農業や工業をはじめとする職業学科及び総合学科を設置している高等学校28校で学ぶ生徒が、令和3年度に整備した温室自動制御装置や数値制御工作機械、各種シミュレーターなどデジタル化に対応した最新の産業教育設備を駆使し、Society5.0時代における地域の産業を支える人材に必要な知識・技術を習得しています。
1 特徴的な取組事例
(1)農業学科
○学校名
四日市農芸高等学校 農業科学科
○取組概要
これまでは、生徒が温湿度計を見て、手動で温室内の温度や湿度を管理していました。現在は、2・3年生が「総合実習」において、自動制御による安定した環境のもとで質の高い野菜の栽培に取り組み、スマート農業に関連する技術を習得しています。生徒からは、「大きく高品質な野菜が育ち、制御装置の威力に驚いた。」といった声が聞こえてきています。
○使用設備
水耕温室クラウド型自動制御装置(温室において温度、湿度、日照時間をデジタル管理しながら野菜を育てることができる装置)
(2)工業学科
○学校名
四日市中央工業高等学校 都市工学科
○取組概要
これまでは、製図台を使用した紙の製図や、コンピュータを使用した2次元の製図を主に行っていました。現在は、3年生が「課題研究」において、高性能なコンピュータを使用して、学校の実習棟や温水プールの設計図(紙データ:2次元)を、デジタルデータとして3次元化することに取り組み、3次元CAD(Computer Aided Design)に関連する技術を習得しています。生徒からは、「平面図だけでなく、立体的な図面で構造物を設計できて嬉しい。より高度なことに挑戦していきたい。」といった声が聞こえてきています。
○使用設備
3次元CAD(設計が立体的にできる装置)40台
(3)水産学科
○学校名
水産高等学校 海洋・機関科
○取組概要
これまでは、モニター画面がない状態で、速度や方位の計器の数値のみで仮想の海上を航行する練習をしていました。現在は、2・3年生が「航海・計器」「船舶運用」「総合実習」において、GPS機能と3つのモニター画面により、操舵室からの目線で実際の海上や港を再現できる装置を使用し、操船練習に取り組むことで、効率的に航海技術を習得しています。生徒からは、「実際の船に乗っているみたい。指示に従うだけでなく、話し合いながら技術を高めあえるので、チームワークも高まっていい。」といった声が聞こえてきています。
○使用設備
レーダー・自動衝突予防援助装置シミュレーター(船の航海中、レーダーにより他の船を検知し、自分の船と危険な関係が生じるかのシミュレーションができる装置)
2 その他各学科における取組
○農業学科:スマート農業に対応できる技術を温室制御装置や色彩選別機などにより習得
○工業学科:工場の自動化に対応できる技術を数値制御工作機械やロボット制御装置により習得
○商業学科:システム開発に対応できる技術を高性能パソコンにより習得
○水産学科:スマート水産に対応できる技術を魚介類養殖システムにより習得
○家庭学科:調理工程をモニター映像で確認できるデジタル化対応調理室で効率的に調理技術を習得
○看護学科:急性疾患や術後ケアなど患者の状況に合った対応ができる技術を看護患者情報共有シミュ
レーターにより習得
○情報学科:情報デザインやプログラミング技術などを高性能パソコンにより習得
○福祉学科:脈拍や呼吸などのデータ分析を取り入れた介護に対応できる技術を非接触型バイタルセン
サーにより習得
○総合学科:情報化社会に対応できる技術を高性能パソコンにより習得
3 今後の取組
教員からは、「最新の機器が整備されたことで、製造現場と同じ技術の習得に取り組めるようになり、生徒の学ぶ意欲が高まっている。」や「生徒の目の輝きが違う。専門分野の学びを活かした進路先に進んでいく生徒が増えていきそうだ。」といった声が寄せられており、先端技術の設備等の活用をとおして、生徒の学習意欲の向上がうかがわれます。
今後は、先端技術の設備を導入している企業や施設等とも連携し、技術者から直接学ぶ機会を設けるなど、導入した先端技術の設備を活用した実習内容の充実を図るとともに、より効果的な活用方法について研究を進めます。また、時代や地域のニーズを踏まえ、各学科の特色を生かした教育を実践することで、地域の産業を支える人材の育成に取り組んでまいります。