平成22年第1回定例会の議案の説明に先立ちまして、ハイチにおける大地震により、尊い命を奪われた皆様に深く哀悼の意を表するとともに、被災者の皆様にこころからお見舞い申し上げます。
続きまして、県政に対する基本的な考え方を申し述べるとともに、平成22年度当初予算を含めた諸議案について説明いたします。
(時代の峠と希望)
今、我が国は大きな時代の峠を迎えています。
重化学工業を基軸とした産業構造から新たな産業構造へと転換しようとしているなかで、バブル経済の崩壊、その後の「失われた10年」を経て、「小さな政府論」による構造改革が進められた結果、年金、医療等の社会保障や雇用をはじめ、さまざまな歪みが顕在化し、貧困や格差が拡がりました。そうした中で、平成20年秋の世界同時不況により、これらの歪みが一層増幅され、国民の間には不安感、閉塞感が漂うことになりました。
このような状況のもと、昨年夏の総選挙によって政権交代が行われました。
私は、こうした時代の峠だからこそ、峠の向こうに将来に希望を持ち、安心して暮らすことができる社会を築いていくという視点に立つことが、重要なのではないかと考えています。
(この国のあり方)
私が座長をつとめる全国知事会の「この国のあり方に関する研究会」においても、この国のめざすべき社会の方向性として「希望を持って生きられる社会」を掲げて、「生き生きと働ける社会」「生涯を通じて不安のない社会」「家族や地域の絆が育まれている社会」の3つの観点から、検討しているところです。
今後、さらに議論を深めて、研究会の成果をとりまとめ、広く発信していきたいと考えています。
(国の予算編成等)
昨年夏の総選挙によって発足した鳩山内閣では、「友愛」、「コンクリートから人へ」といった基本理念のもとで、さまざまな政策の転換が進められつつあります。
総額92.3兆円と過去最大規模となった平成22年度の国家予算については、財政規律の確保とマニフェストに掲げた政策の実現のバランスに腐心して編成されたものと考えています。
特に、地方交付税と臨時財政対策債とを合わせた実質的な地方交付税が増額されたことや、自動車関連諸税の現行税率の水準維持等により財源が確保されたことなど、地方へ配慮されたものと受け止めています。
また、公立高等学校授業料の無償化など、新たな制度が創設され、厳しい経済状況のもとで、県民負担の軽減になる施策が打ち出されております。
一方、公共事業関係費が前年度比18.3%の減額となり、社会資本整備が遅れている本県にとってその影響が懸念されましたが、先日示された平成22年度の国直轄事業の実施見込みの仮配分では、一定の配慮がなされていると思います。
(地域主権改革)
また、地域主権改革については、国と地方の協議の場の法制化、義務付け・枠付けの見直し、補助金の一括交付金化、地域主権戦略大綱(仮称)の策定などに取り組むこととしています。
こうした動きを契機として、地域主権社会の構築を確固たるものとするため、全国知事会とも連携して改革推進を国へ働きかけるとともに、県としても行政能力を高めていくことが重要になっていると考えております。
(雇用・経済情勢)
こうした国の動向等を踏まえ、平成22年度の県政運営においては、最重要課題として厳しい雇用経済情勢に的確に対応していきます。
本県の雇用情勢については、有効求人倍率が5か月連続で改善しているものの、今なお低い水準にあります。また、高等学校等の新規卒業予定者の就職内定率も昨年より低い状況が続いています。
経済情勢については、生産は一部に持ち直しの動きがみられるものの、中小企業の経営が厳しく、個人消費が低い水準にとどまっている状況が続いています。
(緊急雇用・経済対策)
このため、県では平成22年度においても、第二次戦略計画の関連施策に加え、「平成22年度三重県緊急雇用・経済対策推進方針」に基づき、対策の推進に取り組みます。
「雇用」「経済」「生活」の3つの分野を柱に、国の対策とも連動して、市町をはじめとする関係団体と密接な連携のもと、的確に対策を推進していきます。
なお、官民で構成する「三重県経済危機対策会議」については、推進組織としての体制を強化するため「三重県雇用・経済危機対策会議」に改組し、効果的に雇用対策と経済対策を推進していきます。
(最終年度の第二次戦略計画の推進)
平成22年度は「県民しあわせプラン・第二次戦略計画」の最終年度であることから、目標の達成に向けて全力で取り組んでいきます。
後ほど平成22年度の当初予算の概要において、具体的な取組を説明することとし、特に、重要な点について申し述べます。
(美(うま)し国おこし・三重)
