1.事案の概要
平成19年9月に員弁川・藤川合流点付近の旧産業廃棄物最終処分場近傍の河川敷から油の滲出が確認され、その後、当該箇所の地中から回収した油に揮発性有機化合物(VOC)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)が含まれていることが平成22年10月に判明しました。その後のボーリング調査や掘削調査等により、下記の通り不法投棄された産業廃棄物や汚染等の状況が確認されました。(1)所在地
桑名市大字五反田字源十郎新田地内(2)廃棄物の種類
掘削調査等によりPCBを含むコンデンサ素子やVOCが封入されたドラム缶等が確認されており、これらは不法投棄されたものと考えられました。不法投棄の行為者は不明ですが、事案現場の地中に拡散しているPCBの量は約800 kg、VOCの量はベンゼン約17 kg、トリクロロエチレン約24 kg、テトラクロロエチレン約12 kg等と推定されました。(3)汚染等の状況
油汚染範囲は河川敷等の約15,000 ㎡に広がっていました。2.緊急対策の実施
事案現場の油中からPCBが検出されたことから、緊急対策として、平成23年4月に油滲出防止のための鋼矢板の設置、藤川護岸への大型土嚢及び集油管の設置を行いました。また、平成24年4月に藤川の瀬替え工事及び遮水シートの敷設と、低水部地盤の嵩上げ工事を行いました。緊急対策の結果、河川への油の滲出は抑止されました。3.生活環境保全上の支障の状況
緊急対策により油の滲出は抑止されましたが、依然としてPCB等を含む油が河川敷等の地中にあることから、将来、河川及び周辺地下水に油が滲出するおそれがありました。当該地の下流には桑名市西部水源地があるとともに、員弁川は沿川農地(約6,600 ha)のかんがい用水としても取水されており、第五種共同漁業権も設定されていることから、PCB等を含む油の滲出により、下流側の河川水及び地下水を汚染し、水道水源や農業用水の利用及び水産業等に生活環境保全上の支障が生じるおそれがあると判断されました。4.措置内容の公告
不法投棄の行為者等(廃棄物処理法第19条の5第1項各号に掲げる処分者等)が確知できていないことから、『不法投棄されたPCB その他有害物質を含む産業廃棄物を撤去するとともに、地中に存在するPCB その他有害物質を除去すること』および『PCB その他有害物質が公共用水域及び周辺地下水を汚染しないよう必要な措置を講ずること』について、平成24年10月12日に同法第19条の8第1項後段の規定に基づく公告を行いましたが、措置の着手期限(平成25年1月11日)までに着手はなされませんでした。5.恒久対策の検討及び進捗管理
本事案では、PCBの拡散等により生活環境保全上の支障が生じるおそれがあると考えられることから、支障除去等対策の技術的な調査および検討を行うため、平成23年7月に学識経験者で構成する「桑名市源十郎新田事案技術検討専門委員会(以下「委員会」という。)」を設置しました。第1回~第6回までの委員会では、技術的かつ経済的に合理的な支障除去対策やその実現可能性を踏まえた対策工法等について検討を行いました。また、第7回の委員会では、これまでに実施した支障除去等対策の中間検証を行うとともに、具体的な対策工法等が未定であった旧最終処分場内の対策(以下「後期対策」という。)にかかる、技術的かつ経済的に合理的な支障除去対策工法等について検討・選定を行いました。
6.産廃特措法に基づく実施計画にかかる環境大臣の同意
第1回~第5回までの委員会での検討結果を踏まえ、支障除去等対策の実施計画案を策定し、平成25年4月9日に産廃特措法に基づく環境大臣の同意を取得しました。詳細設計を経て平成25年度より、産廃特措法の支援を受けながら、行政代執行として恒久対策に着手しました。
【 実施計画の概要 】
(1)事業内容
対策区域をエリア区分し、これ以上の油の拡散を防止する措置を行った後に、エリア毎に最も適切な方法により油回収を行います。併せて、下流河川や地下水への滲出防止の観点から、汚染された油が付着した土壌等の対策を行います。(2)事業費
51億円(3)期間
平成25年度~平成34年度(2013年度~2022年度)7.産廃特措法に基づく実施計画にかかる環境大臣の同意(変更)
恒久対策では、前期対策として油の拡散防止措置を行うとともに、対策区域内のうち優先して取り組む必要のある河川近傍の区域から油の回収・処理等を行いましたが、第7回の委員会において後期対策の具体的な工法が選定されたこと等に伴い、実施計画の変更が必要となりました。
このため、後期対策の内容等を踏まえた実施計画を策定し、平成31年3月6日に産廃特措法に基づく環境大臣の同意を取得しました(第1回変更)。
また、社会経済情勢の変化により、計画事業費の不足が見込まれたことから、事業費の増額に係る実施計画を策定し、令和3年1月5日に環境大臣の同意を取得しました(第2回変更)。
【 実施計画の概要 】
(1)事業内容
対策区域をエリア区分し、これ以上の油の拡散を防止する措置を行った後に、エリア毎に最も適切な方法により油回収を行います。併せて、下流河川や地下水への滲出防止の観点から、汚染された油が付着した土壌等の対策を行います。また、当初の実施計画において対策工法が未定であった後期対策区域については、区域内の状況を踏まえ「PCB高濃度範囲の掘削+熱処理によるVOC対策+覆土等による拡散防止措置」により支障除去対策を実施することとします。
(2)事業費
90.85億円(第1回変更後:85.5億円)(当初:51億円)(3)期間
平成25年度~令和4年度(2013年度~2022年度)桑名市源十郎新田事案実施計画(PDF:7,610 KB)
※産廃特措法は、平成10年6月16日以前に行われた不法投棄等による支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、都道府県等が行う特定支障除去等事業に対し国が支援措置を講ずるものであり、同法では、事業費の90%が起債対象となり、起債額の50%が特別交付税にて措置されます。
8.対策中の水質モニタリング調査
支障除去等対策中の、周辺環境への影響の有無を監視するため、水質(河川水・地下水)のモニタリング調査を実施しました。9.行政代執行の終了及び終了後の対応
(1)行政代執行の終了
支障除去等対策の実施結果および技術検討専門委員会における学識経験者の意見等を踏まえ、令和5年3月31日に行政代執行を終了しました。
(2)行政代執行終了後の対応
行政代執行終了後も、県は生活環境保全上の支障等が除去された状態が維持されていることを確認するための、モニタリング等を実施していきます。
(ア)モニタリングの実施
事案地周辺等の河川水や地下水のモニタリングを実施します。
行政代執行終了後の水質モニタリング調査結果はこちら
(イ)工作物目視点検及びパトロールの実施
支障除去等対策で設置した工作物の目視点検や定期的なパトロールを行い、事案地の状況に変化がないことを確認します。