「旧里や 臍の緒に泣 としの暮」
「としの暮」とは時期的に少し早いですが、松尾芭蕉がふるさとに帰った時に、亡き母親を想って詠んだ句とされています。
ふるさとも親も優しく有難いものです。本定例月会議も引き続きふるさと三重のために必要な議案を提出させていただいています。
では、当面の県政を取り巻く状況を申し上げたうえで、議案等の説明をいたします。
(国際情勢)
はじめに、国際情勢について申し上げます。
国際協力の重要性がますます高まる状況下において、アメリカではトランプ前大統領が新大統領に就任することとなりました。
トランプ大統領は、その言動により関税の引き上げ等による自国産業を最優先に捉える「アメリカファースト」な政策を行うことが想定され、三重県の主要産業である自動車産業や半導体産業に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
また、外交関係においても、アメリカが日本に対して防衛費の増額を求め、その影響で他の予算を削減するような状況を引き起こす懸念もあることから、今後起こりうる国際社会の変化に対応した施策展開を行う必要があります。
(国内情勢)
次に、国内情勢について申し上げます。
10月27日に行われました総選挙を経て、11月11日に第2次石破内閣が発足しました。石破総理は第1次内閣に引き続き、地方創生を積極的に進めようとする姿勢を示されており、非常に心強く感じています。
地方創生における最大の障壁は東京一極集中と人口減少であり、日本が国際競争に勝ち抜く為に東京に一定程度の資源を集中することは必要ですが、韓国の例を見るまでもなく、過度な集中は国にとって大きな脅威となります。
また、首都直下地震といった危機管理の観点からも危惧しており、三重県から全国知事会を通じて、人口減少対策を総括する司令塔組織の設置や、企業の本社機能を地方へ移転するよう促す税制の抜本的な改正を進めるよう国に提言したところです。
加えて、いわゆる「年収の壁」の見直しについても、労働力不足の状況下において多くの方が働きやすい環境を整える必要はあるものの、地方財政に影響がないよう政府の動きを注視し、国へ要望を伝えていく必要があります。
(フランス・ドイツミッション)
次に、10月19日から25日にかけて行いました、フランス・ドイツミッションについて申し上げます。
現地では、県産品の販路拡大やインバウンド誘客の推進に向けたプロモーション、県内投資の促進に向けた企業訪問等を実施しました。
県産品の販路拡大については、10月19日から23日まで世界最大規模の食品見本市「SIALパリ2024」に三重県ブースを出展するとともに、全国知事会と農林水産省等の共催で行われたイベントに出席し、三重県の日本酒や和菓子の魅力についてPRしました。三重県ブースには開催5日間で約4,000人がお越しになり、商談の機会が得られるなど具体的な成果を得ることができました。
また、22日にはフランスの大手企業の福利厚生旅行に強みを持つ現地旅行会社「ベルプラネット社」と三重県への送客に係る覚書を締結するとともに、こうした企業の福利厚生旅行担当者を対象に県産食材を使ったランチを提供し、三重県の観光の魅力をPRしました。
さらに、日本大使公邸において全国知事会が主催した観光プロモーションにも参画し、フランスの旅行会社やメディア等に対して、三重県の観光と食の魅力をPRしました。
これらの取組の中で、松阪牛や日本酒、伊勢茶などの提供や和菓子作りの実演、忍者パフォーマンスの披露を行い、いずれも好評を得て、三重県の魅力をPRする絶好の機会となりました。
23日にはドイツに移動し、ケミカル分野におけるグローバル企業「エボニックインダストリーズ社」を訪問しました。現在、四日市工場の敷地内に建設を進めている新プラントへの投資に感謝を伝えるとともに、今後のさらなる投資について働きかけを行いました。
短い滞在期間であったものの、今回のフランス・ドイツ訪問では、観光、物産、企業誘致等で多くの気づきやビジネスチャンスの手ごたえを得ることができました。
また、フランス語によるスピーチが現地の人に好評であることを確認できました。
本年1月から8月の外国人延べ宿泊者数は、日本全体を見るとコロナ禍前の令和元年同期の数を大きく上回っている状況です。
一方で、三重県は回復率が全国46位であるなど、戻りが大幅に遅れ、依然として厳しい状況が続いているため、三重県への来訪を促す取組を積極的に進める必要があります。今後は、この度の訪問で得た新たなネットワークや枠組みを活用しながら、三重県への観光誘客の推進や県産品の販路拡大、県内投資の促進を図っていきたいと考えています。
