本県のウメ(観賞用)において、ウメ輪紋ウイルスによるウメ輪紋病の発生が確認されましたので、特殊報として発表します。
このウイルスは果実からウメ、モモなどの植物へ感染することはありません。また、このウイルスは植物に感染するものであり、ヒトに感染しませんので、果実を食べても健康に影響はありません。
1 病害虫名:ウメ輪紋病
2 病原ウイルス:ウメ輪紋ウイルスPlum pox virus(以下PPVとする)
3 発生確認作物名:ウメ(観賞用)
4 発生確認地域:津市(旧久居市内)
5 発生確認の経過
平成25年5月30日、農産物安全課及び病害虫防除所が津市の観光園地において発生状況調査を実施したところ、本病の感染が疑われる観賞用ウメ2本を確認しました。直ちに葉を採取し、農林水産省名古屋植物防疫所において診断したところ、6月5日に本病であることが確認されました。
この結果を受け、6月8日に名古屋植物防疫所、農産物安全課及び病害虫防除所が、当該観光園地に植栽されているウメ550本、ハナモモ10本全てを調査した結果、さらにウメ2本で感染を確認しました。当該観光園地へはPPVに感染したウメ苗木を購入したことで持ち込まれたと思われますが、詳細な経路は不明であり、名古屋植物防疫所が調査中です。なお、感染が確認されたウメ4本は、隣接樹への拡大を防止するため、枝葉を全て切除、処分済みです。
6 これまでの県内での調査経過と国内での発生状況
平成21年以降、県内のウメ生産圃場、モモ生産圃場及びウメ観光園地において、本病の発生状況調査を名古屋植物防疫所と共同で実施してきましたが、これまで発生は確認されていませんでした。今回、県内で初めて発生が確認されたため、主要なウメ産地である津市、南伊勢町、紀州地域の生産圃場における発生状況調査を関係農業改良普及センター及び病害虫防除所が実施しましたが、PPVの感染が疑われるウメは確認されませんでした。生産圃場をはじめとする本病の発生状況調査は、今後も継続して実施する予定です。
国内では平成21年4月に東京都青梅市のウメで、初めて発生が確認されました。その後、神奈川県、茨城県、埼玉県、滋賀県、大阪府、奈良県、兵庫県、和歌山県で確認されています。
7 ウメでの病徴
葉に退緑斑紋(薄い緑色の部分ができる症状)や輪紋(薄い緑色のドーナツ状の模様ができる症状)などを生じます(図1,2)。また、花弁では薄赤色の斑(ふ)入り症状、果実では表面にややくぼんだ輪紋を生じることがあります。なお、品種や栽培条件によって、症状の様態、程度が異なります。
8 病原ウイルスPPVの特徴
寄主植物は、主にPrunus属の果樹(ウメ、アンズ、スモモ、モモ、ネクタリン、ユスラウメなどの核果類)、セイヨウマユミ、ナガバクコ、ヨウシュイボタなどです。
PPVはアブラムシ類によって媒介されます。感染した植物を吸汁してPPVを獲得したアブラムシ類が、健全な植物を吸汁することにより伝搬します。アブラムシ類が獲得したPPVは短時間のうちに活性が失われるため、媒介は非永続性です。また、接ぎ木によっても伝搬し、感染した苗や穂木の移動によって感染地域が拡大します。
種子伝染、花粉伝染及び生果実からの自然感染は知られていません。また、接触伝染、ハサミなどによる伝染も報告がありません。
9 防除対策及び注意事項
(1)本病はウイルス病であるため、感染した樹の治療法はありません。感染拡大を防ぐため、感染樹は伐採、抜根して、焼却または埋設処分する必要があります。
(2)媒介虫であるアブラムシ類の防除を徹底してください。
(3)アブラムシ類の発生源となりうる周辺の雑草防除を徹底してください。
(4)無病で健全な苗や穂木を使用してください。
(5)PPVに感染後、明瞭な病徴が現れるまでに3年程度を要することがあるので注意してください。
10 参考資料
「ウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス)の防除について」(農林水産省のホームページ)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/ppv/ppv.html
11 問い合わせ先
本病と思われる症状を確認した場合は、下記までご連絡ください。
三重県病害虫防除所 電話番号:0598-42-6365
三重県農林水産部農産物安全課 電話番号:059-224-2543
発生予察情報には、「発生予報」、「警報」、「注意報」、「特殊報」があります。「特殊報」は、下記のような場合に発表するものです。今回は(1)に該当します。
(1)県内で未発生であった有害動植物が新たに発見された場合
(2)重要な有害動植物の発生状況に特異な現象が見られた場合