平成23年第3回定例会11月会議の議案等の説明に先立ちまして、当面の県政運営にあたっての私の考え方を申し述べます。
最初に、9月会議においてお示しし、県議会から申し入れをいただいた「みえ県民力ビジョン(仮称)中間案」及び「三重県行財政改革取組(素案)」について、それぞれの進捗状況を説明いたします。
(みえ県民力ビジョン)
まず、「みえ県民力ビジョン(仮称)中間案」については、パブリックコメントや市町への説明会を実施するなど、広く県民の皆様からもご意見をいただいてきました。
私は、中間案で掲げた基本理念、「県民力でめざす『幸福実感日本一』の三重」を実現するためには、これまでの県政運営のあり方を変え、県民の皆様のもとに成果が届き、実感していただけるようにすることが重要であると考えています。こうした視点から、中間案でお示しした政策体系の全般にわたって見直しを進め、最終案として取りまとめました。
主な見直しの内容について、説明いたします。
まず、県民の皆様の命と暮らしを守るため、地震や風水害などの自然災害への備えに、食の安全・安心の確保や感染症対策の取組を加え、「危機管理」に取り組むこととします。
次に、「教育」と「子育て」のそれぞれを独立した政策分野とし、子どもたち、若者たちを、社会全体で育み、夢や希望への挑戦を後押しするため、県民総参加で取り組んでいくこととします。また、県民の皆様に夢と感動を与え、一体感を醸成する「スポーツ」についても、独立した政策分野として取り扱うこととします。
次に、雇用政策を産業政策と同じ基本方向のもとに位置づけ、相互の連携を強化して、雇用の創出と確保に総合的に取り組むこととします。また、三重の魅力や価値について、広く国内外の共感を得るため、情報発信や営業活動を強力に進めることとし、新たな政策分野として「世界に開かれた三重」を設け、戦略的に取り組んでいきます。
最後に、森林の持つ多様な機能があらためて注目される中で、持続的な木材生産活動は、地域の雇用確保と環境保全に大きく貢献することから、林業振興と森林づくりを一体的に進めることとします。
(選択・集中プログラム)
ビジョンの行動計画については、計画期間中に行政経営資源を効率的かつ効果的に投入し、私が特に注力したいと考える政策課題を、「選択・集中プログラム」と位置づけ、取組内容をまとめました。
防災、道路整備、医師確保などの緊急に対処すべき重要な課題に取り組む10本の「緊急課題解決プロジェクト」及び、学力向上やスポーツなどのテーマに、県民の皆様とともに中長期的な視点から取り組む5本の「新しい豊かさ協創プロジェクト」のほか、働く世代の人口減少が進む県南部地域を対象に、働く場の確保や観光振興などに取り組む「南部地域活性化プログラム」を含め、合わせて16本の取組を選定しています。
(行財政改革取組)
続きまして、行財政改革取組については、県議会からの申し入れに加え、外部の有識者で構成する「三重県行財政改革専門委員会」においても、活発な議論をいただいており、これらの要望や意見も十分踏まえ、今回、「三重県行財政改革取組(中間案)」として取りまとめたところです。
中間案では、素案でお示しした基本的な考え方や方向性に加え、「人づくりの改革」、「財政運営の改革」、「仕組みの改革」の3つの柱ごとに、それらを進めるための具体的取組をお示しするとともに、これまでの取組内容、現状の評価・課題及び改革の方向性と個々の具体的取組を「ロードマップ(工程表)」として取りまとめました。
(県組織の見直し)
行財政改革取組の項目の一つである県組織の見直しについては、「みえ県民力ビジョン(仮称)」を着実に推進できる、県民の皆様からわかりやすい、簡素で効率的・効果的な組織体制の構築をめざし、平成24年4月に本庁部局の再編を実施したいと考えています。
なお、県民センターなどの地域機関については、現行組織の課題を検証するとともに、現場重視の視点、市町との役割分担、より成果を県民の皆様に届けるための県民サービスや地域の特性を踏まえた組織のあり方など、さまざまな面から十分に検討を行い、その検討結果を踏まえ、平成25年度に必要な見直しを実施したいと考えています。
以上ご説明申し上げた「みえ県民力ビジョン(仮称)最終案」及び「三重県行財政改革取組(中間案)」の詳細については、今会議で説明させていただきます。
次に、県政における当面の主な課題等について、説明いたします。
(紀伊半島大水害)
台風12号がもたらした記録的な豪雨により、本県では甚大な被害が発生しました。
