三重県教育委員会では、今年度から、各教科の学びを基礎として、教科横断的にあるいは文理融合の学びを通じて、実社会での課題解決に生かせるよう、創造的思考力や論理的思考力を育む教育(STEAM教育)を推進しています。
今年度は、四日市南高校、相可高校、宇治山田商業高校、水産高校の4校が実践研究に取り組んでいます。水産高校ではクロアワビの養殖をとおして、データ分析をふまえて論理的に考え、課題解決能力を身につけます。
STEAM教育とは
科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、リベラルアーツ・教養(Arts)、
数学(Mathematics)等の学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育
【水産高校の取組】
1 取組内容
水産資源科では、魚類や貝類の採集、調査、養殖、水産加工品の加工技術等を学んでいます。今回、
STEAM教育に取り組むにあたり、クロアワビの養殖を開始しました。水産高校では、これまで真鯛や
アマゴ等の養殖実習を通じて、確立された養殖技術や手順を学んでいます。今回は、生徒がクロアワビの
養殖について適した条件や生育環境が何であるかを自分たちで考え、生育実験を重ね、最適条件を探究し
ていくものです。
<アワビの種苗生産・育成の流れ>
(1)母貝の入手および養成(令和2年9月)
(2)採卵、人工授精(令和2年11月)
(3)幼生育成(水に漂っている状態)
(4)波板に付着(緑藻類、珪藻類を餌として食べる。)(令和3年3月)
(5)約2.5㎝のアワビに成長
(6)約3㎝に成長したアワビを放流
※(1)から(5)まで2年間、さらに(5)から(6)に成長するまで1年間かかります。
例えば、種苗生産に利用する海水について、アワビの体液の塩分濃度を参考にして、どの塩分濃度が生
育に最適かを検証します。光量については、アワビが夜行性であることも鑑み、暗さによる生育の違いを
検証します。また、水温・水流については、アワビが多く採れる地域のデータを参考に、水槽内に構造物
を入れて水流を変える等により比較実験を行い、最適な条件を導き出します。
11月2日(月)には、南伊勢町南勢水産種苗センターで生徒が直接クロアワビの種苗生産・育成の様
子を見学し、専門家から必要な技術や注意点について学びます。
こうしたこれまで習得した知識を活用して論理的に考え、課題解決に取り組むSTEAM教育をとおし
て、持続可能な水産業について学習を深めます。
2 対象生徒
水産資源科アクアデザインコース 3年生 8人
<参考> 水産高校の概要および今後の特徴的な取組
〇 水産高校の概要
(1)校長名 水谷正樹
(2)住所 志摩市和具2578
(3)設置学科、生徒数
① 本科(3年間)
・ 海洋・機関科 109名
・ 水産資源科 88名
② 専攻科(2年間)
・ 漁業専攻科 8名
・ 機関専攻科 9名
〇 実習船「しろちどり」による中学生職場体験
実施日 10月31日(土):水産高校発着
12月19日(土)、12月20日(日):松阪港発着
9時00分から16時00分まで
対象者 県内中学生(県内全中学校に案内チラシ配付済)
内 容 実習船「しろちどり(全長62m、499t)」に乗船し、航海士、機関士である船員のレー
ダー観測や見張り、機関メンテナンスの仕事を見学したり、実際にブリッジで操舵装置を握る体
験をします。また、船長から、船員の仕事のやりがいなどに係る講話があります。
〇 答志島でアワビ(メガイアワビ)を放流
実施日 11月14日(土)
訪問先 鳥羽磯部漁業協同組合 和具浦支所
訪問者 海洋・機関科(海洋コース) 2年生 約10人
内 容 地域で減少しているアワビ種苗を生育させるため、ダイビングにより海底の石の隙間に付着さ
せます。アワビ2,000個(予定)を鳥羽市の漁業協同組合と協力して放流します。