未来型カンキツ産業へのチャレンジ
1.園地基盤の整備
三重県では紀南地域を中心に昭和40年代初頭から、県営ほ場整備事業で当時は画期的であった改良山成り工法を取り入れて、平坦にしたカンキツ園の基盤整備が行われました。これが発端となり国営・団体営などの圃場整備がすすめられ、機械化が可能な平坦な基盤整備園が造成されてきています。 今後とも積極的に整備を行い、経営基盤の強化を図っていきます。
(1)金山パイロット(写真左から1)
昭和39年~45年にかけて三重県で最初の改良山成工法で163ヘクタールが園地造成された金山パイロット(熊野市)
(2)井田パイロット(写真左から2)
昭和45年~50年にかけて各地で行われた団体営基盤整備で造成された井田パイロット園(紀宝町 12ヘクタール)
(3)国営御浜地区 中立団地(写真左から3)
昭和50~平成3年にかけて国営御浜地区農地開発事業(約400ヘクタール 13団地)により造成された中立団地(御浜町 62ヘクタール)
(4)奇露地区(写真左から4)
一筆一筆が細かく、所有権が入り組んだ海岸線に近い既設園でも機械化が可能な園地に再整備されつつある(御浜町 10ヘクタール)
2.機械化・軽労働化
若者に魅力あるカンキツ栽培に、また、今後進展が予想される作業受委託、園地流動化に対応して、進みつつある基盤整備園での機械化・軽作業化体系の確立が求められています。本県でも防除作業やかん水作業などを中心に積極的な対応を図っています。
(1)スピードスプレヤーの普及(写真左から1)
東紀州の1.5ヘクタール以上の規模の農家を中心に普及しており、現在約60台200ヘクタール余りの園地での病害虫防除に利用されています。SS導入により、園内道が整備され収穫果実の運搬やその他作業も同時に軽労化されています。
(2)施肥機の導入(写真左から2)
施肥作業は農業者の高齢化にともなって過重な作業となってきています。園内道を利用した自走式施肥機も一部で導入され、軽労化への試みがなされています。
(3)点滴かん水施設の導入(写真左から3)
夏期の干ばつに備えて、少ない水源で効率的なかん水が行えるよう点滴かん水施設が導入されています。極早生温州を中心として、干ばつ時の樹勢維持と果実の高品質化に利用されています。
(4)スプリンクラーの導入(写真左から4)
SS導入が難しい園地などでは病害虫防除とかん水を目的とした多目的スプリンクラーの導入がすすみつつあります。
3.高品質安定生産
省力化・軽労化とともに高品質安定生産がもう一つの大きな課題となります。品種や系統が多様化する中で、優良品種への転換と早期成園化や連年安定生産、高品質化のための新しい技術の導入、確立に努めています。
(1)「カラ」のネット栽培(写真左から1)
「カラ」は高級果実として栽培面積が増加しつつありますが、かいよう病に弱いため、防風対策としてネット栽培を行っています。ネット栽培は近年増加しつつある鳥獣害の防止にも有効となっています。
(2)「カラ」の少加温栽培(写真左から2)
厳寒期のす上がり防止とかいよう病防除のため、ハウス栽培を行っています。加温は冬期に果実が凍結しない程度の温度としています。
(3)極早生温州のグリーンハウス栽培
極早生温州の早期出荷と高品質化を目的に2月上旬から加温する少加温栽培(グリーンハウス)が導入されています。極早生の出荷より一足早い8月下旬から収穫を行います。
(4)隔年結果回避のための半樹摘果(写真左から3)
完全な表樹に対して半樹を早期に全摘果し、隔年結果の防止に努めています。
(5)大苗育苗(写真左から4)
新しい品種への転換や改植をスムーズにすすめるため、2~3年生の大苗に育成して農家へ配布できる体制を整えています。
(6)マルチ栽培(写真左から5)
極早生温州の着色促進と糖度アップを図る手段として、平成11年から紀南地域でマルチ栽培に取り組んでいます。また、中勢地域でも青島温州で取り組み始めています。