三重で生まれ育ったカンキツ
1.崎久保早生
(1)来歴
本県南牟婁郡御浜町の崎久保春男氏が昭和40年に苗木で植栽した松山早生の内の1樹が早熟であることを発見し、この樹から採穂して苗木を育成し結果させたところ昭和53年に原木同様早熟を確認できたことから地域の中で注目されるようになりました。
ちょうど極早生温州の有望系統の探索が全国的に行われており、当地域でも紀南かんきつセンターが中心となり普及センター、農協等の関係機関が一体となって、他県から取り寄せた有望系統の適地性を調査中であったため、これらの系統とあわせて検討を行ってきました。
昭和56年から57年の2ヵ年の調査の結果、従来の宮川、興津早生と比べて収穫期が速く、経済的にも有利な品種であることが確認されたので、地元の御浜町、三重御浜農協(当時)で増殖計画を策定し御浜町を中心に振興を図るようになりました。
(2)品種の特徴
幼木時の樹勢は良好ですが、結果期に入ってからは宮川早生に比べると弱くなります。このため、樹高は低くやや開張し、春枝の長さも短くなります。
開花期は宮川早生より1から2日早く、着花は良好で弱い枝に群生して着花するため、新梢の発生が弱く、少なくなります。
果実は9月中旬には100グラム内外の大きさになり、果形は扁平で果皮はやや厚く、果面は果梗側がやや粗い特徴があります。着色は9月中旬に2から3分着色、10月中旬に完全着色となります。
果実品質では糖度は極早生系統の中では高いほうの部類に属し、酸度は宮川早生に比べて2週間程度減酸が早く進みます。完全着色期以降は多雨年には浮皮が発生し、極早生系統の中では浮皮が多いほうで、極早生の分類から見てI型に属します。
(3)三重県での栽培への取り組み
品種登録には至りませんでしたが、三重御浜農協(当時)が発見者の崎久保氏から権利を買い受けて昭和60年頃から町内に広めました。当時、早生温州の青切り出荷にかげりがみえていたことから急激に広がりました。
2.カラ
4月中旬に収穫し、出荷する晩生のマンダリンで、種がありますが、皮が剥きやすく、糖度が非常に高いため、紀南地域で平成に入ってから高品質カンキツとして産地化を図っています。導入されている系統は本県の桂清吉氏が選抜したものが基となっており、この中から棘が少ない系統を再選抜し、優良系統として増やしています。収量性がやや低く、かいよう病に弱いため、ネット掛け栽培等を行っています。
3.セミノール
4月に収穫出荷する晩生のタンゼロ類で、豊産性で栽培しやすい品種であることから、主に紀南地域、南伊勢町で栽培されています。
カラ同様に本県の桂氏が選抜したものが中心となっています。越年品種のため、寒害によるす上がりの少ない海岸線の適地を限定して栽培を行っています。また、減酸が遅いため品質を厳選して出荷を行っています。
4.サマーフレッシュ
果樹試験場興津支場(当時)で、夏みかんとハッサクを交配して創られた品種で、収穫時期が6月の極晩生の雑柑(タンゼロ)です。年中みかんが採れる地域の特色ある品種として御浜国営農地開発団地で約20ヘクタール栽培されています。砂じょうが硬く、独特の舌触りと風味が特徴で、本県の紀南地域が唯一の産地となっています。