令和4年定例会2月定例月会議の議案等の説明に先立ちまして、令和4年度における県政の展開の考え方について説明いたします。
(国際情勢)
国際情勢を展望すると、現在、ウクライナをめぐり欧米諸国とロシアとの緊張状態が続いており、OPECの生産量調整と相まって、ロシアから欧州への原油等の供給が滞ることへの懸念から、原油等の先物取引価格が上昇しています。これに伴い、国内のガソリン価格が高騰しており、県民の皆様の暮らしにも影響を及ぼしています。
また、今月4日から開催されている「2022北京オリンピック」に関し、欧米では中国国内における人権問題などを理由として政府関係者の派遣が見送られ、日本政府も関係者の派遣は見送りました。台湾海峡問題をはじめ、今後、民主主義国家と専制主義国家との対立が顕在化すれば、県内企業の活動にも大きな影響を及ぼすものと考えています。
脱炭素社会の実現に向けては、今年6月にドイツで開催される G7サミットで、議題の一つとして気候変動への対応が掲げられています。昨年11月のCOP26の開催により、各国において積極的にカーボンニュートラルへの取組が進められることとなり、サミットを契機として、各国の脱炭素社会の実現に向けた動きが一層加速することが見込まれます。
また、米国では、連邦準備制度理事会が3月にゼロ金利政策を解除する意向を示しており、為替レートにも影響することから、自動車産業をはじめ、輸出企業の多い本県の産業・経済に今後どのような影響を及ぼすのか、注視していく必要があります。
(国政の動向等と県内の状況)
防災対策については、今年1月にトンガ沖で発生した大規模な海底火山噴火に伴う津波により、県内でも水産業などにおいて被害が発生しました。今後は噴火に伴う津波など、これまで想定していなかった自然災害への対応も含め、県民の皆様の命を守るため、市町と連携しながら、適切な避難行動の促進など災害への対応力を強化していきたいと考えています。
経済安全保障について、国においては、「新しい資本主義」の実現に向けた成長戦略の一つとして、経済安全保障を推進するために、サプライチェーンの強化や基幹インフラにおける事前安全性審査等の取組を盛り込んだ法律の整備が進められています。
また、デジタルサービスの実装やインフラ整備などを掲げるデジタル田園都市国家構想を強力に推進し、地方の活性化に取り組むとしています。さらに、少子化対策に関しては、4月から不妊治療の保険適用が開始されます。
県としても国の施策を積極的に活用し、国と連携しながら、DXの推進や少子化対策などの取組を進めていきます。
カーボンニュートラルの実現に向けて、茨城県鹿島港では2024年の着工に向けて洋上風力発電事業が進められているほか、国の「海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域」に指定される秋田県沖、千葉県沖ではそれぞれ、洋上風力発電事業を運営する事業者が決定されており、その導入が本格化しています。
洋上風力発電については、国のエネルギー基本計画において再生可能エネルギーの主力電源化の切り札として期待されており、本県においても再生可能エネルギーの導入を一層促進する観点から、洋上風力発電に関する調査を進める必要があると考えています。
人口減少については、令和2年の国勢調査結果によると、我が国の総人口は1億2,615万人となり、5年前の前回調査に比べ、約95万人の減少となっています。三重県の総人口は、177万254人となり、前回調査に比べ約4万6千人の減少で、減少率は過去最大の2.5%となっています。
また、令和3年の住民基本台帳人口移動報告によると、県外への転出超過数は3,480人となり、令和2年の4,311人から減少しましたが、そのうち15歳から29歳の若者が占める割合が約9割となっています。
一方、2020年5月には、月別の転出入について、データの比較が可能な2013年以降、初めて東京都で転出超過となり、その傾向が続いています。
人口減少に関して、これまで以上に危機感を持ちつつ、新型コロナウイルス感染症により、人の流れに変化が生じたことも踏まえながら、対策を講じていく必要があります。
(強じんな美し国ビジョンみえ・みえ元気プラン)
