はじめに
本県の茶生産において、担い手の高齢化や後継者不足が深刻化するなか、将来的にも全国に誇れる茶産地としての位置づけを確固たるものにするため、茶生産の機械化が全県的に推進されてきました。その結果、地形的にも恵まれた県内茶園では飛躍的に機械化が進み、全茶園のほぼ25%にあたる約800haが機械化される見込みとなり、南九州を除く茶産地府県のなかでは最も進んだ茶産地となりました。
また、地球的な環境に対する危機感が強まる一方、最近では食品の安全・安心に対する消費者のニーズが急速に高まってきました。
こうした状況から、茶生産においても産業としての持続的発展を求め、生産性や収益性を追求していくのはもちろんですが、同時に「食品生産業」としての自覚を再確認し、消費者に安全・安心を提供するとともに生活者とも協調しながら生産活動を行っていくよう求められています。
茶園管理のための研究は古くから国をはじめ各生産府県において行われてきており、様々なことが明らかになってきています。しかし、土地利用型の永年樹で、しかも新芽という栄養生長器官を収穫する「茶」の特質から、まだまだわからないことも数多くあります。一方、茶樹は比較的多様な栽培環境に対する適応力が強く、精密な管理をしなくても生産が可能なことから、ややもすると茶樹やその周辺環境に必要以上の負荷を与えてきたのかもしれません。
これらのことを踏まえ、本冊子はそれぞれの管理の位置づけを再確認し、基本的に明らかにされている科学的な知見からどのような茶園管理体系を実践していくかを模索する「参考書」として活用いただくことを目的として編集しました。急変しつつある茶生産環境に対応するため、より合理的な茶園管理を農業者の皆さんが実践するために本冊子が活用され、本県茶業の永続的な発展につながりますことを期待しております。
三重県中央農業改良普及センター