花しょうぶ
科名 アヤメ科(Iridaceae) 属名 アヤメ属(Iris) 種名 ハナショウブ(I.ensata THUNB.var.ensata HORT.) |
江戸時代ノハナショウブから改良され、現在500種くらいみられます。種名は<剣状の>という意味。
1 原種(ノハナショウブ)について(I.ensata THUNB.var.spontanea(MAKINO)NAKAI)
- 原産地は日本、朝鮮、中国東北、東シベリアで、山地、野原及び湿地に原生します。三重県では明和町(国指定天然記念物)と伊賀町(県指定天然記念物)に自生のノハナショウブ群があります。
- 葉は線形剣状で直立し、長さ30~60cm、幅6~12mm、やや濃い緑色でで中ろくは隆起します。
- 茎は50~120cmで2枝持つものもあります。
- 花は花系10cmくらいで、2花つけます。花色は赤紫が普通で、外花被片の下部より中央にかけて黄色です。6月に開花します。
2 来歴について
- 江戸時代(1603~1867)の中ごろ以降、ノハナショウブより育種されました。ノハナショウブより花色豊かに花形も立派に大輪となりました。
3 三系統について
<江戸系>
- 天保(1830~1843)から安政(1854~1859)にかけて栽培が広がりました。これらは、江戸ハナショウブと呼ばれ、その後、宮沢が調査と江戸系の改良を行いました。
- 現在明治神宮にあるハナショウブ園は明治26年(1893)に代々木御苑に作られたものです。
- 葉は直立性で茎は抽出し高生です。
- 花は単純で3、6英が主ですが、変種も多数あります。花色豊富で早生系統です。
<伊勢系>
- 別に松阪の吉井定五郎(1776~1859)が育種したと伝えられ、松阪の野口才吉(1829~1910)が改良し、伊勢(松阪)ハナショウブの基礎となりました。その後、長林、宮川、服部らが伊勢系を栽培、改良しました。
- 葉は茎と同長で分枝せず丈は低めです。花は3英でちりめん様が多く薄い。花弁は下垂します。
<肥後系>
- 熊本では満月会(1886)を組織し、肥後系を改良し門外不出としました。熊本の西田が一部を譲り受け横浜で育種し、現在市販されている肥後系のもととしました。
- 葉はなかばより垂れます。花は主として6英で雄大です。
4 品種について
- 古来から2000種くらいあったが、現在500種くらみられます。
- 現在数名が各系統の改良を行い、また各系統の組合せなどから新品種を育成しています。
- 黄色を導入するためキショウブとの種間雑種も行われました。
- 海外でもJapanese Irisと呼ばれ有名ですが、アルカリ性土壌のためよく育たず植物園や愛好家が栽培しています。
5 栽培について
- 日当たりの良い場所を好みます。
- やや乾燥に耐え、湿地に良く生育します。
- 鉢植えでも栽培可能です。
- 酸性の重粘質壌土を好みます。
- 繁殖は花後または秋期の株分け及び実生によって行います。なお、古い根茎の側芽も利用できます。
- 肥料は10aあたり窒素8~16kg、りん酸8~12kg、カリ8~16kgくらいが適当です。
- 花芽の分化は3月1日に始まります。
(参考文献:「原色花卉園芸大事典」)