2030年頃を展望した県の長期構想「強じんな美し国ビジョン」と、ビジョンに掲げる基本理念を実現するための令和4年度からの5年間の取組方向を示す「みえ元気プラン」の概要案を取りまとめました。
ビジョンでは、「強じんで多様な魅力あふれる『美し国』の実現」を基本理念に掲げ、時代の潮流や三重県を取り巻くさまざまな環境変化に的確に対応しながら、新しい三重づくりに取り組んでいくことしています。
三重県は海・山の豊かな食材に恵まれた自然豊かな「美し国」として、古来から人、物、情報の交流が盛んな地域でした。幾度もの自然災害を乗り越えてきた経緯もある一方、中部圏と近畿圏の中間に位置し、交通の要衝であるとともに、産業立地の面でも優位性のある地域として発展してきました。また、歴史的に癒しの空間、祈りの場として、また、伝統文化を体感できる地域として多くの人々を惹きつけてきました。
今後、三重県がさらなる発展を遂げるためには、「美し国」から発展してきたこれまでの経緯を十分に踏まえ、新しい三重づくりの方向性を考えることが重要です。
新しい三重づくりを進めるにあたっては、人口減少・高齢化の進展や経済安全保障を含む安全保障、大規模自然災害などの懸念されるリスクに的確に対応するとともに、カーボンニュートラルやデジタル社会の実現に向けた動きなどのチャンスを逃さず、三重のさらなる発展につなげていく必要があります。
こうした考え方のもと、県民の皆様の命と暮らしを守るための取組を進めるとともに、県内各地の特性に応じて観光資源をはじめとする地域資源を磨き上げ、三重の魅力や競争力を高め、産業の振興をはじめとする地域課題の解決を図っていきます。将来的にはリニア中央新幹線の県内駅の設置が見込まれており、三重県は、いわば日本の「成長の回廊(コリドー)」の一部をなすことが想定されます。三重県を飛躍的に発展させるため、リニアの効果を県内全域に波及させることができるよう、今後、どのように取り組んでいくべきか検討していく必要があります。
こうした取組を、国や市町をはじめさまざまな主体と連携しながら進めることで、県民の皆様が三重に愛着を持ち、元気に、かつ安全・安心に暮らすことのできる持続可能な地域、すなわち「強じんで多様な魅力あふれる『美し国』」の実現をめざしていきます。
「みえ元気プラン」では、計画期間の5年間に積極果敢に取り組んでいく必要のある課題を「7つの挑戦」としてお示ししています。
また、県のすべての取組を15の政策と53の施策として掲げており、国や市町をはじめ、さまざまな主体と連携しながら、県政を推進していきます。
「強じんな美し国ビジョンみえ」と「みえ元気プラン」については、今後、県民の皆様や議会の皆様、県内外の有識者の方々のご意見をお聞きし、さらに検討を深めた上で、最終案を取りまとめたいと考えています。
(令和4年度の県政運営)
令和4年度の県政運営については、去る2月14日にご説明しました「三重県行政展開方針」に基づいて進めていくことしており、令和4年度は、「強じんで多様な魅力あふれる『美し国』」の実現に向けて、新型コロナに関する感染症への対策と地域経済の活性化に取り組みます。また、「安全・安心の確保」、「活力ある産業・地域づくり」、「共生社会の実現」、「未来を拓くひとづくり」の4つの柱に沿って注力する取組を進めていきます。
(新型コロナウイルス感染症対策のさらなる推進)
新型コロナについて、直近の感染状況を見ると、オミクロン株による感染者が爆発的に増加し、厳しい状況が続いています。
県内では、昨年10月18日にとりまとめた「みえコロナガード」に基づく県独自の「アラート」を1月8日に、「感染拡大阻止宣言」を1月12日に発出し県独自の対策を行ってきましたが、これまでにない急激な感染拡大を食い止めるため、政府に対し、「まん延防止等重点措置」の適用を要請し、1月21日から適用されました。
その後も感染者は増加し、2月3日には新規感染者数が過去最多の1,013人となり、病床使用率が50%前後となるなど予断を許さない状況が続いていました。このことから、2月8日に政府に対し、重点措置の期間延長を要請し、3月6日まで延長されることとなりました。
県民の皆様、事業者の皆様のご協力や医療従事者の方々のご尽力により感染者の増加速度は鈍化しているものの、依然として多くの感染者が発生しています。
