平成27年第1回定例会2月定例月会議の議案等の説明に先立ちまして、平成27年度における県政の展開方向などについて説明いたします。
(幸福実感のさらなる向上に向けて)
平成23年4月に知事に就任して以来、職員とともに一丸となって走り続けてきましたが、私の任期は、残すところあと2か月余りとなりました。県議会の皆様をはじめ、市町、企業、関係団体の方々、そして何よりも県民の皆様に支えられて、ここまで来ることができました。改めて深く感謝申し上げます。
平成24年3月に策定したみえ県民力ビジョンでは、「県民力でめざす『幸福実感日本一』の三重」を基本理念とし、みんなで力を合わせて新しい三重をつくる、県民力による協創の三重づくりを進めてきました。また、政策展開の基本方向として、「守る」、「創る」、「拓(ひら)く」という三つの柱を掲げ、防災・減災対策、少子化対策、産業振興策等に重点的に取り組んできました。その結果、第3回みえ県民意識調査では、県民の幸福感の平均値が6.75点となり、2回連続で前回調査の数値を上回り、過去最高となりました。
今後も、この流れを止めることなく、幸福実感をさらに高めていくため、県政の諸課題にしっかり取り組み、県民の皆様に成果を届けていきたいと考えています。
(まち・ひと・しごと創生の推進)
国においては、過去最大規模の96.3兆円となる平成27年度予算政府案が国会に提出されました。この予算は、先般成立した平成26年度補正予算3.1兆円と一体的に編成されたものであり、両者を合わせて1兆円を超える額が措置された地方創生関連予算は、今回のポイントの一番に位置付けられています。三重県が求めていた地方の実情に合わせた自由度の高い交付金は、補正予算において先行的に措置されました。今後は、この交付金をはじめ地方創生関連予算を積極的に活用し、若者の県内定着や県内産業の振興、県外からの移住促進等を図っていきたいと考えています。
また、国が地方創生のモデル事業として位置付ける改正地域再生法に基づく地域再生計画として、本県から提案した「『食』で拓(ひら)く三重の地域活性化」と「航空宇宙産業の振興による地域活性化」が、1月22日に認定されました。改正地域再生法による第一号の認定であり、全国で三重県だけが2件の認定を受けました。今後は、地域再生戦略交付金の活用などにより、地域再生計画の具現化をはじめ、地域の活性化に向けた取組を積極的に展開していきます。
さらに、国家戦略特区を進化させ、手続の簡素化や専門家の派遣など、国が総合的な支援を行う「地方創生特区」がこの春に指定される見込みです。三重県では、農家レストランや植物工場などにより農業の競争力を高める「次世代農業の創造」及び農業系有機物資源を生かしたバイオ燃料の利活用による「次世代農村の創造」に向けた提案と、近未来技術である次世代型の三次元構造NAND型フラッシュメモリ等の国際競争力を高める「近未来技術実証特区」の提案を行っており、今後、指定に向け、積極的に国に働きかけていきたいと考えています。
加えて、三重県では、全庁を挙げて「まち・ひと・しごと創生」に取り組む体制を整備するため、本年1月に私を本部長とする「三重県まち・ひと・しごと創生総合戦略策定推進本部」を設置し、本格的な議論を始めたところです。
今後、「まち・ひと・しごと創生」の推進に向けて、県版の人口ビジョン及び総合戦略を策定するとともに、今年度から重点的に取り組んでいる少子化対策に加え、交付金を活用した事業、地域再生計画及び地方創生特区に係る取組を一体的に展開していきます。
(主要国首脳会議の誘致)
三重県では、平成28年に日本で開催される予定の主要国首脳会議に伴う関係閣僚会合の誘致を進めてきましたが、円安の進行等で訪日外国人観光客が増加している中で国内外に情報発信する絶好の機会であること、「まち・ひと・しごと創生」に係る交付金の創設など財源の確保に係る状況の変化があったこと、何より経済界や県民の皆様から首脳会議を誘致してほしいとの数多くの声をいただいたことなどから、関係閣僚会合の誘致に加え、首脳会議の誘致を目指すこととしました。
世界ではテロなどの脅威が存在する中、日本人の心のふるさとである伊勢志摩から、多様な価値観を受け入れて共生していくことによる世界平和の実現、日本らしい伝統文化や革新的技術の集積、地球規模のテーマを議論するにふさわしい自然環境、豊富な要人警護の経験に基づく高い警備力などをアピールし、開催実現に向け官民挙げて取り組んでいきます。
(農地制度改革)
農地制度のあり方については、地方六団体でプロジェクトチームを設置し、私が座長となって検討を進めてきました。今後の農地制度のあり方については、国と地方が責任を共有し、実効性のある農地の総量確保の仕組みを構築するとともに、個別の農地転用許可権限については市町村に移譲することが必要であるとの報告を地方六団体で取りまとめ、一丸となって国に対し要請活動を実施してきたところです。
その結果、1月30日の閣議において、4ヘクタールを超える農地の転用については大臣協議が必要となったものの、許可権限については都道府県知事及び大臣の指定する市町村長に移譲すると決定されました。