県では災害発生後、市町や関係機関との緊密な連携のもと、人命の救助を最優先に、職員の派遣も行い、生活インフラの復旧や食料等の物資の提供、災害廃棄物の処理など、被災者支援と応急復旧対策を実施しました。10月には総額289億円の補正予算を組み、道路や河川などの公共施設の早期復旧に取り組むとともに、被災された方々の生活再建のための取組を進めました。
紀宝町では、現在も10世帯、16人の方が避難生活を余儀なくされており、一日も早く元の生活に戻れるよう、引き続き復旧活動を進めます。また、被災された方々の生活再建については、市町とも連携しながら、継続的な支援を行っていきます。公共施設等の復旧については、本格的な災害復旧事業の着手に向けて鋭意取り組んでいるところであり、迅速な対応に努めます。
国に対して、こうした紀伊半島大水害からの復旧・復興に向けて、県としての緊急提言活動や紀伊半島3県による共同提案を行ってきました。
また、平成24年度の国の予算編成等に関する提言活動の中で、災害復旧への支援をはじめ、紀伊半島の「新たな命の道」の整備によるミッシングリンクの解消や、熊野川の治水対策、災害に強い森林づくりなど、総合的な支援、協力を要請したところです。
こうした中で、昨日、台風12号等に係る災害対策費を含む国の第3次補正予算が成立しました。また、熊野尾鷲道路の尾鷲南インターチェンジ・尾鷲北インターチェンジ間については、先般国において、新規事業採択時評価手続きに着手することが決定され、事業化に向けて大きく前進しました。
引き続き、国や市町とも連携し、復旧・復興に全力を挙げて取り組んでいきます。
(地震・津波対策)
次に、就任以来見直しを進めてきた県内の地震・津波対策については、大規模地震発生時の避難対策など、命を守る対策に緊急かつ集中的に取り組むため、10月に津波浸水予測調査(速報版)を公表するとともに、全国に先駆けて「三重県緊急地震対策行動計画」を策定しました。
今後は、こうした調査の結果も含めて広く情報を提供し、市町や関係機関等との緊密な連携のもと、県民の皆様とともに着実に計画を実行していきます。
県内の学校における防災対策・防災教育については、教育委員会の「学校防災緊急対策プロジェクト」が中心となり、防災危機管理部とともに、取組の見直しや強化に向けて具体策の検討を進めています。
これらの検討結果については、できるだけ早期に指針として取りまとめ、市町の教育委員会、学校とも連携し、取組を推進していきます。
(産業振興と雇用確保)
歴史的水準の円高や欧州の債務・金融危機に加え、タイの大洪水による現地の日系企業の活動停止など、日本経済を取り巻く環境は一段と厳しさを増し、東日本大震災の影響から一時持ち直しの兆しが見られた地域の雇用・経済は、回復の動きが弱まっています。
引き続き、販路開拓の支援などにより県内企業の活動を下支えするとともに、国の第3次補正予算に盛り込まれた対策も踏まえ、県内の産業振興や雇用確保にしっかりと取り組んでいきます。
11月18日には、第1回の「みえ産業振興戦略」検討会議を開催し、経済変動に左右されない強じんで多様な産業構造の構築を図るなど、地域から日本経済を支えリードしていけるような戦略の策定に向けて、意見交換を行ったところであり、さらに議論を深めていきます。
雇用の面では12月に、県内経済団体等の参画を得て、新たに「三重県雇用創造懇話会」を開催することとしており、多様な働き方や働く場を視野に入れながら意見交換を行い、雇用に関する新しい仕組みの創出につなげたいと考えています。
また、10月に施行いたしました「みえの観光振興に関する条例」に基づき「三重県観光審議会」を設置して、先日第1回会議を開催し、本県の観光振興の方向などについて、グローバルな視点から議論していただきました。審議会での議論等を踏まえ、三重県観光振興基本計画の策定を進めていきます。
さらに、新たな市場の開拓などにつなげるため、三重の魅力のPR拠点となる「パワーすぽっと三重カフェ」を東京都内に出店しました。今後も、三重県営業本部を核として、首都圏を中心に三重のさまざまな情報の発信や営業活動を強化していきます。
(環太平洋パートナーシップ(TPP)協定)
環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、先般、交渉参加に向けて関係国への協議に入るとの国の方針が表明されました。
今後は、国民への十分な情報提供のもとに、地方の意見もしっかりと聞いて、国民的な議論を進め、その上で、TPPへの参加について慎重に判断していただくことを強く望みます。