引き続き、新型コロナ対策を県政の最優先課題として位置づけ、感染状況を見極めながら、感染拡大の防止と県民生活・経済活動の維持との両立が図られるよう先手先手で柔軟かつ機動的な対策を講じていきます。
感染拡大の防止に向けては、12月22日に策定した「三重県新型コロナウイルス感染症対策大綱」に基づき、県内の感染状況に応じた受入病床の確保や臨時応急処置施設、宿泊療養施設の整備・運営に取り組むとともに、自宅療養者の健康フォローアップ体制を確保しています。また、民間検査機関等の活用により、検査体制を確保するとともに、市町等との連携により、ワクチンの接種を円滑に進めており、3回目の接種については、市町における体制の整備にあわせて、県においても県営接種会場を設置するなど、スピード感をもって進めているところです。
さらに、県民生活・経済活動の維持に向けては、新型コロナにより大きな打撃を受けた事業者の事業継続への支援、業態転換に取り組む企業への支援など地域経済の再生や雇用の維持・確保、苦境に立つ人々への相談・支援、地域公共交通の維持・確保など安全・安心な暮らしの再構築、新型コロナによる人権侵害の発生防止等に向けた取組を進めていきます。
(安全・安心の確保)
行政展開方針の一つ目の柱は「安全・安心の確保」です。
近い将来の発生が想定される南海トラフ地震や、気候変動に伴い頻発・激甚化している風水害に的確に対応できるよう取り組む必要があります。このため、組織体制を強化し、情報収集力や分析・対策力の強化、県内外で発生した災害から得られた知見や教訓の災害対応への活用、市町の災害対策活動強化の支援に取り組みます。
また、災害時に国や実働機関等と的確に情報を共有し、可能な限り早期に応援を受けられるよう緊密な連携の確保に取り組みます。
さらに、災害対策本部のオペレーション機能の強化に向けた調査を行い、災害即応力のより一層の強化を図ります。
加えて、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等を活用し、県土の強靱化に向けた対策を強力かつ計画的に推進します。
医療、介護については、「団塊の世代」がすべて75歳以上となる2025年に向け、高齢化の進展による疾病構造の変化・多様化や介護を必要とする高齢者の増加を踏まえ、医療と介護の総合的な確保を図るため、医療・介護分野の人材確保等に取り組みます。また、コロナ禍における健康意識の高まりを踏まえて、市町と連携し、新しい生活様式にも対応した健康づくりの取組を推進します。
交通面においては、県民の皆様の安全を確保し、日々の暮らしの中で安心を実感していただけるよう、AIなどの先端技術も取り入れながら、交通事故の防止に向けた対策や交通不便地域をはじめとする地域の公共交通の維持・確保を進めていきます。
温室効果ガス削減のための国際枠組である「パリ協定」の本格運用に伴い、国内においても2050年脱炭素社会の実現に向け、地球温暖化対策推進法や国の計画が見直されています。こうした国内外の動きをとらえて、「三重県地球温暖化対策総合計画」の見直しを行うとともに、脱炭素社会の実現に向け、県民、事業者、行政等のあらゆる主体の参画・連携のもと、さまざまな施策や取組を総合的に推進していきます。
(活力ある産業・地域づくり)
二つ目の柱は「活力ある産業・地域づくり」です。
観光産業は、三重県の活力を維持する切り札であり、人口減少対策にもなりうる産業です。また、その経済効果が幅広い分野に波及する裾野の広い産業であることから、新型コロナの収束後を見据えた誘客促進や観光産業を発展させるための取組を進める必要があります。
このため、三重ならではの魅力ある観光資源の磨き上げや、観光資源を生かした周遊ルートの活用や強力なプロモーションなどにより、本県を訪れる旅行者が満足できる「拠点滞在型観光」を推進します。また、訪日旅行再開後を見据えたインバウンド誘客について、日本政府観光局とより一層連携しながら取組を進めるとともに、戦略的な観光マーケティングの仕組みの確立を進め、県全体で観光振興に取り組みます。
脱炭素社会の実現に向けた対応が世界的な潮流となる中、県内産業の成長・発展に生かすため、国のグリーン成長戦略も踏まえ、「ゼロエミッションみえ」プロジェクトなどの取組を強力に進めていきます。
ものづくり産業について、カーボンニュートラルに向けて県内企業が新たな領域への挑戦等に前向きに取り組めるよう、新規参入や業態転換に向けた支援を行っていきます。
