三重県桑名市源十郎新田事案において、地中から回収した低濃度ポリ塩化ビフェニル(以
下、「PCB」という)を含む油の一部を、回収業務の受託事業者が紛失しました。
1 桑名市源十郎新田事案の概要
平成19年9月、員弁川の河川敷でPCB等を含む油が滲出したことから、平成25年4
月から県が国の支援を得て行政代執行を実施している事案です。
これまでに地中に油が存在している範囲を鋼矢板で囲い込み、河川への油の滲出を防止し
たうえで、地中の油の回収や、不法投棄された廃棄物の掘削除去を実施しています。
県は、平成22年4月から令和2年3月までに、事案地の地中からPCB等を含む油を約
111m3回収しており、低濃度PCB廃棄物として適正に処理しています。
2 紛失の概要
(1)紛失物
紛失物:事案地の10地点の地中から回収した油から密度試験等のために採取した試料
(以下、「試料」という)
試料採取日:令和2年8月5日
形状及び数量:油を入れたガラス瓶(容量200mL)計10本
合計約2リットル
PCB含有量:約7.4~1,100mg/kg(見込値)
※)PCB含有量は、紛失した試料と別に採取した試料の測定値であり、低濃度PCB
廃棄物(0.5~5,000mg/kg)に該当します。
(2)発覚の経緯
県は、事案地の地中の油回収等の業務について、川崎地質株式会社(以下、「事業者
A」という)に委託(委託期間:令和2年3月30日~令和3年3月26日)しており、
令和2年12月23日に事業者Aから県に、回収したPCBを含む油の一部を紛失した可
能性がある旨報告がありました。
事業者Aは、令和2年12月10日に、令和2年8月分の分析結果が、事業者Aが分析
を委託した株式会社中部環境技術センター(以下、「事業者B」という)から届いていな
いことに気付き、事業者Bに確認したところ、回収したPCBを含む油の一部を試料とし
て採取した記録はあるものの、その後の所在が不明である旨の連絡を受けました。事業者
Bの調査で試料の発見に至らなかったことから、事業者Aは、試料を紛失した可能性があ
ると認識し、令和2年12月23日に県に電話で連絡しました。県は、紛失の経緯や調査
内容について、把握する必要があることから、文書による報告を求めました。
(3)発覚後の対応
事業者Aは県に対し、令和3年1月6日に書面による調査結果報告を行いましたが、県
は、調査内容が不十分であったことから、事業者A及びBに対し、改めて徹底調査と関係
者へのヒアリングを行うよう指示しました。
1月15日、事業者Aは県に調査報告書を提出し、以下の状況が確認されました。
・作業記録と写真により、事業者Bが8月5日に事案地で試料を採取したこと。
・事案地から当該試料を事業者Bが社用車で搬出したことを、複数の作業員が証言して
いること。
・事業者Bの事務所のパソコンに、資料とともに運搬したとされるUSBのデータが取
り込まれていること。
これらのことから、試料は事業者Bの事務所へ運ばれた後に所在不明となったと考えら
れます。
県は、事案地及び試料が存在する可能性のある松阪市内の事業者B(事務所、伊勢寺工
場及び大口処分場)の現場確認等を行いましたが、現時点まで見つかっていません。
3 今後の対応
事業者Aに対し、引き続き紛失した試料の所在について調査するとともに、再発防止のた
めの業務実施体制を構築するよう指示しており、再発防止策が確実に実施されるよう管理監
督していきます。
また、事案地の地中から回収したPCBを含む油の取扱いについて、今回の件をふまえ、
関係法令に基づき、これまで以上に適正な管理に努め業務を行っていきます。
(参考1)経緯
① 令和2年12月10日
事業者Aが、試料の分析結果がないことに気づき、事業者Bに連絡。
② 令和2年12月10日~令和3年1月22日
事業者A及びBによる試料の探索及び関係取引先等の聞き取り。
③ 令和2年12月23日
事業者Aが試料紛失の可能性がある旨を認識し、県に電話で報告。
④ 令和3年1月6日
事業者Aが県に試料の紛失を書面で報告。県は調査結果が不十分であったことから、
改めて事実関係の調査や関係者へのヒアリングを指示。
⑤ 令和3年1月7日
県が源十郎新田事案地内の試料探索等を実施。
⑥ 令和3年1月8日
県が事業者Bの事務所および伊勢寺工場で試料探索等を実施。
⑦ 令和3年1月14日
県が事業者Bの大口処分場で試料探索等を実施。
⑧ 令和3年1月15日
事業者Aが確認した事実関係等について、県に状況報告書を提出。
(参考2)PCBの特性等
絶縁性、不燃性、化学的安定性などの特性により、トランス、コンデンサといった電気製品
や熱媒体等幅広い分野で使用されてきましたが、慢性的な摂取により体内に徐々に蓄積し、肝
障害、浮腫などさまざまな症状を引き起こすことから、昭和47年以降は製造が中止されてい
ます。なお、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法で令和9年3
月31日までに処分することが規定されており、処分までの間は適切に保管するよう定められ
ています。