こうしたことを考慮して、高品質の「かぶせ茶」をねらう場合、新芽2葉期頃から被覆しはじめ、14日間程度被覆します。この際、二段被覆施設を用い、遮光度を70%程度から95%程度へと段階的に強めていくことにより、「玉露」にほぼ近いかたちとなります。
一方、収量性を考慮して中級「かぶせ茶」をねらう場合は、3葉期ころから直接被覆で80%程度の遮光を14日程度行います。
また、煎茶としての色沢向上をねらう場合は摘採前5日間前後被覆します。
方法
被覆資材には遮光率が50%程度の低い資材では被覆の効果が十分でないため、遮光率60%以上のものを使用しましょう。
直接被覆では、茶株面の気温が上昇しやすく、また、葉焼けや強風によるすれなども発生しやすいため、被覆期間が15日を越えるような長期間になる場合は被覆棚を利用した方が無難でしょう。
表を参考に目標とする被覆茶品質に応じて被覆方法・期間を選択していきましょう。
表1かぶせ茶の目標とする品質に応じた被覆方法
被覆方法 | 目指す品質 | 区分 | 遮光量 | 被覆開始時期 | 期間 |
---|---|---|---|---|---|
直接被覆 | (中級かぶせ) | 直掛 | 80-85% | 2.0-3.0葉期 | 10-15日 |
棚式二段被覆 | (上級かぶせ) | 一段目(上段) | 70-80% | 2.0葉期 | 7-10日 |
二段目(下段) | 70-80% | 3.0-3.5葉期 | 3-5日 | ||
併せて 80-85% |
10-15日 |