農林水産業について、人口減少に伴うマーケットの縮小や従事者の減少・高齢化、新型コロナの影響による業務用需要の減少など、農林水産業を取り巻く環境の厳しさが増しています。このような状況を踏まえ、スマート技術の活用による省力化、担い手の確保・育成、経営体の法人化や協業化などの経営強化を図るとともに、販売チャンネルに応じた戦略的なプロモーション等を実施し、コロナ禍により需要が低迷している農林水産物の販路拡大を促進します。
また、地域の経済活動や集客・交流を支える基盤である道路や港湾等の整備を着実に推進していく必要があります。リニア中央新幹線については、三重県にもたらす効果を最大化するため、この2月に「三重県リニア推進本部」を設置したところであり、リニア開業を見据えた地域づくりに向けて検討を行います。
誰もが働きやすい職場環境を整備するため、アフターコロナの「新しい日常」に対応するとともに、働く意欲のあるすべての人が働き続けられるよう、柔軟な就労形態やテレワーク等の新しい働き方の導入など、企業における働き方改革を推進する必要があります。また、女性や高齢者、障がい者、外国人等が意欲や能力を十分発揮し、いきいきと就労できるよう、働きやすい職場環境づくりを促進します。
若者の県内定着は重要かつ喫緊の課題であることから、県内外の高等教育機関や関係機関との連携を一層強化し、学生への県内企業の情報発信や就労に向けたマッチングなどに取り組みます。
また、新型コロナにより、テレワークなど場所にこだわらない働き方が進むなど、大都市圏に住む人々の地方への関心の高まりをチャンスととらえ、移住の促進を強化していく必要があります。
さらに、デジタル社会の実現に向けた取組を推進するため、行政手続のデジタル化を進め、県民の皆様の負担軽減を図るなど利用者目線に立ったサービスを提供するとともに、「みえDXセンター」を通じた県民の皆様や事業者等によるDXの取組への支援、ドローンや「空飛ぶクルマ」を活用した将来的なビジネスの展開の促進に取り組みます。
(共生社会の実現)
三つ目の柱は「共生社会の実現」です。
高齢化や核家族化の進展等により、8050問題やダブルケアなどの課題を抱える人が社会から孤立するケースが増加しています。誰もが孤立することなく安心して暮らせる社会の実現に向けて、さまざまな課題を抱える人を包括的に受け止め、適切な福祉サービス等につなげていけるよう、市町における重層的な支援体制の構築を支援していきます。
ひきこもり当事者やその家族が社会から孤立するなど、これまで以上に深刻な課題に発展する可能性があるため、「三重県ひきこもり支援推進計画」に基づき、ひきこもり当事者やその家族に寄り添った相談支援体制の充実や当事者が社会とつながるきっかけとなる「居場所」づくりに向けた支援、県民の皆様のひきこもりに関する正しい理解の促進に取り組みます。
障がい者が活躍する機会の創出・拡大に向けて、農林水産業と福祉の連携をさらに促進するため、農林水産業と福祉をつなぐ人材を育成するとともに、スマート技術を活用し、農業に参入した福祉事業所の労働環境の整備や農産物を円滑に集出荷するための仕組みづくりに取り組みます。
また、誰もが快適にストレスフリーに旅行ができる、旅行者目線に立ったバリアフリー観光などに取り組むことで、障がい者の方々も観光を満喫できる環境づくりを推進します。
性の多様性やインターネット上の人権侵害等の新たな人権課題が注目されており、これらの課題に対応していきます。
また、コロナ禍において一層顕在化した外国人住民の孤立や男女格差の是正に向けて、多文化共生の取組を推進するとともに、あらゆる分野における女性の参画拡大などを進めていきます。
(未来を拓くひとづくり)
四つ目の柱は「未来を拓くひとづくり」です。
社会が大きく変化する中、持続可能な社会づくりに向けて、子どもたちの人格形成の基礎となる「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな身体」を育み、主体的に考え行動する力や他者と協働しながら課題解決に取り組む力を育むとともに、すべての子どもたちが夢や希望の実現に向けて安心して学べる機会の確保や、特別な支援を必要とする生徒への支援、不登校やいじめへの対応、外国人児童生徒への教育などを進めます。
