4.一番茶新芽の病害虫防除(ハダニ、ホソガ、ナガサビダニ)防除
対象となる病害虫
○ハダニ(カンザワハダニ)←発生状況により省略可
○ホソガ(チャノホソガ)
△ナガサビダニ(チャノナガサビダニ)
(記号の意味○:注意が必要な病害虫、△:発生に応じて対応)
意義
(1)ハダニは新芽に上がってくるほど一番茶の収量・品質への被害が大きくなります。一番茶摘採までに加害を受けそうか、それとも加害の心配なく摘採できるかをこの時期に見極めておく必要があります。発生状況や天候の予想等を十分確認して判断していくことが重要でしょう。
(2)ホソガは通常一番茶芽での発生量は少ないですが、被害葉が混入することによる品質面での影響が大きいため、注意は必要です。しかし、発生時期と新芽生育時期の関係で、被害が軽減されたり被害発現前に摘採できることも可能なため、双方の時期を注意深く観察しましよう。
(3)サビダニは一番茶摘採以降の5~6月に発生が多くなるのが従来の傾向ですが、ここ数年の傾向として、3~4月の気温が高く、降雨が少ない場合に発生が早まり、気が付くと一番茶新芽や一番茶摘採残葉に多発していたということもあります。また、肉眼で確認しにくく、被害が発生してから気付くことも多いため、発生情報等に気をつけておきましょう。
防除時期の考え方
4月中旬頃、裾葉や親葉に寄生していたハダニが新芽へ移動してきます。また、ホソガは新芽のみに産卵し、卵期から皮下潜行期(いわゆる絵描き状態)までが防除適期で、葉縁潜行期(葉の縁を折り曲げて閉じた状態)では防除効果が低下します。これらのことを考慮すると、一番茶1~2葉期がハダニ、ホソガの同時防除時期となります。
また、ホソガについてはフェロモントラップの誘殺ピーク時期で産卵時期(成虫発生ピーク)が判断できます。
防除要否判断の目安
(1)ハダニ:
萌芽期の防除を行っていない場合は、特に発生状況に注意する必要があります。この時点で、新芽の寄生葉率が5%を越えている場合は、収益性の高い一番茶を被害から回避するうえで、効果の安定した薬剤で防除する必要があるでしょう。
(2)ホソガ:
新芽の葉裏を見て産卵状況を確認し、30cm四方の範囲で水滴状の卵が2つ以上が確認できた場合は防除が必要といわれています。ただし、新芽にしか産卵しないので、新芽のない時期に成虫が飛来しても被害は出ません。また、三角巻葉になるまでにある程度の日数がかかるので、新芽に産卵された場合でも三角巻葉を作られる前に摘採期をむかえるために被害が生じない場合もあります。
<具体的には…>
ケース1.成虫発生ピークが萌芽前で1葉期までに発生が終わる場合
→防除はほとんど要らない。
ケース2.成虫発生ピークが萌芽期から1葉期
→摘採前に三角巻葉を作られる可能性が高い。
ケース3.成虫発生ピークが1葉期以降
→通常三角巻葉を作られる前に摘採をむかえる場合が多く、防除が要らな
い場合が多い。
上記のケース2、3のような萌芽期以降に成虫発生ピークがある場合は、グラフから三角巻葉が作られる日を予測して、摘採前になるかどうかをある程度判断できます。次のグラフを参照して、産卵確認日(成虫発生ピ-ク)から被害発生(三角巻葉)時期を推定してみましょう。
図 ホソガ産卵日からの被害時期予測例
《グラフの見方》
このグラフから茶園でホソガの産卵が確認できた日から、いつ頃に三角巻葉になるか予測できます。
4月21日に茶園でホソガの卵が見つかったとすると…
- 横軸の4月21日から上に進んで下のライン(青色)と交差したところを左に進んで日付を見る(5月5日)。
平年並みの気温ならば、三角巻葉になる最も早い日は5月5日と予測できます。 - 横軸の4月21日から上に進んで上のライン(赤色)と交差したところを左に進んで日付を見る(5月9日)。
平年並の気温ならば、遅くても5月9日には三角巻葉になると予測できます。
また、前年の秋の発生状況からもその年の発生状況をある程度推測できます。通常は年5回の成虫発生ピークがあり、11月には発生はほぼ終わります。しかし、秋の気温が高い時は10月から11月にかけて6回目のピークが現れたり、だらだらと発生が続く場合があります。そのような時は、越冬量が少なく翌年一番茶前の成虫の発生が少ない傾向にあります。
資材および方法
一番茶摘採直前なので摘採前日数には十分注意する必要があります。そのため、摘採前日数14日以内の農薬が適しているでしょう。また、各害虫の発生状況を考慮して、同時防除を行う場合は、各農薬の害虫への適用を確認して農薬を選定する必要があります。
この時期の主な防除対象はハダニとホソガですが、サビダニとの同時防除が可能な農薬もあるので、そのような農薬を使用しておけば一番茶摘採以降の発生を抑えることができます。