3.一番茶萌芽期前後の病害虫(ハダニ、カスミガメ、赤焼病)防除
対象となる病害虫
◎ハダニ(カンザワハダニ)
△カスミガメ(ツマグロアオカスミガメ)
△赤焼病
(記号の意味◎:重要病害虫、○:注意が必要な病害虫、△:発生に応じて対応)
意義
(1)ハダニは成虫で越冬しますが、春を迎えると徐々に産卵を繰り返し増殖をはじめます。一番茶摘採期までは気温もそれほど高くない時期なので加害をうけるほど増殖するまでに摘採期を迎えることもよくありますが、当初の越冬量が多かったり早春の気温が高めで増殖しやすい条件が揃うと摘採までに加害をうけることがあります。
(2)カスミガメは、発生も部分的ですが、新芽萌芽期に吸汁されると開葉後被害が目立ち、品質低下につながります。
(3)赤焼病は本県での発生はあまり多くはないですが、強風等による葉の傷口から感染するため、年や場所によっては発生の多いことがあります。
これらの被害から一番茶の親葉や萌芽前の新芽を守ることがこの時期の防除の意義となります。
防除時期の考え方
(1)ハダニは4月上旬ごろから越冬時のすそ部から茶園全体に広がり、繁殖をはじめます。開葉した新芽に寄生すると被害が大きくなるため、一番茶萌芽期に寄生葉率が要防除水準を超えている場合、卵や幼虫を主な対象に防除を行います。
(2)カスミガメは4月上旬頃ふ化し始め、成幼虫ともに新芽を加害しますが、萌芽期の幼虫の加害による被害が大きく、多発地においてはこの時期に初期防除を行います。
(3)赤焼病は早春期の強風により葉に損傷をうける直前または直後に防除するのが望ましいとされています。
防除要否判断の目安
(1)ハダニについては、茶園全体から無作為に葉を採取し、寄生葉率が5%(100枚のうち5枚に寄生)以上あれば要防除の目安と考えましょう。
(2)カスミガメは例年発生地帯が決まっており、周辺にキク科雑草が多い地域では特に注意し、茶園の中で早く萌芽した新芽に初期被害が見られたら早急に防除を行います。
資材および方法
ハダニの越冬成虫は自然に消滅していくので、この時期は殺卵、殺幼虫効果が高く、低温でも効果がある資材を使用します。カスミガメの常発地では同時防除できる資材を使用しましょう。
また、茶園全体に葉の裏面にも十分かかるように、動力噴霧機などによる手散布では400リットル/10a程度、乗用型防除機では300リットル/10a程度をていねいに散布します。
赤焼病の常発地帯では感染期に銅水和剤で1~2回防除します。
その他
これまで必須防除として2月下旬から3月上旬に越冬ダニ防除が行われてきましたが、前年の10~12月に発生がほとんど見られない場合、この時期(萌芽期前後)に適正な防除を行えば、越冬ダニ防除は省略できると思われます。
カスミガメの常発地では茶園周辺にある雑草(ヨモギ、アレチノギク、オオマツヨイグサ、ギシギシ)などの食草の除去も発生抑制の効果があります。
<メモ:農薬の使用基準における「収穫(摘採)前日数、使用回数」とは>
国の登録をうけたすべての農薬は「適用作物」「適用病害虫」のほか「使用濃度」、「収穫(摘採)前日数」「使用回数」等の使用方法が記載されています。そのうち「収穫(摘採)前日数」とは、規定の濃度・散布量・回数で使用した場合、この日数を経過後収穫(摘採)しても、国の定めた基準値(農薬残留基準・登録保留基準)以下しか残留しないとされる日数のことで、農薬が登録される際にはこうしたデータが確認されています。したがって、基準外の使用には安全性を示すデータがないばかりか、改正後の農薬取締法では違法使用として使用者に罰則規定が設けられています。
また、決して薬剤の残効日数や残留がゼロとなる日数ではありませんので勘違いしないよう気をつけましょう。
一方、「使用回数」とは栽培期間中での同じ薬剤および同成分薬剤の使用回数のことで、茶の場合栽培期間とは「前回摘採終了から当該摘採終了まで(茶期)」となっています。三番茶を収穫しない場合は二番茶摘採後から秋番茶までが栽培期間と解釈できるので、使用回数の遵守には特に注意しましょう