不登校への対応については、不登校児童生徒一人ひとりに応じたきめ細かな支援を行うため、専門人材の配置拡充や、高校段階で不登校等の状況にある子どもたちへの新たな支援に取り組みます。
いじめへの対応については、「三重県いじめ防止条例」に基づき、いじめがなくなることをめざして、社会総がかりでの取組や、増加しているSNSやインターネット上のいじめの防止に重点的に取り組みます。
また、県内の児童虐待相談対応件数が増加する中、コロナ禍で児童虐待のリスクも高まっていることから、子どもの命を守り、安全を確保するため、児童相談所や市町における児童虐待対応力の強化を図ります。課題が顕在化してきている児童生徒の性被害への対応力強化と連携支援体制の構築を進めます。
さらに、生まれ育った家庭の経済状況等により、子どもたちが将来の夢を諦めてしまうことがないよう、貧困の連鎖解消に向けた支援に取り組むとともに、ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちへの支援、児童養護施設や里親のもとから社会へ巣立つ子どもたちの自立に向けた支援などに取り組んでいきます。
結婚・妊娠・出産・子育てなどの希望がかない、すべての子どもが豊かに育つ環境づくりを進めるため、出会いの機会の創出や不妊・不育症に悩む方への支援、男性の育児参画の促進、保育サービスの充実などの取組を一層進めます。これらは、人口の自然減対策としての側面も有するものと考えています。
三重とこわか国体・三重とこわか大会の開催に向けたこれまでの取組は、レガシーとなって各地域に遺されています。それらのレガシーを活用したさまざまな取組が各地域で進められることで、ジュニア選手も含めた次代を担う子どもたちにスポーツへの夢と希望がもたらされるよう、市町や競技団体等あらゆる主体と連携を図りながら取組を進めます。
文化については、個人や地域におけるアイデンティティの基盤や心の豊かさを育むエネルギー源としての役割が期待されます。県民の皆様が、主体的に文化や地域の歴史等に親しみ、感性や創造性等を育み、生涯にわたり学習できる環境づくりを一層推進します。また、コロナ禍など大きな社会情勢の変化や国の動きを踏まえつつ、今後の文化振興施策の推進に向けた取組を進めます。
(人口減少対策)
人口減少対策について、本県では平成27年以降、「三重県まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき取組を進めてきたところですが、人口減少に関する課題は、一朝一夕に解決できない構造的な問題であり、全庁を挙げて強力に取り組んでいく必要があります。
また、人口減少のスピードを緩やかにし、地域の課題に的確に対応していくためには、人口減少の背景や状況の把握に努め、エビデンスに基づき、より効果的な取組としていくことが重要です。
令和4年度は、こうした考えのもと、国内外の先進事例も参考にしながら、自然減対策と社会減対策を両輪として人口減少対策を進めていきます。
(組織改正)
続いて、令和4年度の主な組織改正についてご説明します。
まず、人口減少対策について、より効果的な対策を進めるため、「人口減少対策課」を戦略企画部に新設します。
また、市町等と連携した移住の取組を強化するため、「移住促進課」を地域連携部に新設します。
産業振興については、三重県の今後の発展の鍵となる観光行政を充実させる必要があることから、拠点滞在型観光を推進するなど、将来に向けて持続的に発展させるため、観光局「観光魅力創造課」を再編し、観光資源の掘り起こしや磨き上げに注力する「観光資源課」と、誘客・プロモーション及び新型コロナの影響を受けた事業者への支援に取り組む「観光誘客推進課」の二課を設置し、人員体制を強化します。
災害即応・連携体制の強化については、災害時に国及び市町や関係機関と連携し、一層、迅速かつ的確に対応するため、「災害即応・連携課」を防災対策部に新設し、防災訓練の実施などのこれまでの業務に加えて、新たに、災害対応に必要な情報収集能力や分析・対策立案能力の強化、市町支援体制の向上などに取り組みます。
脱炭素社会の実現に向けた取組については、「ゼロエミッションみえ」プロジェクトをより効果的に推進するため、戦略企画部に全庁の取組を統括する次長級の「ゼロエミッションプロジェクト総括監」と課長級の「ゼロエミッションプロジェクト推進監」を新たに設置します。