(大阪・関西万博)
次に、大阪・関西万博について申し上げます。
10月には昨年度に引き続き期間限定情報発信拠点「三重テラスin大阪」を阪急大阪梅田駅と新大阪駅に設置し、県産品販売や情報発信を行うなど、引き続き、万博の賑わいを三重県の賑わいに拡げる取組を進めます。
(全国豊かな海づくり大会)
次に、全国豊かな海づくり大会について申し上げます。
四大行幸啓の1つであり、来年三重県で開催する「第44回全国豊かな海づくり大会」の開催日が令和7年11月9日に決まりました。
11月4日に予定していた南伊勢町宿田曽漁港での1年前プレイベントは天候の影響により残念ながら中止となりましたが、11月10日には大分県で開催された「第43回全国豊かな海づくり大会」に参加し、大会旗の引継ぎを受けて参りました。両陛下からも来年は三重県とのお声がけをいただいたところであり、関連イベントも含めた開催準備を着実に進めていきます。
(沖縄「三重の塔」慰霊式)
次に、沖縄「三重の塔」慰霊式について申し上げます。
11月6日、沖縄県糸満市において、沖縄「三重の塔」戦没者慰霊式を執り行いました。慰霊式には昨年に引き続き、県議会議長をはじめ、県議会議員の皆様にも多数ご参列いただき感謝申し上げます。
「三重の塔」が建つ「摩文仁の丘」は、沖縄戦最後の戦闘の地であり、三重県出身の方も2千7百人以上の方が沖縄の地で亡くなられています。故郷である三重県で待つ家族の無事を案じつつ、鬼哭啾啾たる戦場で散華され、無念にも帰らぬ人となられた三重の先達の方々を思う時、深い悲しみが胸に迫り、地方行政府の指揮官として戦渦から県民を守る覚悟を改めて思い起こしました。
来年は戦後80年の節目の年であり、また、「三重の塔」においても建立から60年となります。今後も、学生をはじめ、より多くの方々にこの霊園に来ていただけるよう環境を整備し、次の世代に戦争の悲惨さと平和の尊さを継承していきます。
(防災・減災対策)
次に、防災・減災対策について申し上げます。
元日に発生した地震からの復興に取り組んでいた能登半島は、9月、豪雨による災害に見舞われました。
これを受け、復興道半ばに再び被災地となった輪島市へ、県・市町が連携して再度職員を派遣し、建物被害認定調査への支援を実施しています。
能登半島地震については、支援活動を通じて得た気づきを南海トラフ地震対策に生かすため、6月に作成した、「南海トラフ地震対策の強化に向けた取組方針」に復旧フェーズにおける気づきを追加した完成版を10月にとりまとめました。
今後、この方針に基づき、ドローンを活用した孤立地域への物資輸送に係る実証調査を実施するなど、取組の具体化を図るとともに、能登半島地震で明らかになった課題を踏まえた実働訓練を関係機関と連携して実施することで、災害対応力のさらなる強化を図ります。
また、11月12日には知事就任以来の課題であった外出時における避難に必要な情報の収集等に対応するため、県公式防災アプリ「みえ防災ナビ」の運用を開始しました。県民の皆様や県内への旅行者の方などが、地震発生時や風水害のおそれがある際に、適切な避難行動をとることができるよう、アプリの利用促進に取り組んでいきます。
道路などのインフラ整備については、一般国道42号新宮紀宝道路が12月7日に開通します。幹線道路の開通は、災害時におけるネットワークの確保のみならず、産業や観光を支える基盤でもあることから、引き続き、関係者の皆様と連携し、取組を進めていきます。
(人口減少対策)
次に、人口減少対策について申し上げます。
近年、女性の社会進出やジェンダー平等に対する意識が高まる一方で、三重県の経済分野におけるジェンダーギャップ指数は低い水準にとどまっており、これが人口減少や県内経済の成長を妨げる要因となる可能性があります。
ジェンダーギャップの解消に向けては、背景の分析を進めつつ、女性が働きやすい環境整備に向けて先進的に取り組んでいる県内企業への訪問や、ロールモデルとして活躍する女性交流会へ参加するなど、働く女性の声や取り巻く状況の把握に努めてきました。
また、県内企業のトップ層を対象としたワークショップの開催や、トップ・リーダー層自らが職場環境の改善に向けた宣言を行う取組のほか、10月からは、誰もが働きやすい職場づくりに取り組んだ企業に奨励金を支給する「三重県働き方改革推進奨励金」を新たにスタートするなど、企業風土や労働慣行の変革に向けた取組も進めているところです。今後も、働く方の声やニーズの把握に努め、エビデンスに基づいた対策を進めていきます。