また、TPPの議論においては、わが国農業の国際競争力の強化に向けた農業政策や、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州連合(EU)などとの自由貿易協定(FTA)を視野に入れた通商政策などのあり方が大変重要であり、政府として方向性を明確に示す必要があると考えます。
県としては、国の動向を注視し、本県の産業や県民生活への影響等も見極めながら、必要に応じ、全国知事会等とも連携して国に働きかけるなど、的確に対応していきたいと考えています。
(国民体育大会の開催)
9月会議において、平成33年に開催の第76回国民体育大会を招致することを表明し、10月18日には、国民体育大会の招致に関する県議会の決議をいただきました。
このことを受けて、11月15日に文部科学省、公益財団法人日本体育協会を訪問し、県、県教育委員会及び財団法人三重県体育協会の3者の連名で、「平成33年第76回国民体育大会開催要望書」を提出いたしました。
国民体育大会やそれに続く全国障害者スポーツ大会の開催は、県民の皆様がスポーツを通して夢と感動を分かち合うことで、県民の一体感の醸成や活力ある三重づくりにつながると考えており、今後、市町、関係団体等と十分連携しながら、開催に向けた準備を進めていきます。
(森林づくり)
紀伊半島大水害では、山腹崩壊等の山地災害や流木による被害が大きなものとなっており、森林の公益的機能の重要性を再認識するとともに、森林づくりは、その恩恵を享受する県民の皆様にも参画していただきながら、社会全体で着実に進めていく必要があるとの思いを強くしました。
本県では、平成19年度に、「三重の森林づくり検討委員会」を設置し、森林づくりを地域社会全体で支える方策について検討を進め、森林の公益的機能の維持・増進のための新たな施策の提案や、そのための財源として県民の皆様に広くご負担いただく税の導入が適当であるとの提言をいただきました。
私としては、その後の森林・林業を取り巻く状況の変化や紀伊半島大水害を踏まえ、森林づくりのための税の検討を進める必要があると考えており、今会議で、そのための新たな取組についてお諮りします。
(本県財政の現状と平成24年度当初予算編成)
次に、本県財政の現状と平成24年度当初予算編成について説明いたします。
本年度は、10月補正予算で、紀伊半島大水害による災害復旧費等を計上したことに加え、12月補正予算で、東日本大震災の影響等による県税収入の大幅な減額と、社会保障関係経費や県立病院改革に伴う経費の追加などを計上した結果、年度間の財源調整を図るための財政調整基金の残高は、12月補正予算後で約15億円となっています。これは、昨年同時期の約159億円と比べ、大幅な減少であり、平成24年度の財政状況は、当初予算調製方針をお示しした時点より、なお一層深刻な状況となっています。
このため、今後、当初予算の編成にあたっては、基金の有効活用や県有財産の積極的な売却など、あらゆる財源確保に取り組んでいくとともに、大規模臨時的事業などの先送りや総人件費の抑制などのさらなる見直しを図ってまいります。
なお、国の予算や地方財政計画等の動向が未確定な段階にあることから、これらの動向も見極めつつ、今後必要に応じて、所要の対応策を取っていきたいと考えていますので、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
また、今後とも、予算編成過程の情報を提供し、県民の皆様や県議会と共有しながら、予算編成を行っていきます。
以上が、当面の県政運営にあたっての考え方です。
(議案等の概要)
それでは、引き続き、上程されました補正予算15件、条例案20件、その他議案14件合わせて49件の議案について、その概要を説明いたします。
議案第28号から第42号までの補正予算は、県税収入や地方交付税等の歳入の増減や、国庫支出金の額の確定に伴う事業費の増減などについて、それぞれ補正を行うものです。
各会計の補正額は、一般会計で69億8,061万4千円、特別会計で46億1,537万4千円、企業会計で57億7,445万4千円をそれぞれ増額するものです。
まず、一般会計についてその概要を説明いたします。
歳入の主なものとして、県税について、法人事業税、個人県民税などが減収する見込みから60億6,100万円、地方譲与税について16億5,600万円、県債について11億4,820万円、それぞれ減額しています。
一方、地方交付税について、普通交付税の交付見込額の増に伴い23億9,479万5千円、国庫支出金について、地域医療再生臨時特例交付金で59億7,955万2千円、公共事業関係で10億5,664万9千円など合わせて56億8,817万8千円、繰入金について、土地開発基金を取り崩し、公共用地先行取得事業特別会計から51億5,462万7千円を繰り入れるなど41億7,368万8千円、それぞれ増額しています。