また、再生可能エネルギーの導入促進や自動車の電動化への対応、石油コンビナートの競争力強化など、成長産業の育成に注力するため、雇用経済部「ものづくり産業振興課」を「新産業振興課」に再編し、人員体制を強化します。
このような組織改正により、社会経済情勢の変化や緊急課題への対応なども踏まえた県政の諸課題に的確に対応していきます。
(令和4年度当初予算の規模)
このような令和4年度における県政の展開方針を踏まえ、令和4年度当初予算は、「強じんな美し国」をめざして、ふるさと三重を前へ進めるための予算として編成しました。
一般会計の当初予算額は、対前年度4.0%増の8,194億2,937万1千円、当初予算としては4年連続の増となり、昨年度の7,882億円を超えて過去最大となります。
特別会計は、5.8%増の3,328億9,298万円、企業会計は2.6%増の624億6,629万4千円となり、三会計を合わせた予算額は、4.4%増の1兆2,147億8,864万5千円となっています。
この予算により、県民の皆様にそれぞれの事業の効果を着実に届けられるよう、強い責任感を持ちつつ、積極果敢に取り組んでいきます。
(令和4年度当初予算のポイント)
今回の予算編成で重視したポイントの1点目は、新型コロナウイルス感染症対策のさらなる推進です。
県民の皆様の命と暮らしの安全・安心を確保するため、「三重県新型コロナウイルス感染症対策大綱」に基づく早期の対策と医療提供体制の確保、傷ついた地域経済の再生・活性化に取り組む経費として、対前年度で1.0%増となる554億円を計上しています。
2点目は、危機管理体制の強化と防災・減災、県土の強靱化です。
激甚化、頻発化する大規模災害や将来起こりうる危機へ備えるため、これまで蓄積してきた知見や教訓を生かし、ソフト・ハード両面から防災・減災、県土の強靱化を強力に推進します。また、災害対応を担う全ての職員が必要な対策を漏れなく行えるよう、新たにデジタル技術を活用して災害対応業務を見える化するなど災害即応力を強化し、危機管理体制を充実させます。これらの経費として、対前年度で3.8%増となる518億円を計上しています。
3点目は、三重の魅力を生かした観光誘客の推進です。
まずは、新型コロナで多大な影響を受けた観光産業の再生とアフターコロナの誘客促進に取り組みます。さらに、三重県観光の飛躍的な発展に向けて、本県を訪れる旅行者が満足できる拠点滞在型観光を推進するなど新たに長期滞在に向けた取組を強化することで、観光消費額の増加をめざします。また、新型コロナの収束を見据え、日本政府観光局の知見や情報発信力を生かした取組を進めることにより、訪日旅行再開後の県内への誘客につなげます。これらにより、これまでの観光施策を抜本的に強化し、観光振興予算としては前年度比で2倍となる24億円、1月・2月補正を含めた予算としては過去最大の154億円を計上しています。
4点目は、地域の活力を高める産業づくりです。
生産者や企業等と連携し、三重オリジナルの高品質な県産食材を開発し、ホテルやレストラン等へのプロモーションを実施するなど、あらゆるチャンネルを活用し、県産品等の販路拡大を支援します。水産業では、気候変動や漁場環境の変化に伴うアコヤガイ等のへい死が大きな課題となっているため、高水温に強い種苗の開発や、ICTを活用した漁場環境の把握など新たな養殖管理技術の開発に取り組みます。また、成長産業分野、マザー工場化、スマート工場化、県南部地域における地域資源を活用した産業等への投資を支援します。これらの経費として、対前年度で3.5%増となる178億円を計上しています。
5点目は、すべての子どもの健やかな育ちの保障です。
子育てしやすい環境の整備として、保育士の加配に対する補助を拡充したり、保育補助者を保育士に育成するなど、待機児童の解消を図ります。新たな課題として顕在化した「ヤングケアラー」については、子どもが子どもらしく育つことができるよう、適切な支援につなぐことが肝要であるため、実態調査を行い、支援を進めていきます。また、高校段階で不登校等の状況にある子どもたちを支援する県立の教育支援センター設置に向けた実証研究に取り組むとともに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充します。これらの経費として、対前年度で6.4%増となる102億円を計上しています。
