本県のキヅタ属観葉植物において、アカアシカタゾウムシ属Trachycyrtus亜属の未記載種の発生が確認されましたので、特殊報として発表します。
1.病害虫名:アカアシカタゾウムシ属Trachycyrtus亜属の未記載種(Metapocyrtus(Trachycyrtus)sp.)
2.発生確認作物: キヅタ属観葉植物
3.発生確認地域: 北勢地域
4.発生確認の経過
平成22年6月、本県北勢地域のキヅタ属観葉植物の栽培施設内においてゾウムシによると考えられる被害が認められたとして、当該生産農家から桑名地域農業改良普及センターを経て農業研究所へ診断依頼がありました。農業研究所で室内飼育した結果、成虫はキヅタ属観葉植物の葉を食害し、幼虫は地下部を食害することが確認されました(図-1,2)。
農業研究所から独立行政法人農業環境技術研究所の吉武啓研究員に、このゾウムシの同定を依頼した結果、アカアシカタゾウムシ属の未記載種(新種)であることが判明しました(図-3,4)。本種は海外からの侵入害虫と思われますが、詳細な経路は不明です。
平成23年3月22日、農林水産省名古屋植物防疫所とともに、当該栽培施設の調査を実施した結果、栽培中のキヅタ属観葉植物ポット苗の地下部から、本種と考えられるゾウムシ科の幼虫を確認しました。このため、生産農家による被害株の除去、処分等による防除を徹底しました。平成23年7月12日、再度名古屋植物防疫所とともに、本種の発生を確認した施設の調査を実施した結果、本種の発生及び本種による被害は認められませんでした。なお、その後も当該施設及びその周辺での本種の発生は認められていません。
5.形態的特徴および生態
成虫は体長が5.5mm~7.0mm、体色は赤褐色から暗褐色、体形はひさご(ひょうたん)形で、前胸と上翅は光沢のある小顆粒を密に有し、まばらに微毛を装います。体背面はまばらに円形の金緑色鱗片を装い、金緑色鱗片は前胸と上翅で不明瞭な斑紋を形成します。上翅会合部は先4分の1で直立鱗毛に密に覆われます。雄の体は比較的細く、口吻は細長く、幅の約1.2倍の長さで、弱く先に広がっています。雌の体はより幅広く、口吻は両側平行で、長さと幅はほぼ等しい点が雄と異なります。
本種が含まれるアカアシカタゾウムシ属は、フィリピンを中心に200種以上が知られており、他にも相当数の未記載種が存在すると考えられています。アカアシカタゾウムシ属は、日本では唯一ヨナグニアカアシカタゾウムシが沖縄県に分布しています。
本種の成虫は飛翔能力がなく、歩行により移動します。食草をはじめ、その他の生態は明らかではありません。
発生予察情報には、「発生予報」、「警報」、「注意報」、「特殊報」があります。「特殊報」は、下記のような場合に発表するものです。今回は(1)に該当します。
(1)県内で新奇な有害動植物が発見された場合
(2)重要な有害動植物の発生状況に特異な現象が見られた場合