歳出の主なものとして、台風12号により被災した三岐鉄道三岐線の橋梁復旧を支援するため2,171万8千円、国の平成22年度補正予算に計上された地域医療再生臨時特例交付金等を基金に積み立てるため59億9,253万3千円、救急医療体制を強化するため、地域医療再生計画に基づき、桑名地域、東紀州地域での二次救急の充実に向けた支援などを行うため2億9,101万3千円、県内の医師不足の解消に向けて、県内病院に勤務する若手医師の専門性向上に資する支援方策の検討などを行うため4,823万1千円、県立病院改革等に伴う病院事業会計への貸付金及び負担金で51億6,597万3千円、それぞれ計上しています。
また、公共事業等について、国庫補助金の確定や事業計画の変更などにより17億7,519万7千円を増額しています。
一方、人件費として人事委員会の職員の給与に関する勧告等に鑑み、給料等を減額することなどにより4億8,086万9千円を減額し、県債管理特別会計繰出金について、借入利息の確定に伴う利子償還金の減額などにより11億7,251万7千円を減額しています。
これらの歳入歳出予算のほか、債務負担行為及び地方債の追加及び変更とともに、繰越明許費を提出しています。
次に、特別会計及び企業会計のうち主なものについて、説明いたします。
特別会計では、県債管理特別会計について、借入利息の確定に伴う利子償還金の減額などにより11億6,424万3千円を減額する一方、公共用地先行取得事業特別会計について、土地開発基金を取り崩し一般会計に繰り出しを行うため51億5,462万7千円を増額しています。また、企業会計では、水道事業会計について5億9,978万6千円、工業用水道事業会計について6億3,344万円、それぞれ減額する一方、病院事業会計について、志摩病院の指定管理者へ職員の身分移行を行うために必要な退職手当の支給や病院改革に伴う財務上の整理及び企業債の繰上償還にかかる経費等として70億1,296万4千円を増額しています。
以上で補正予算の説明を終わり、引き続き条例案等の諸議案について説明いたします。
議案第43号は、県立志摩病院への指定管理者制度導入に伴い、退職する職員の退職手当の額を特例的に措置する条例を制定するものです。
地方独立行政法人三重県立総合医療センターの設立に伴い、議案第44号は、重要な財産を定める条例を制定し、議案第45号は、職員の引継ぎに関する条例を制定し、議案第46号は、関係条例の規定を整備し、議案第75号は、当該法人に承継させる権利を定めようとするもので、議案第76号は、定款の一部を変更しようとするものです。
議案第47号、第48号、第56号、第57号、第60号及び第62号は、人事委員会の給与改定に関する勧告等に鑑み、所要の改正を行うものです。
議案第49号及び第58号は、地方独立行政法人三重県立総合医療センターの設立及び法令の一部改正に鑑み、規定を整備するものです。
議案第50号及び第55号は、法律の一部改正に伴い、規定を整理するものです。
基金に関し、議案第51号及び第53号は、法律の一部改正に伴い、規定を整備し、議案第52号は、基金の一部を処分することができるよう規定を整備するものです。
議案第54号は、県内の救急医療機関等で勤務する医師を確保するため、医師修学資金の返還免除についての規定を整備するものです。
議案第59号は、三重県立くわな特別支援学校を設置するものです。
議案第61号は、県立病院の地方独立行政法人化等に鑑み、助産師及び看護師修学資金の返還免除についての規定を整備するものです。
議案第63号は、宝くじを発売することについて、平成24年度の発売総額など必要な事項を定めるものです。
議案第64号から第68号までは、工事請負契約を締結又は変更しようとするものです。
議案第69号は、訴えを提起しようとするものです。
議案第70号は、損害賠償の額の決定及び和解をしようとするものです。
議案第71号から第74号までは、公の施設の指定管理者を指定しようとするものです。
以上で諸議案の説明を終わり、次に報告事項について説明いたします。
報告第38号から第58号までは、議会の委任による専決処分をしましたので報告するものです。
報告第59号は、議会の議決すべき事件以外の契約等について、条例に基づき、報告するものです。
以上をもちまして提案の説明を終わります。
なにとぞ、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。