第12回
前回の減価償却費の計上はどうでしたでしょうか。計算は、面倒ですが、仕組みや「なぜそんな手続きをするのか」といった部分は納得していただけたと思います。 こちらの講座は、いわば教科書的な解説です。個別具体的に「こんな場合はどうすればいいの」といった質問は、メール等でお問い合わせください。
3.固定資産の育成高の整理
乳牛や繁殖牛といった大動物、果樹や茶樹の大植物といった資産は、それらが成畜や成園になるまでの育成期間があります。この育成期間中にそれらの資産を育成するためにかけた費用は、それらが成畜や成園になってから生み出す収益に対するもので、現時点の費用にはなりません。ちょっと理屈っぽく思われるかも知れませんが、複式簿記で、「費用」とは「その年の「収益」を得るために直接要した費用の額」と言うことになっています。つまり、将来の収益のために使用した費用なので今年の分には上げられない、と考える訳です。
この育成高の計算は、次の式によって求められます。
当期の育成高= (当期中の種苗費、素畜費、種付料)
+(当期中の肥料、飼料、農薬等の投下費用)
-(育成中の果樹等から生じた収入金額)
育成中の資産に当期に新たにかけた経費から、育成中のものから得られた収入金額を引いたものが育成高の金額になるわけです。
例
期首に50万円の育成中のみかん園があったとしましょう。
このみかん園に今年使用した肥料、農薬等の費用は10万円分でした。
育成中のみかん園ですが、少しはみかんがなりますので収穫したところ5万円分の売上でした。
このような場合、育成高は 10万円-5万円=5万円になります。
この育成高の整理の仕訳方法は
借方科目 | 貸方科目 | ||
育成果樹 | 5万円 | 固定資産育成高 | 5万円 |
この仕訳によって、「育成果樹」という資産が5万円増えて、「固定資産育成高」という収益が発生したと言うことになります。
ちなみに、このみかん園の期末の評価額は育成果樹として
50万円+10万円-5万円=55万円
となります。もし、このみかん園のうちの一部が期中に成園に達した場合は、その額を評価額から差し引きます。この場合、当期に30万円分が成園に達した場合は、期末の育成果樹は
55万円-30万円=25万円
と言うことになります。
今回は、短めですが、短縮講座と言うことでお許しください。次回で決算整理事項の4、5、6を説明し、決算整理事項の説明を終わりたいと思っています。