三重県の養殖漁業について
三重県は、真珠、貝類(カキ等)、魚類(マダイ、ブリ、マグロ、マハタ、ウナギ等)、藻類(黒ノリ、青ノリ、ワカメ等)など多種多様な水産物を生産する全国有数の「養殖生産県」です。
本県の海面養殖(令和2年)の生産額は149億円(海面生産額の41%)、生産量は19,972㌧(海面生産量の14%)となっており、地域の重要な産業となっています。
(1)真珠養殖業
明治26年に御木本幸吉氏がアコヤ貝を用いた半円真珠の生産に成功して以来、種々の養殖技術の革新により、英虞湾を中心に真珠養殖が発達し、現在では真珠の養殖生産者のほか、真珠の加工・流通・販売に係る事業者の集積地となっています。
また、平成30年の真珠養殖業の経営体数は254経営体と国内1位であり、国内真珠養殖生産量のうち1.7%しか生産されない希少な「厘珠(りんだま:5㎜未満の極小サイズの真珠)」は、ほぼすべてが本県において生産されています。
令和2年の真珠の生産額は16億円(国内3位)、生産量は2.2㌧(国内3位)です。
(2)貝類(カキ等)養殖業
大正14年に的矢湾で佐藤忠勇氏が養殖を開始、昭和初期から生産が本格化し、昭和28年には同氏が紫外線を利用したカキの浄化法を開発しました。また、県内生産量の多くを占める伊勢湾口の浦村地区では、昭和初期から養殖が始まり、昭和40年代に生産が増大しました。現在は、伊勢湾口(鳥羽)地域、的矢湾、五ヶ所湾、白石湖等で養殖が営まれています。
令和2年の本県のカキ養殖の生産額は11億円(国内8位)、生産量は2,405㌧(国内7位)です。
(3)魚類養殖業
昭和33年に県水産試験場(尾鷲分場)において、網イケスによるブリの養殖試験や技術講習会が開始されて以来、昭和30年代から40年代にかけて熊野灘沿岸域でブリ養殖が普及し、生産量が急速に増大しました。昭和50年代には、魚価の低迷などからブリ養殖からマダイ養殖への転換が進みました。
近年は養殖魚種の多様化が進んでおり、令和2年におけるマダイの生産額は25億円(国内4位)、生産量は3,538㌧(国内4位)、ブリの生産量は2,365㌧(国内10位)、クロマグロの生産量は1,212㌧(国内7位)、新魚種マハタの生産量は118㌧(国内1位)となっています。
内水面魚類養殖は、令和2年ではウナギ養殖の生産量が229トン(国内6位)と大半を占め、山間地ではアユや、アマゴの生産も行われています。
(4)藻類養殖業
本県の黒ノリ養殖は、慶応3年(江戸時代後期)に伊勢湾奥部の川越町でヒビ建て(竹や細木を沿岸域に設置する養殖法)が行われたのが最初とされており、その後、明治末期から大正期にかけて伊勢湾各地の沿岸域で養殖漁場(ヒビ建て)が拡大しました。
昭和20~30年代には県水産試験場(川越・伊勢湾分場)により、ノリ網を用いた養殖試験や技術普及が行われ、生産の効率化が進みました。昭和40年代には、浮き流し(ブイにノリ網を固定する養殖法)が本格化して沖合側にも漁場が拡大し、ノリ網の冷凍保存技術による二期作生産の普及と相まって、生産量は急激に増大しました。現在では、桑名から鳥羽にかけての伊勢湾で黒ノリ養殖が行われ、冬季の基幹漁業となっています。
また、伊勢湾南部・的矢湾・英虞湾・五ヶ所湾等では青ノリ養殖(標準和名はヒトエグサであるが、本県ではアオサという呼び名が一般的)が行われており、令和2年のノリ類(黒ノリ+青ノリ)の生産額は32億円(国内7位)、生産量は8,348㌧(国内8位)です。
このほか、伊勢湾口(鳥羽)地域ではワカメ養殖が営まれています。
課題
近年、養殖業を取り巻く環境は、
(1)海域の温暖化・貧栄養化などの漁場環境の変動、魚病・赤潮の発生によるへい死や生産性の悪化
(2)飼料価格等の上昇による生産コストの増大
(3)生産者の高齢化、減少等
の要因により厳しさを増すとともに、生産物の安全性の確保や、適切な品質管理が求められています。
取り組み
三重県では、平成11年に施行された持続的養殖生産確保法に基づき、漁業者自らによる適正な漁場管理を推進するとともに、安心・安全な水産物の提供、高水温化や貧栄養化など漁場環境の変動に適応する新しい養殖業の確立にむけて、以下の事業に取り組んでいます。
主な事業
(1)消費者に安心される養殖水産物の生産体制整備事業(H30~)
(2)気候変動に適応する強靭な新養殖事業(R4~R6)
(3)法人化に向けた魚類養殖業の構造改革促進事業(R3~R5)
(4)環境調和型真珠養殖システム構築事業(R2~R4)
(5)次世代型海藻養殖による豊かな伊勢湾再生事業(R2~R4)
※( )は実施予定年度
三重県農林水産部 水産振興課養殖振興班 TEL:059-224-2584 アドレス:suisan@pref.mie.jp |