社会減対策の1つである移住促進の取組は、人口減の抑制に留まらず、経済活動の活性化や地域の活力にもつながると考えます。移住された方の属性や傾向、ニーズを地域ごとに把握し、それぞれに効果的なプロモーションを実施するなど、取組を進めていきます。
(地域交通の維持・確保)
次に、地域交通の維持・確保について申し上げます。
本年7月22日からの2か月間、志摩市で日本版ライドシェアの実証事業が全国に先駆ける形で実施され、観光客を中心に162回の運行がありました。タクシー事業者による安全管理のもと、タクシーが減少する夜間の遅い時間帯を中心に補完し、利用者からも好評の声が聞かれたところです。
今後、運行の台数や時期などを見直したうえで、来年度も実証事業を行う方向で、関係者間で検討を進めます。
日本版ライドシェアについては、県内2例目として、伊勢市において12月5日から年末年始をはさみ来年の3月1日まで、実証事業が行われます。多くの方々が訪れる時期に、観光客や地域住民の移動需要に適切に対応できるよう、準備を行っていきます。
引き続き、地域における交通空白の解消に向けて、日本版ライドシェアのほか、県内29市町中、未だ9市町にとどまっている公共ライドシェアの導入などに取り組む市町への支援を強力に進めていきます。
(教育の推進)
次に、教育の推進について申し上げます。
令和5年度における、児童生徒のいじめ、不登校、暴力行為は、いずれも過去最多という結果になりました。
増加の要因として、学校側が積極的な認知を進めた結果という側面はあるものの、三重県として未来を担う児童・生徒が安心して学び、成長できる環境を提供する責任があります。
現在、教職員を対象とした、いじめ防止の実践的な研修や、不登校の児童・生徒に対する相談体制の充実に努めているところですが、夜間中学やフリースクール等の支援といった学びへの場づくりについての取組も進めていきます。
また、11月29日に予定している三重県総合教育会議では、いじめ対策を議題にすることとし、有識者の方々にも参加いただきながら、意見交換することを予定しており、さまざまな見地から、いじめ防止等の取組を一層進めていきます。
(文化・スポーツ)
次に、文化・スポーツについて申し上げます。
文化は民族や地域にとってのアイデンティティです。現在、総合博物館での村正などを展示した「刀剣」展、総合文化センターでの新日本フィルハーモニー交響楽団によるコンサートなど、県立文化施設で開館周年事業を行っており、コロナ禍以降、最も多くの方にご来館いただき、大変賑わいを見せています。
また、年明けには子どもたちが主役の「三重のこどもニューイヤーコンサート2025」を開催するなど、引き続き、子どもから大人まで、多くの県民の皆様に文化や芸術にふれ親しんでいただく取組を進めていきます。
スポーツの推進については、佐賀県で国民スポーツ大会および全国障害者スポーツ大会が開催され、多くの競技で三重県選手団は日々の努力や練習の成果を十分に発揮し、力の限り戦っていただきました。
三重県ゆかりの選手の活躍は、県民の誇りやスポーツの裾野の拡大につながります。引き続き、スポーツの推進に取り組みます。
(条例の検討)
次に、条例の検討について申し上げます。
社会の変化に伴う新たな課題への対応や、県民の権利を保護するため、三重県では条例の制定や改正を進めています。
「三重県子ども条例」の改正に向けては、中間案に対するパブリックコメントの結果も踏まえ、最終案に向けて検討を進めています。
「子どもを虐待から守る条例」の改正については、条例の対象範囲や子どもの権利擁護等に関する有識者等の意見も聞きながら中間案の策定に向けて検討を進めています。
「三重県性暴力の根絶をめざす条例」の制定については、有識者等で構成する検討懇話会をこれまで計2回開催し、論点整理や条例に盛り込む内容について議論しており、令和7年9月定例月会議への提出に向けて検討を進めています。
また、社会問題化するカスタマーハラスメントへの対策についても検討懇話会で議論を重ねており、実効性を担保するための罰則を盛り込んだ条例制定の可能性も検討したうえで、今年度中に防止対策を取りまとめます。
(議案等の概要)
引き続き、上程されました補正予算15件、条例案6件、その他議案14件合わせて35件の議案について、その概要を説明いたします。
議案第124号から第138号までの補正予算は、年度内に必要な対応のほか、年度内の執行見込みを踏まえた事業費の減額と、県税収入や繰越金等の歳入の増加に伴う財政調整基金の取り崩しの減額について、それぞれ補正を行うものです。
各会計の補正額は、一般会計で9億5,909万8千円を減額、特別会計で12億8,424万5千円を増額、企業会計で27億9,386万5千円を減額するものです。