今年は「“文化力立県”」2年目となります。文化力を象徴する事業である「美(うま)し国おこし・三重」については、引き続き、文化力を生かした自立・持続可能な地域づくりをめざす取組を進めます。
2月28日にオープニングの年を締めくくる「成果発表・交流会」を開催するほか、平成22年度から共通テーマに基づく取組を全県的に展開することとしており、多様な主体の参画の輪を拡げながら「美(うま)し国おこし・三重」を進めます。
(新県立博物館)
新県立博物館は、県民一人ひとりが三重への愛着と誇りを育み、子どもたちが将来への夢や希望を持ち、豊かな感性を持った地域の良き担い手として成長していくきっかけの場をつくる未来への投資であります。
このため、開館に向けて建築工事に着手するなど、必要な施設整備を進めるほか、「ともに考え、活動し、成長する博物館」として県民・利用者の皆様とともに、博物館活動や運営のしくみなどを構築できるよう取り組んでいきます。
(次期戦略計画)
また、次期戦略計画については、重点的な取組や各施策・事業の成果等を点検し、策定に向けた準備を進めていきたいと考えています。
(県立病院改革)
なお、県立病院改革については、これまでの県議会等における様々な議論を踏まえて、先日開催された全員協議会において、それぞれの病院の改革の工程を含めた「県立病院改革に関する基本 方針」をお示し、「志摩病院指定管理条件(骨子案)」についても説明いたしました。
全員協議会や常任委員会など、議会からのご意見を真摯に受け止め、必要な対応を検討してまいりたいと考えています。
県立病院改革は決して先送りできない課題であり、それぞれの病院が良質で満足度の高い医療を安定的、継続的に提供できるよう、この基本方針に基づいて改革に取り組んでまいります。
以上、県政に対する基本的考え方を申し上げましたが、次に、平成22年度当初予算等の概要について説明いたします。
(平成22年度当初予算編成の考え方)
平成22年度当初予算は、県内の厳しい雇用経済情勢や極めて厳しい財政状況を踏まえ、次の考え方を基本に編成しました。
先ず、厳しい雇用経済情勢が続く中、「平成22年度三重県緊急雇用・経済対策推進方針」に基づき、平成21年度2月補正予算と一体的にとらえた切れ目のない雇用・経済対策を講じることです。
次に、「県民しあわせプラン・第二次戦略計画」の最終年度として、「重点的な取組」や施策目標の達成に向けて全力で取り組むことです。
最後に、「“文化力立県”」の2年目の年として、本県の「文化力」を象徴する事業を着実に推進することです。
(補正予算及び当初予算の規模)
以上のような考え方により予算編成を行った結果、借換債を除くベースで、当初予算の額は一般会計では、前年度当初予算と比べ、1.0%増の6,763億2,814万9千円となり10年ぶりの増額予算となりました。このほか、特別会計は418.1%増の1,163億6,613万4千円、企業会計は2.6%増の635億4,690万6千円となり、三会計を合わせた予算額は、13.6%増の8,562億4,118万9千円となりました。
また、平成21年度2月補正予算は、一般会計で100億3,952万4千円となっており、22年度当初予算と合わせた14ヵ月の予算ベースでは、前年度と比べ1.1%増の6,828億294万5千円となりました。
このうち、当初予算の歳入の主なものについて説明いたします。
県税収入については、経済情勢の悪化に伴う法人関係税の落ち込みなどから、対前年度11.4%減の2,005億2,000万円を計上しています。
地方譲与税については、地方法人特別譲与税の増により、44.8%増の219億1,500万円を計上しています。
地方交付税については、地方財政対策の内容を踏まえ、1.1%増の1,300億円を計上しています。
県債については、臨時財政対策債の増により、13.9%増の1,468億9,600万円を計上しています。
国庫支出金については、公立高等学校授業料不徴収交付金の交付などにより、3.9%増の695億9,182万5千円を計上しています。
なお、平成21年度2月補正予算の歳入の主なものは、国庫支出金について、国の第二次補正予算に伴う「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」30億8,501万9千円を計上したほか、緊急雇用創出事業臨時特例交付金の増額など合わせて84億8,774万4千円を、また、県債について、公共事業の増額に伴い10億500万円をそれぞれ計上しています。
(緊急雇用・経済対策にかかる予算)
続きまして、平成21年度2月補正予算と平成22年度当初予算を合わせた緊急雇用・経済対策の取組について説明いたします。
