第9回
前回の転記はいかがでしたか?単純作業ですが、実際に転記作業をしてみると、左右を間違ったり、転記もれがあったりとミスのもっとも出やすい作業です。手書きで簿記を記帳したことのある方ならパソコンの有り難みをつくづく実感できる部分でしょう。
さて、今回は、元帳についてもう少し説明し、複式簿記の優れた機能の一つである「ミスをチェックする機能」の「試算表」について説明します。
元帳について
第7回練習問題の仕訳結果をもう一度、ここに掲載します。(スペースの関係上摘要欄を除いています。また、(2)の「普通預金」を「当座預金」に変更しました。)
番号 | 月日 | 借方金額 | 借方科目 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|---|
(1) | 1月1日 |
250,000 2,752,000 105,200 292,500 80,500 7,000,000 10,480,200 |
現金 当座預金 売掛金 生産物 肥料 機械器具 合計 |
買掛金 未払費用 農業近代化資金 農林漁業金融公庫資金 資本金 合計 |
650,000 250,000 1,500,000 1,800,000 6,280,200 10,480,200 |
(2) | 600,000 | 現金 | 当座預金 | 600,000 | |
(3) | 2,453,400 | 買掛金 | 当座預金 | 2,453,400 | |
(4) | 105,200 | 現金 | 売掛金 | 105,200 | |
(5) | 344,785 | 修繕費 | 現金 | 344,785 | |
(6) | 134,700 | 種苗費 | 買掛金 | 134,700 | |
(7) | 20,000 | 販売・一般管理費 | 現金 | 20,000 | |
(8) | 481,080 | 諸材料費 | 買掛金 | 481,080 | |
(9) | 360,000 | 家計勘定 | 現金 | 360,000 | |
(10) | 205,000 | 租税公課 | 当座預金 | 205,000 |
この仕訳結果を元帳の各勘定科目のページに転記をするわけですが、全勘定科目のページを載せると大変なので、説明のために元帳の「現金」のページだけを示します。
このページを見ると、「現金」という資産の増減がよく分かると思います。
「資産」の場合、左(借方)に金額があれば増加したことを、右(貸方)に金額があれば減少したことを示します。
従って、「現金」のページを見ることで 1月1日のスタート時に25万円の現金があり、
(2)の取引で「当座預金」から引き出して60万円増加し、
(4)の取引で「売掛金」を回収し105,000円増加し、
(5)の取引で「修繕費」として344,785円減少し、
(7)の取引で「販売一般管理費」として20,000円減少し、
(9)の取引で「家計勘定」として360,000円減少し、
といった、増減の経過が分かります。
この様に、仕訳結果を元帳に転記した結果を見ると、勘定科目の増減を左右に分けて記録することの意義が分かると思います。
そして、通常は一ヶ月単位で借方合計、貸方合計を行い月末時点での残高を計算します。
ミスチェック機能 試算表
日々の取引を仕訳し、元帳に転記し、各勘定科目の借方合計、貸方合計、各月末の残高を計算したら、「試算表」を作成します。
取引があり、仕訳を行うと必ず二つ以上の勘定科目が変化し、左右(借方、貸方)の合計は必ず同額となります。従って、仕訳を行い転記したすべての勘定科目の左(借方合計)と右(貸方合計)は一致することになります。もし、一致しなければ、どこかで「ミスがあった」ことになります。このことを利用して、ミスのチェックを行うのが試算表です。
上の例で示すと、仕訳で出てきた各勘定科目の左側(借方合計)と右側(貸方合計)及び各勘定の残高を表にした次の表が合計残高試算表です。
合計残高試算表 ○年×月△日
この試算表は、「借方合計と貸方合計」および「借方残高合計と貸方残高合計」がそれぞれ一致しています。この様な試算表が出来上がれば、仕訳・転記作業に「ミスがなかった」と判断できる訳です。
実は、この試算表を作るときにも、ミスをしてしまい、最初は合計額が一致しませんでした。ミスを捜したところ、(2)の取引を転記する際、現金60万円のところを6万円と一桁間違えて計算し、そのために合計額が一致しなかったことが分かりました。
この様に、試算表によって単純な転記ミスや計算ミスをチェックすることが出来ます。ただし、チェックできるのは、「最初から仕訳の左右の金額が違っていた」「転記する際に左右を間違えた」「計算を間違えた」といったミスです。仕訳が間違っていても、左右の金額が同額であればそれはチェックできません。
例えば 「肥料を現金で購入した」という取引を「現金 ○○円 肥料費 ○○円」と左右を逆に仕訳してしまっても、この様なミスは試算表ではチェックできません。「肥料費の元帳なり、試算表の右側(貸方合計)欄に肥料費が出てきた」ことを「おかしい!」と思う知識がないとこの様なミスはチェックできません。これはパソコン簿記でも同様です。
今回は、元帳と試算表について説明しました。ここまで出来れば、普段の簿記記帳は「出来る」ことになります。
次回は、いよいよ「決算」について説明します。