まず、一般会計についてその概要を説明いたします。
歳入の主なものとして、県税については、法人二税及び地方消費税が増収となる見込みから、59億8,000万円を増額しています。
地方消費税清算金については14億7,700万円、地方交付税については1億7,645万1千円をそれぞれ減額しています。
国庫支出金については、生活基盤施設耐震化等交付金で6億6,679万4千円を減額するなど、合わせて21億8,709万3千円を減額しています。
繰越金については、令和5年度決算に伴い27億5,552万3千円を増額しています。
繰入金については、財政調整基金等で99億7,110万3千円を減額しています。
県債については、臨時財政対策債で3億5,200万円を減額するなど、合わせて3億9,000万円を減額しています。
歳出のうち主なものとして、出没が相次いでいるツキノワグマへの対策として、1,894万6千円を計上しています。
医師の労働時間短縮に向けた取組を実施する医療機関への支援として、2億942万2千円を計上するとともに、県内の病院で勤務する薬剤師の確保に向けた奨学金返還助成制度の創設を行い、これに伴う債務負担行為を設定いたします。
公共事業費について、東海環状自動車道の整備など直轄事業における国の内示額の増加等に対応するため、6,296万2千円を増額しています。
三重県における地方消費税の清算に伴い、他の都道府県へ支払う地方消費税清算金を増額するなど、税収関連交付金について、15億1,925万2千円を増額しています。
一般職の人件費では、時間外勤務手当等について実績見込みを踏まえて増額する一方で、職員の新陳代謝に伴い給与費全般を減額するため、合わせて1億357万3千円を減額しています。
令和5年度に受け入れた新型コロナウイルス感染症対策関連の国庫補助金と交付金等の不用額の返還として、13億2,330万6千円を計上しています。
次に、特別会計及び企業会計について説明いたします。
特別会計のうち主なものとして、県債管理特別会計では、県債の利率確定に伴う利子償還金の減額などにより15億1,551万円を減額、国民健康保険事業特別会計では、財政安定化基金への積立などにより、24億1,316万8千円を増額しています
企業会計では、水道事業会計で12億7,534万8千円、工業用水道事業会計で2億2,298万6千円、流域下水道事業会計で15億8,738万8千円をそれぞれ減額し、病院事業会計で2億9,185万7千円を増額しています。
なお、喫緊の課題である経済対策については、国の動向が徐々に報道されるようになってきましたが、それも踏まえつつ、県内の状況を把握し必要な補正予算について可及的速やかに編成するよう、指示しているところです。
以上で補正予算の説明を終わり、引き続き条例案等の諸議案について説明いたします。
議案第139号は、国の子育て支援対策臨時特例交付金を活用して行うことができる事業が新設されたことに鑑み、条例の有効期限等を延長するものです。
議案第140号及び議案第141号は、関係法令の一部改正等に鑑み、手数料についての規定を整備するものです。
議案第142号は、三重県福祉基金、三重県中小企業振興基金、三重県体育スポーツ振興基金、三重県環境保全基金及び三重県子ども基金の財源に充てるため、法人の県民税の法人税割に係る税率の特例措置の適用期限を延長するものです。
議案第143号は、県立中学校の設置に鑑み、当該中学校に勤務する職員の給与に関する規定を整備するものです。
議案第144号は、県立中学校の設置に鑑み、定義の規定を整備するものです。
議案第145号は、宝くじを発売することについて、令和7年度の発売総額など必要な事項を定めるものです。
議案第146号は、国営青蓮寺用水土地改良事業の負担金の償還に要する経費に充てるため、市町の負担金を徴収しようとするものです。
議案第147号から第150号までは、工事請負契約等を締結又は変更をしようとするものです。
議案第151号から第155号までは、損害賠償の額を決定し、和解をしようとするものです。
議案第156号から第158号までは、公の施設の指定管理者を指定しようとするものです。
以上で諸議案の説明を終わり、次に報告事項について説明いたします。
報告第23号から第25号までは、議会の委任による専決処分をしましたので、報告するものです。
報告第26号は、議会の議決すべき事件以外の契約等について、条例に基づき、報告するものです。
以上をもちまして提案の説明を終わります。
なにとぞ、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。