「雇用対策」については、厳しい雇用情勢に対応するため、緊急雇用創出事業を実施します。
また、介護、医療、農林水産、環境・エネルギー等の成長が期待される重点分野における雇用の創出と地域のニーズに応じた人材の育成に取り組みます。
さらに、地域における継続的な雇用機会の創出に取り組むとともに、福祉や第一次産業の分野等において、雇用の創出につながる事業者の取組を支援します。
これらの取組により、県・市町合わせて3,952人の雇用創出をめざします。
このほか、求職者総合支援センターにおける総合的な支援や、高等学校・大学等の新卒者の早期就労など雇用につながる支援に取り組みます。
「経済対策」については、融資枠の大幅な拡充を行ってきたセーフティネット資金の円滑な運用に引き続き取り組むとともに、緊急専門相談の実施など中小企業等の経営安定化に向けた支援を行います。
また、中小企業等の技術開発や販路開拓に対する支援、地域資源を活用した農商工連携などによる商品開発や県内への観光客の誘客など、地域経済の活性化と需要拡大に取り組みます。
さらに、中長期的な視点から、将来の成長が期待される環境・エネルギー関連分野に関する技術開発や人材育成、研究施設への支援など、新たな産業を創出する取組を支援します。
このほか、国の第二次補正予算で創設された「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」を活用し、道路・橋りょうの維持修繕、県立学校などの耐震化等に取り組みます。
「生活対策」については、離職者等に対する生活資金の貸付や住居に関する支援、私立高等学校等の授業料の減免など、生活の安定に向けて取り組みます。また、母子家庭の自立支援や、「安心こども基金」を活用した子育て環境の整備など働きやすい環境づくりに取り組みます。
以上のような取組を行っていくこととしていますが、今後、状況を見極めながら、追加の対策が必要と判断される場合は、補正予算により迅速に対応していきたいと考えています。
次に、「県民しあわせプラン・第二次戦略計画」の「重点的な取組」などの目標達成に向けた取組について説明いたします。
(みえの元気づくり)
先ず、「みえの元気づくり」についてであります。
厳しい経済情勢というピンチをチャンスに結びつけ、地域や経済の元気を回復するためには、農林水産業の活性化や農商工連携など地域の持つ特性や資源、強みを生かした産業の振興が必要です。
このため、農業・農村の振興に関する条例や基本計画の策定を進め、農を起点とした地域活力の向上活動を誘発するしくみづくりに取り組みます。また、「みえ農商工連携推進ファンド」を活用した農商工連携等による新商品・新サービスの開発、販路開拓など商品開発後のフォローアップ等を進めるほか、首都圏等での県産農林水産物等の市場開拓に取り組み、県産品の流通促進と認知度の向上を図ります。
知識集約型産業構造への転換については、企業の研究開発や生産性向上の支援、産業技術人材の育成など、県内産業の競争力を高める取組を進めます。また、今後、市場の大幅な拡大が予想される 環境・エネルギー関連分野について、企業誘致をはじめ、県内産業の強みを生かした取組を進めます。
学校教育については、児童生徒の基本的な生活習慣や学力の定着・向上を図るため、少人数教育にかかる教員の配置を拡充するとともに、基礎的・基本的な知識・技能の習得のためのシステムづくりや授業方法の工夫改善などを行います。
(みえのくらしづくり)
次に、「みえのくらしづくり」についてであります。
防災対策については、孤立対策、災害時要援護者対策などの減災に向けた市町の積極的な取組を支援するとともに、地震による被害を軽減するため、引き続き、住宅耐震補強への取組などを支援することにより、住まいやまちの安全性を高めていきます。
防犯対策については、地域における安全・安心を確保するため、交番・駐在所の整備などのハード対策を進めるとともに、すべての交番に交番相談員を配置し、相談体制を整えるなどのソフト対策も合わせて行い、地域に密着した犯罪抑止対策に取り組みます。
地球温暖化対策については、持続的発展が可能な低炭素社会の実現に向けて、CO2削減にかかる取組をはじめ、新エネルギーの導入促進や普及啓発を進めます。また、CO2削減の新たな中期目標の設定等については、今後示される政府の具体的な対策と合わせ、本県の地域特性を勘案しながら取り組みます。
地域医療体制の整備については、医学生への修学資金の貸与や勤務医の負担軽減などに取り組むほか、地域医療を担う医師への支援を行います。また、新人看護職員に対する研修体制の整備や、潜在看護職員の再就業に向けた支援を行います。さらに、三次救急医療体制の充実を図るため、ドクターヘリの平成23年度中の導入に向けた準備を進めます。