6点目は、カーボンニュートラルに向けた取組の加速です。
待ったなしの脱炭素社会への対応を成長のチャンスととらえ、県内企業の業態転換や新たな領域への挑戦を支援します。CO₂の排出量が多い大規模事業所の発生抑制対策にかかる事例調査を行い、脱炭素化に向けた取組を支援するとともに、脱炭素社会において、四日市コンビナートが競争力を強化できるよう取り組みます。また、県有施設において、照明のLED化を加速させるとともに、再生可能エネルギーの調達を試行的に実施します。これらの経費として、対前年度で264%増となる、14億円を計上しています。
このほか、公共事業については、国の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を活用し、防災・減災、県土の強靱化を強力に推進するとともに、暮らしの安全・安心につながる通学路の交通安全対策や路面標示の改善、堆積土砂撤去等の取組を加速させます。これらの経費として、当初予算額は対前年度で5.3%増の864億円となり、15か月予算ベースでは対前年度1.1%増となる1,115億円を確保しています。
以上で、議案第5号から議案第21号までの令和4年度当初予算の説明を終わります。
(令和3年度2月補正(その2))
次に、議案第4号の補正予算は、国の令和3年度補正予算(第1号)に対応して、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策や、観光需要の喚起、事業継続の支援などの取組を進めるため、一般会計で148億2,822万6千円を増額するものです。
歳入では、国庫支出金について、主なものとして、地域観光事業支援補助金で118億3,682万3千円を、学校施設環境改善交付金で4億7,659万円を、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金で2億7,605万8千円をそれぞれ増額しています。基金繰入金については2億5,256万円を、県債については12億6,000万円をそれぞれ増額しています。
歳出については、介護施設や障害者福祉施設、県立学校、幼稚園等における新型コロナウイルスの感染防止対策や施設改修等を支援するため、2億2,333万9千円を増額しています。
地域の生活交通を確保するため、地域間幹線バスの運行費用に対して、国と協調して追加支援を行う経費として、1億7,500万円を増額しています。
県内観光関連事業者を支援するため、旅行割引や地域共通クーポンの発行を実施し、県内での旅行需要の喚起や観光地での消費促進に取り組む経費として、118億3,682万3千円を増額しています。
保育士を確保するため、修学資金等の貸付に必要な原資として、8,380万5千円を増額しています。
水産高校の新たな実習船の建造や、県立学校の職業学科における産業教育施設の整備、特別支援学校の狭隘化に対応するための施設改修に要する経費として、15億6,920万7千円を計上しています。
大規模災害時に備えた防災・復旧対策の推進や、インフラ整備の円滑化を図るため、緊急性が高い地域における地籍調査を実施する市町を支援する経費として、8,717万6千円を増額しています。
(令和3年度2月補正(その3))
次に、議案第56号は、「三重県まん延防止等重点措置」期間の延長等に伴い、緊急に必要となる経費として、一般会計で88億567万6千円を増額するものです。
歳入では、国庫支出金について、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金で74億8,130万2千円を、基金繰入金について、財政調整のための基金で13億2,437万4千円をそれぞれ増額しています。
歳出については、「三重県まん延防止等重点措置」期間の3月6日までの延長に伴い、営業時間の短縮要請等に応じた県内飲食店への協力金を措置するため、64億9,536万8千円を増額しています。また、経済活動の停滞による影響を受け、売上が減少した県内事業者に対して支援金を支給するため、23億1,030万8千円を計上しています。
(予算以外の議案等の概要)
