三重県教育委員会では、三重県の教育改革に関する重要事項について審議し、今後の施策に生かしていくため、令和2年度第1回三重県教育改革推進会議を開催しました。会議の概要は以下のとおりでした。
1 日時 令和2年8月19日(水曜日)14時00分から16時00分まで
2 場所 教育委員室(三重県庁7階)
3 出席者 三重県教育改革推進会議委員9名(3名欠席)
4 概要 「新たな時代における本県の高校教育のあり方」及び「不登校児童生徒への支援」について審議を行いました。
5 主な意見
①「新たな時代における本県の高校教育のあり方」について
・ 新型コロナウイルス感染症の影響により、地域の優位性が高まることを想定して検討することが必要ではないか。
・ 国が進めている今後の普通科の在り方の方向性については理解できる。専門高校の在り方については、サービスの提供者は最終消費者であるということを念頭に置くと、農業、工業といった枠組みを越えて協働する取組が大切になってくる。学校間連携にあたっては、国が本格運用を目指すSINET(サイネット)が導入されることにより、ICTを活用した学びの連携をストレスなく進めることができる。まずは、専門高校を優先してモデルケースをつくってみてはどうか。
・ コミュニティ・スクールの導入は学校運営にも関わる業務もあることから、学校支援地域本部事業よりもハードルが高い。高校で導入する際には、両者の住み分けを明確にすることが大切である。また、高校は、「地域」が広域となるので複数の中学校区を「地域」として、学校支援地域本部事業やコミュニティ・スクールの導入を進めてはどうか。その際、高校でも、すでに地域と連携している中学校との連携を進めるとよいのではないか。
・ 小学生を対象にオンライン学習について調査したところ、自立的に学習に取り組める児童にとっては効果的だが、そのような学習習慣が確立していない児童にとっては、オンラインによる学習は難しいという結果が出たことから、高校での推進にあたってはこういった生徒への対策が必要である。
別の調査では、勉強が好きではないと回答した生徒は将来の目標を持ちにくいという傾向が見られたことから、こういった生徒に将来の目標を考えさせることが大切である。その際、「クラスに愛着を持っていること」「保護者の働きかけ」が将来の目標の明確化に繋がるという結果が参考となる。
・ 将来の目標を明確にするためには、生徒同士の学び合いや職場体験などの積み重ねが大切であることから、ICTの活用も進めつつ、学校で集う状況での学びも大切にする必要がある。
・ 人との関わりが苦手な生徒は、対話型の授業は苦手で、逆に、コロナ禍で進展したオンライン学習を好む生徒もいる。今後は、自分に応じたスタイルの授業を選択できるようにすることも必要である。
また、コロナ禍の影響で、対人関係の構築の機会が乏しくなったことから、例年以上に新高校1年生の不登校生徒が増えたと実感している。
・ 県南部においては、通える範囲にある県立高校が限られているため、学校の選択の幅が極端に少ない。小規模化が進む中、地域の高校の存続について心配している。
・ 高校に入学することが目標となっており、そのため入試が終われば勉強への意欲を失ってしまう生徒もいるため、将来の目標をより明確に持てるよう、高校に入る前に職場体験などの経験をすることが、高校入学後の学習意欲の向上につながるのではないか。
・ 地域においては、看護・介護人材が不可欠であるが、大都市圏の高齢化に伴い、賃金の高い都市部への流出が進むことが想定される。南部地域の生徒が通学することができる高校に看護・介護等の専攻科があれば、地域に必要な人材の確保に繋がる。
・ それぞれの地域でどのような教育を行い、そのためにどのような学校づくりが求められているのかを示すことにより、任された校長も5年先・10年先の展望を持ちながら学校経営に取り組めるのではないか。
・ 県立高等学校の未来像を検討するため新たに設置する調査検討委員会(みらい委員会)については、次期県立高等学校活性化計画の策定に関わるものなので、委員には県立学校長の代表も含まれるべきである。
※ 小林会長の提案により、教育改革推進会議とみらい委員会との兼務は、人口減少社会の教育にも見識の深い荻原委員に入っていただくことを全会一致で了承。
②「不登校児童生徒への支援」について
・ 以前は不登校を「登校拒否」として何とか学校に戻そうと取り組んできたという経緯があるが、現在は、教育ビジョンにも書かれているように、学校復帰を前提とすることなく社会的自立をめざすという支援の仕方に変わっている。不登校支援ネットワークを拡げるなど、学校だけでなく、周囲の大人が一丸となって不登校児童生徒の社会的自立を支援していかなければならない。
・ 学校に行かなくなるという「現象」を目の当たりにして、周りの大人は子どもが不登校の状態であるということに気付くが、その背景にはその子が育ってきた状況や環境といった不登校に至るまでの「原因」がある。不登校状態を生まないようにしていくためには、いかに「原因」に目を向け、周囲が気付いていけるかが重要である。
・ 中学校まで不登校の傾向にあった子どもが高校には普通に登校できるというケース、また、その逆のケースもある。例えば、対話的な授業が苦手でクラスの雰囲気に入っていけない生徒もいるなど、不登校の「原因」について考えるにあたっては、その子が育ってきた環境等だけでなく高校のカリキュラムやシステムにも目を向ける必要があると感じている。
・ 新型コロナウイルス感染症対策の中で、ICTを活用した学びが進んだことは、不登校児童生徒の学力保障、個別最適化の学びにとってもよいことである。