第3回
簿記記帳の開始
さて、いよいよ簿記の記帳を始めましょう。
簿記を開始するにはまず期首に、開始貸借対照表を作成することが必要です。開始貸借対照表を作成するためには、その経営の資産と負債を実査(棚卸し)する必要があります。
前回簿記一巡の流れで説明した「(1)期首の財産の状態を調べて「貸借対照表」を作り」という部分です。つまり、簿記をつけ始める時に、経営の財政状態(プラスの財産である資産がどれだけあって、マイナスの財産である負債がどれだけあって、自分が経営に投資している金額である資本がどれだけか)をまず、整理するわけです。
1.資産を調べる
これまで、資産をプラスの財産と単純に説明してきましたが、簿記では資産を次の図のようにもう少し細かく分類しています。
資産を調べる際には、当座資産、棚卸資産、固定資産に分けて、期首の金額を調べます。
(1)当座資産
期首の額をそのまま調べればいいので、特に問題はないと思いますが、実際は、経営用の現金、家計用の現金と分けているかたは少ないかと思いますので、当面の農業経営に必要な金額を計上すればいいと思います。現金出納帳等をつけている場合は、その金額を引き継ぎます。
売掛金は、生産物を販売して回収していない代金のことですが、実際には、年末に販売(出荷)して、年を越して代金を回収した場合にその金額を計上します。理由は、また後日説明します。
(2)棚卸資産
未使用の生産資材は、数量に単価を掛けて計上します。生産途中の立毛、家畜は購入価格に、その後の育成費、肥育費等を見積もって加えることになっていますが、実際には果樹なら何年生はいくら、家畜なら何ヶ月令はいくら、というように評価額をあらかじめ決めておいて評価するのが一般的です。
残っている農産物については、基準価格とか政府買い入れ価格があればそれで計算し、その他の農産物は収穫時の庭先価格で評価します。
(3)固定資産
固定資産は取得価額から今までの減価償却費を引いた額を評価額とします。実際に評価額を出すためには、取得価格、取得年月日、残存価格、その資産の法定耐用年数を調べる必要があります。
土地は固定資産であり、農業経営を行う上では重要な資産ではありますが、減価償却の対象とはならず、一般的には頻繁に売買が行われるものではありませんので、資産として計上しないのが一般的です。記帳開始後に経営上の資産を使って土地を取得した場合にその取得価格で計上するようにしています。
簿記の教科書的に説明すると土地は取得価額をそのまま計上します。記帳開始時には、農地としての評価額で計上するのが望ましく、固定資産税の評価基準を用いる方法があります。
その他固定資産として、有価証券、出資金、電話権、地上権等がありますが、経営上直接関係のない、あるいは関係の薄いものは計上する必要はありません。評価する場合は、取得価額で計上します。
2.負債を調べる
負債も簿記では原則1年以内に返済する必要のある「流動負債」と1年以上の長期の負債である「固定負債」に分けて整理します。
(1)流動負債
未払金、買掛金、前受金等があります。これらは額がはっきりしているので問題はないと思います。
実際の例を上げると、
年末(12月)に資材を購入したが口座からの引き落としが翌年(1月)になるといった場合に買掛金として計上します。
(2)固定負債
期首での借入金残高を調べます。農業では、改良資金や近代化資金等がこれに当たります。償還金の明細等で残高を確認することが出来ます。
3.資本を求める
資産と負債がわかれば、資産の総額から負債の総額を引いてその経営の資本額を求めます。
次に実際に調査し、貸借対照表を作った図を載せますので、イメージをつかんでください。
財産目録
平成○年1月1日現在
開始貸借対照表
平成○年1月1日現在