顧客等が理不尽な要求等を行うカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)が社会問題化する中、多くの企業でその対策が進められ、県においても、カスタマーハラスメント防止条例(仮称)の策定に取り組むなど、労働者の尊厳を守るための環境づくりが進んでいます。
県職員においては、県民の皆さまからの意見や要望等に対しては、真摯かつ適切な対応に努める必要があります。その一方で、職員に対するカスハラに該当する行為は、職員の萎縮や精神的苦痛、業務の遅滞を招き、結果として本来行うべき業務への対応が充分行えなくなるおそれがあります。
県では、本年度、知事部局所属の職員に対し、令和5年度におけるカスハラの発生状況を把握するためのアンケート調査を実施しました。
1 県職員のカスハラの発生状況に関する職員アンケートについて
(1)アンケートにおけるカスハラの定義
アンケートにおいては、意見や要望とカスハラを区別するためカスハラを以下のとおり定義しました。
職員に対する暴行、脅迫など違法な行為又は県民等からの申出・要求のうち、次のいずれかの不当な
行為により、職員の勤務環境が害されるもの
①申出・要求内容に妥当性がないもの
過大な要求や不当な言いがかりなど、根拠とする事実関係や因果関係がないもの、県行政に関係が
ないものといった申出・要求内容に妥当性がないもの。
②申出・要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らし不相当なもの
申出・要求内容には妥当性があるが、手段・態様が執拗的・拘束的・威圧的・精神的な攻撃など、
社会通念上、不相当なもの。
(2)調査結果
・アンケート回答数:1,896件(回答率:47.9%)
・被害を受けた職員数:270名(被害を受けた職員の割合:約14%)
・被害件数(総数):330件
(3)カスハラの分類別件数
カスハラ被害を分類別に見ると、半数以上が「暴言」、「時間拘束型」(長時間の電話・居座り等)、
「過度な要求」(制度上対応できないことへの要求)、「リピート」(繰り返し電話や面会の要求)に
該当しました。また、約38%が「威嚇・脅迫」を受けている状況です。(表1)
(4)カスハラによる職員への影響
アンケートによると、カスハラを受けたことによる職員への影響として、半数以上が「怒りや不満、
不安などを感じた」、「業務が逼迫し、時間外勤務が生じた」、「業務のパフォーマンスが低下」といっ
た影響を受けており、過度な負担がかかっている状況であったと考えられます。また、約11%に「眠れ
なくなった」、約6%に「通院や服薬した」といった健康被害が発生しており、深刻な被害も生じてい
ます。(表2)
(5)カスハラへの対応としての希望
カスハラを受けた職員からのカスハラへの対応希望としては、「電話対応にかかる録音機能を導入して
ほしい」、「カスハラの基準など明確なルールを作ってほしい」といった対策を求める声が多くありまし
た。(表3)
2 今後の対応方針
アンケート結果を踏まえ、職員が取り組むべき職務に注力することで質の高い行政サービスを提供する
とともに、職員の過度な負担の軽減を図るため、カスハラ対策として次のようなことに取り組んでまいり
ます。
(1)対応マニュアルの整備
カスハラに対しては、組織として毅然とした対応を行う必要があります。
そのため、カスハラの定義の明確化やその判断、対応終了等を統一的に行えるよう対応マニュアルを
整備します。(令和7年度から運用開始)
(2)カスハラを受けない環境整備
カスハラへの対応策として、令和6年8月には、名札や座席表の表記を姓のみに改めました。
県ホームページに掲載していた職員名簿(令和6年8月より公開を見合わせています)については、
課長級以上の職員のみを表示するよう見直します。
また、紙の職員録についても、県庁のペーパーレス化推進の一環として、冊子の作成・販売を終了する
予定であり、これらについてもカスハラを受けない環境整備に資する取組としています。
あわせて、電話における通話録音機能の整備やその告知及び啓発用の掲示物等の作成・掲示など、カス
ハラを受けない環境整備に取り組みます。