以上で予算案についての説明を終わり、引き続き条例案23件、その他議案11件の合計34件について、その概要を説明いたします。
議案第22号は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令及び児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令の一部を改正する省令の施行に鑑み、関係条例の規定を整備するものです。
議案第23号は、関係法令の施行に鑑み、畜舎等の敷地、構造又は建築設備等に関して、制限を付加するものです。
議案第24号は、個人情報の保護に関する法律等の一部改正に伴い、規定を整理するものです。
議案第25号は、関係省令の一部改正に鑑み、個人番号の利用範囲についての規定を整備するものです。
議案第26号は、関係法律に基づき、知事の権限に属する事務の一部を市町が処理することについて改正を行うものです。
議案第27号は、社会経済情勢に鑑み、知事及び副知事の給料を特例的に減ずるものです。
議案第28号及び議案第40号は、職員の期末手当の支給割合の改正等に鑑み、会計年度任用職員の期末手当の支給割合の改正を行うものです。
議案第29号は、関係法律の一部改正に鑑み、育児休業をすることができない職員についての規定等を整備するものです。
関係法令の改正等に鑑み、議案第30号、議案第33号及び議案第34号は、手数料についての規定を整備、議案第31号及び議案第32号は、手数料の額を改定するものです。
議案第35号は、国営青蓮寺用水土地改良事業の負担金の徴収等に当たり、負担金等の徴収方法の規定等を整備するものです。
議案第36号は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の一部改正に伴い、規定を整理するものです。
議案第37号は、公衆浴場における衛生等管理要領の改正等に鑑み、公衆浴場の衛生等の基準についての規定を整備するものです。
議案第38号は、地方税法の規定に基づき、住民の福祉の増進に寄与する寄附金を受け入れる特定非営利活動法人を加えるものです。
議案第39号は、公立学校職員の定数を改正するものです。
議案第41号は、三重県立鈴鹿青少年センターにおいて、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づく事業を実施するに当たり、規定を整備するものです。
議案第42号は、三重県立志摩病院について、診療科目の追加及び名称の変更を行うものです。
議案第43号は、食品衛生法の一部改正に伴い、規定を整理するものです。
議案第44号は、県が実施主体として貸付けを行う三重県社会福祉士及び介護福祉士修学資金貸付事業の廃止に伴い、関係条例を廃止するものです。
議案第45号は、包括外部監査契約を締結しようとするものです。
議案第46号及び議案第48号は、県が行う建設事業に関し、関係市町に負担を求めようとするものです。
議案第47号は、国営宮川用水土地改良事業の負担金の償還に要する経費に充てるため、市町の負担金を徴収しようとするものです。
議案第49号は、財産を取得しようとするものです。
議案第50号は、財産を処分しようとするものです。
議案第51号は、地方独立行政法人三重県立総合医療センターの第三期中期計画について、認可をしようとするものです。
議案第52号は、公立大学法人三重県立看護大学が徴収する料金の上限の変更について、認可をしようとするものです。
議案第53号から議案第55号までは、三重県立鈴鹿青少年センターと三重県営鈴鹿青少年の森において、特定事業契約の締結及び指定管理者を指定しようとするものです。
以上で諸議案の説明を終わり、次に報告事項について説明いたします。
報告第1号から報告第3号までは、議会の委任による専決処分をしましたので、報告するものです。
報告第4号は、地方独立行政法人三重県立総合医療センターの常勤職員の数について、関係法律に基づき、報告するものです。
報告第5号は、議会の議決すべき事件以外の契約等について、条例に基づき、報告するものです。
以上をもちまして提案の説明を終わります。
なにとぞ、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。