今回の一連の活動の中で、地方が声を一つにして国に対して意見を述べることができたこと、その成果として地方分権改革の最重要課題であった農地転用許可権限の移譲が決定されたことは画期的であり、私もその活動に携わることができたことを誇りに感じています。
今後は、実効性のある農地の総量確保の仕組みなどよりよい制度の構築に向け、地方六団体とともに取り組んでいきたいと考えています。
(平成27年度における県政の展開方向)
平成27年度は「みえ県民力ビジョン・行動計画」の最終年度にあたるため、目標達成に向けてオール県庁で必達意識をもって県政の諸課題の解決を着実に推進するとともに、次期行動計画、県版の人口ビジョン及び総合戦略を策定するための重要な節目の年となります。
国・地方を挙げて人口減少克服・地方創生の動きが本格化する中、人口の流出抑制及び流入促進、交流人口の拡大に向けて、「まち・ひと・しごと創生」を推進します。
また、少子化対策を平成26年度に引き続き重点テーマとし、これまでの取組をより一層加速させます。
さらに、これらの取組を効果的に推進するための下支えとして、県民の皆様の安全・安心を支える基盤づくりに取り組みます。
そのため、平成27年度の政策展開において、
・まち・ひと・しごと創生の推進~希望がかない、選ばれる三重への挑戦~
・少子化対策Ver.2~結婚・妊娠・子育てなどの希望がかない、すべての子どもが豊かに育つことのできる三重への挑戦~
・県民の暮らしを守る~安全・安心を支える三重への挑戦~
の三つに力を入れていきます。
(社会減対策)
まず、「まち・ひと・しごと創生の推進」では、出生数の減少による自然減と、転出超過による社会減への対策が必要になります。
人口の社会減への対応については、「学ぶ」、「働く」、「暮らす」のライフシーンごとに幅広い視点からの対策を検討し、総合戦略に盛り込むことが確実な取組を中心に、先行的に実施します。
「学ぶ」では、県内高等教育機関の魅力向上・充実、大学収容力の向上のための調査・研究等に取り組みます。
「働く」では、沖縄国際物流ハブを活用した三重県産品のアジア市場への展開の促進、東京圏や大阪圏、海外にある本社機能の県内移転の促進、海外誘客の推進、企業におけるワーク・ライフ・バランスの推進等に取り組みます。
「暮らす」では、県外からの交流人口増加に向けた子どもたちの参加型事業の実施、移住希望者へのワンストップ窓口となる常設の移住相談センターの開設等に取り組みます。
(産業振興)
豊かな食材や多様な食文化を背景に高いポテンシャルを有する三重県の食関連産業は、農林水産業、製造業、サービス業が関わるすそ野の広い産業です。例えば、製造業全体のうち、食料品製造業は事業所数で1位、従業者数で3位を占め、また、卸売・小売業のうち、飲食料品を扱う事業所数はその約3分の1を占めるなど、多くの雇用を創出しています。平成27年度は、ミラノ国際博覧会への出展をはじめ、積極的に食関連産業を振興し、食に関わる県内事業者にその効果が波及していくよう取り組んでいきます。
航空宇宙産業は、自動車関連産業など、三重県が強みとする産業との親和性も高く、今後の市場拡大が予想される成長産業です。今年度策定する「みえ航空宇宙産業振興ビジョン」に基づき、県内企業の参入促進や海外ミッション等で構築した海外とのネットワークの活用による人材育成などに取り組み、本県の新たな産業の柱の一つとなるよう航空宇宙産業を振興していきます。
こうした成長産業への攻めの取組の展開や、産業構造に影響を及ぼす外部環境の変化にいち早く対応していくためには、国や他の地域に先んじた地域の成長戦略を描く必要があります。このため、県内企業と十分に連携して「みえ産業振興戦略」を平成27年度中に改訂します。同戦略の改訂にあたっては、伊勢商人、松阪商人に代表される先人達から受け継ぐ精神や、公害経験に基づく高い技術力を有する三重県が、世界の中で果たす役割などを明らかにし、戦略の基本思想を描いていきます。今後、三重県がリーダーシップを発揮し、他の地域とともに成長していくことを目指し、「選ばれる三重」となるよう挑戦していきます。
(観光振興)
平成27年度は三重県観光キャンペーンの集大成の年です。ホンダがフォーミュラ1世界選手権(F1)に復帰し、台湾高雄市の「TAROKOパーク高雄」内に「鈴鹿サーキットパーク」が整備される中、世界に誇る観光資源であるF1や海女、忍者を活用した国内外への情報発信や、みえ旅パスポート発給者等のビッグデータを活用した戦略的な誘客を展開していきます。また、伊勢志摩国立公園指定70周年に向けたエコツーリズムやバリアフリー観光の推進にも取り組みます。
海外誘客については、台湾と、タイ及びマレーシアをはじめとする東南アジア等を中心に重点的なプロモーションを実施するとともに、業界最大手の外国人観光客向け口コミサイト、フェイスブック等を活用して、海外で三重県の観光情報を発信し、認知度の向上を図ります。また、他県等との連携で広域による誘客を促進するとともに、外国人観光客の利便性の向上を図るため、無料公衆無線LAN(Wi-Fi)の充実、消費税免税店の拡大など受入環境の整備を促進します。
さらに、誘客の増加を県内での消費拡大につなげるとともに、他分野産業との連携を進め、観光の産業化を図ります。