子育て環境の整備については、子どもや子育て家庭を取り巻く課題に対応するため、地域の多様な主体との協働による取組を促進するとともに、子どもたちの育ちを支えることのできる地域社会づくりを推進するため、「三重県こども条例(仮称)」の制定に取り組みます。また、放課後児童クラブ等の設置、運営を支援するなど「放課後子どもプラン」を推進します。
(みえの絆づくり)
最後に、「みえの絆づくり」についてであります。
幹線道路網の整備については、平成25年の神宮式年遷宮を契機として、広域的な交流・連携の促進に向け、新名神高速道路、紀勢自動車道、東海環状自動車道、熊野尾鷲道路、北勢バイパス、中勢バイパスの整備促進、及び第二伊勢道路とこれら根幹をなす道路にアクセスする県管理道路の整備を推進します。
なお、公共事業については、国家予算に関連する直轄事業負担金等については減少するものの、県単独公共事業は、公共土木施設等の機能維持・長寿命化等を図るため、前年度当初予算を上回る額を確保しました。
観光振興については、首都圏、関西圏、中京圏、海外等エリア別の情報発信・誘客戦略をさらに効果的に推進するとともに、首都圏等からの修学旅行、近隣府県、県内からの社会見学といった教育旅行の誘致に取り組みます。
また、国のビジット・ジャパン・キャンペーンに呼応し、外国人観光客を誘致するため、ターゲットとする国・地域の拡大や情報発信の強化、受け入れ体制の充実等に取り組みます。
最後になりますが、厳しい財政状況のもと、限られた経営資源の中で、事務事業の「選択と集中」を一層進め、簡素で効率的な「身の丈」にあった行財政運営を進めていかなければなりません。このため、財政健全化に向け、引き続き総人件費の抑制や事務事業の見直しなどに取り組みます。
(予算以外の議案等の概要)
次に、今回提案しています予算以外の議案は、条例案19件、その他議案15件の合計34件でありますが、その概要について説明いたします。
議案第19号は、知事の権限に属する事務の一部を市町が処理することについて改正するものです。
議案第21号は、知事及び副知事等の給与を減額する期間を延長することについて、議案第20号、第28号及び第35号は、職員の定数及び定員について、それぞれ改正するものです。
議案第22号は、市場公募債の導入にかんがみ、関係条例の規定を整備するものです。
基金に関し、議案第23号は、設置目的となる事業の追加に伴い規定を整備し、議案第36号は基金の目的を達したことに伴い廃止するものです。
議案第24号及び第27号は、法律の一部改正にかんがみ規定を整備するものです。
県税に関し、議案第25号は、知事の権限の委任について改正し、議案第37号は、地方税の減収補てん措置の終了にかんがみ、県税の特例措置を定めた条例を廃止するものです。
議案第26号及び第34号は、修学資金の返還免除に関する規定を整備するものです。
議案第29号は、県立尾鷲高等学校長島分校を廃止するものです。
議案第30号は、三重県総合文化センターの利用料金に係る規定を整備するものです。
水道事業に関し、議案第31号は、伊賀水道の伊賀市水道事業への一元化に伴い規定を整備し、議案第33号は、当該一元化に伴う規定の整備のほか基本料金等を改定するものです。
議案第32号は、県立志摩病院の管理を指定管理者に行わせることに伴い、必要な規定を整備するものです。
議案第38号は、包括外部監査契約を締結しようとするものです。
議案第39号は、全国自治宝くじ事務協議会規約の一部を変更しようとするものです。
県の行う建設事業等の経費に関し、議案第40号から第42号までは関係市町に負担を求め、議案第43号は町の負担額を変更しようとするものです。
議案第44号から第49号までは、工事請負契約を締結又は変更しようとするものです。
議案第50号は、有料道路の事業変更に同意しようとするものです。
議案第51号は、訴えを提起しようとするものです。
議案第52号は、公務災害補償等に関する事務の受託を廃止するための協議をしようとするものです。
以上で諸議案の説明を終わり、次に、報告事項について説明いたします。
報告第1号から第23号までは、議会の委任による専決処分をしましたので、報告するものです。
報告第24号は、議会の議決すべき事件以外の契約について、条例に基づき、報告するものです。
以上をもちまして提案の説明を終わります。
なにとぞ、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。