(少子化対策Ver.2)
次に、「少子化対策Ver.2」については、少子化対策や子ども施策の中期的な計画として策定中の「希望がかなうみえ 子どもスマイルプラン」に基づいた取組を平成27年度からスタートさせます。同計画では、外部有識者の方々の意見を踏まえ、おおむね10年後の三重県の合計特殊出生率を、県民の結婚や出産の希望がかなった場合の水準である1.8台に引き上げることを総合目標の一つとしています。この計画に基づき、今年度から重点テーマとして取り組んできた少子化対策についてバージョンアップを図り、取組を加速していきます。
まず、市町から多くのご要望をいただいている小規模な放課後児童クラブへの補助を拡充するとともに、ひとり親家庭の放課後児童クラブの利用料補助の創設、放課後児童支援員の認定資格研修の実施等に取り組み、放課後児童対策を充実します。
不妊や不育症に悩む夫婦への対策を全国に先駆けて取り組んできましたが、特定不妊治療や不育症などに加え、新たに一般不妊治療への助成を行うことにより、医療保険の適用対象とならない治療を総合的に支援します。
フィンランドのネウボラを参考とし、妊娠から出産・子育て期までの切れ目のない支援体制の構築に向けて、地域において妊産婦等を支える人材の育成や産後ケアが必要な産婦への支援などを進めます。また、乳幼児死亡率が過去数年間、全国平均より高く推移していることから、乳幼児の不慮の事故等による死亡を減少させるため、関係機関による検討会やスキルアップのための研修を行うとともに、保護者への啓発を実施します。
男性の育児参画をさらに推進するため、子育て中の男性同士が情報交換等を行えるネットワークである「みえの育児男子倶楽部(仮称)」の活動を推進するとともに、自然体験を通じて子どもの生き抜く力を育むことを主眼とした親子キャンプの実施、野外体験保育の必要性検証などに取り組みます。
さらに、家庭的環境で育つ子どもが一人でも増えてほしいという願いから、特別養子縁組の成立に向けた監護期間中において、県職員等を対象に、育児休業等に相当する制度を全国で初めて導入したところであり、今後は、「1中学校区1養育里親」の確保を目標に、市町や里親支援専門相談員等と連携・協力して里親の登録及び委託を推進するとともに、施設における里親委託や支援の充実を図ります。
(県民の暮らしを守る)
最後に、「県民の暮らしを守る」についてです。
大型化する台風や頻発する局地的大雨など、厳しさを増している風水害に対して万全の備えを進めるため、現在、「三重県新風水害対策行動計画(仮称)」の策定を進めています。同計画では、事前防災対策を強化する「三重県版タイムライン(仮称)」の策定、自主防災組織と消防団の連携促進の仕組みづくり、土砂災害警戒区域等の指定に必要な基礎調査や土砂災害防止施設の整備などに注力することとしており、本年3月中の公表を目指しています。
また、大規模自然災害への備えとして、おおむね10年先を見据えた取組の方向性を示す国土強靱化地域計画を、本年6月を目途に策定します。
次世代を担う子どものセーフティネットとして、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右され、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、必要な環境整備と教育の機会均等を進める必要があります。そのため、県内の子どもの貧困状況の調査を行ったうえで、子どもの貧困対策を推進する計画を平成27年度中に策定します。
ストーカー事案・配偶者暴力事案の認知件数の増加、子ども・女性が被害者となった性犯罪や声掛け・つきまとい事案等の多発、インターネットバンキングに係る不正送金事犯の急増、社会問題化する危険ドラッグの蔓延等、県民の日常生活に潜む新たな脅威が顕在化しています。このため、ストーカー・配偶者暴力事案の被害者等の保護対策の強化、性犯罪・性暴力被害者のワンストップ支援などの体制の整備、不正送金事犯の関与者の検挙、危険ドラッグの鑑定の迅速・高度化等による取締りの強化等の対策に、県警察と連携して取り組みます。また、犯罪抑止効果が期待できる防犯カメラの整備を推進するとともに、危険ドラッグの規制を含めた薬物濫用防止に関する条例を平成27年度中に制定するための検討を進めます。
(教育行政の推進)
地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正に伴い創設された総合教育会議について、本年4月の設置に向けて、準備会議を1月13日に開催しました。総合教育会議では、教育施策大綱の策定、本県の教育に係る課題やあるべき姿などについて協議等を行うこととしており、その結果を踏まえ、知事が教育施策大綱を策定します。教育施策大綱は、現在策定中の次期三重県教育ビジョンの骨格部分に反映されることになります。
今後は、私もより一層当事者意識を持って主体的に教育行政に関わり、子どもの学力及び体力の向上をはじめとする諸課題について、教育委員会と一緒にしっかり検討を行い、三重県の教育政策の方向性を打ち出していきたいと考えています。