人と動物の共通感染症
人と動物の共通感染症とは?
動物から人、人から動物にうつる感染症を言い、「人獣共通感染症」「動物由来感染症」「ズーノーシス」などと言った言葉も同様の意味です。
この感染症には、多くの種類があり、人も動物も重症になるもの、動物は無症状で人が重症になるもの、その逆で人は軽症でも動物は重症になるものなど、病原体によって感染後の結果はさまざまです。
人と動物の共通感染症の伝播様式(拡がり方)
感染症がうつることを「伝播」と言いますが、人と動物の共通感染症において伝播とは病原体が動物から人にうつってくる経過をあらわします。病原体により伝播様式はさまざまですが、次にあげる4つがその代表的なものです。
直接伝播
咬み傷や引っ掻き傷から病原体が体内に侵入する典型的なもの。
口の周囲や傷口をなめられてうつる場合、動物の咳やくしゃみを直接受けた場合、動物の体についている病原体がうつるものなども原因となります。
小さな子供では、動物に触れた後や糞尿に触れ汚染された手を口に持っていくことで感染することも考えられます。
環境媒介
病原体により汚染された水や土壌からうつる場合もあります。他にも排泄された糞尿などが乾燥し、風で舞い上がって空気を吸い込むことでうつるものもあります。
ベクター媒介
ノミ、ダニ、カ、シラミなどが感染している動物から人へと吸血などによって病原体を運ぶことがあります。これらの外部寄生動物をベクターと呼びます。病原体はベクターにより機械的に運ばれる場合とベクター体内で成熟増殖する場合があります。
動物性食品など
家畜や魚介類が病原体を持っている場合、それらに熱を加えずに食べたりすることで伝播することもあります。
人と動物の共通感染症の予防法~人からみた予防法~
手洗い・うがいをしましょう!
動物をさわった後、糞尿の始末など世話をした後、その他動物を飼っている環境に接した後や食事の前には必ずせっけんで手を洗いうがいをしましょう。
動物との濃厚な接触はやめましょう!
口移しでえさを与えたり、抱いて一緒に寝たりするなど、濃厚な接し方は避けましょう。ある程度の節度を持って動物と接することが大切です。
自分の具合が悪いと感じたら、早めに医療機関を受診しましょう!
受診の際に、ペットを飼っていることを必ず医師に伝え、その飼育方法や接触歴についても伝えましょう。
人と動物の共通感染症の予防~動物からみた予防法~
動物の周辺を清潔にしましょう!
動物を飼っている場所のお掃除や整理をこまめに行い、いつも清潔にしましょう。
●犬や猫の排泄は、小さいころから決まった場所で行うようにしつけましょう。
この際は、キッチンからある程度離れた場所が理想的です。犬の散歩中にしたフンは必ず持ち
帰ってあげてください。
●鳥かごは、定期的に日光や熱湯で消毒するようにしましょう。
水浴びを好む小鳥には、水浴び用の水を毎日用意してあげてください。
●野鳥、他の犬や猫、ねずみなどとの接触をできるだけ避けましょう。
●衛生害虫(ノミ、ダニ、ハエ、ゴキブリ)の駆除も行いましょう。
●ブラッシングやシャンプーなどは、健康状態の把握にも大変有効です。状態に注意して定期的
に行いましょう。
動物の体調に注意しましょう!
動物たちは人と動物の共通感染症にかかったとしても、明確な症状を現さないこともあります。元気がない、ご飯を食べないと言ったふだんと違った様子ではないか、日頃のチェックが動物の命を助けます。
特に、幼い動物や成体であっても飼い始めたばかりの頃は、念入りに観察してあげましょう。
●元気、食欲はあるか?咳、くしゃみはしていないか?
●鳴き声や呼吸はいつもと変わらないか?
●目の輝きや、目やに、鼻水などは出ていないか?
●排泄物の状態は変わりないか?
●体毛や羽のつやは良いか?逆立ちや抜け毛はないか?
動物たちの食餌にも気配りを!
餌入れなどは、いつも清潔に保ち、新しい餌と水を充分に与えましょう。
犬や猫に餌を与える場所はいつも同じ場所にして、余った餌はなるべく早く片付けてあげましょう。
動物の様子がいつもと違うと思ったら病院へ
動物が病気になったら、すぐに動物病院で診察、治療を行いましょう。
病気にかかり弱った動物たちには、多くの病原体が忍びよって来て、合併症を起こす恐れがあります。様子がおかしいと感じたら早期の対処が大切です。
また、定期的な健康診断により、日頃より病気を予防することも大切です。
予防接種や駆虫薬については、獣医師に相談して適切な時期に接種しましょう。飼っている動物についてすぐに相談できるかかりつけの動物病院をもつことも重要です。
主な人と動物の共通感染症
病原体 | 病名 | 関係する主な動物 | 動物の主な症状 | 主な感染経路 | 人の主な症状 | 予防 |
---|---|---|---|---|---|---|
ウイルス | 狂犬病 | 犬・猫・アライグマ・キツネ・スカンク・コウモリ | 狂躁又は麻痺、昏睡して死亡 | 感染した動物に咬まれる | 神経症状、発症した場合、昏睡死亡 | ワクチン接種 |
ウイルス | 重症熱性血小板減少症症候群(SFTS) | 猫・犬・野生動物 | 多くは無症状、発熱、消化器症状 | 感染動物の尿・体液に接触 | 発熱、消化器症状 | 過剰な接触を避ける・手洗い・マダニ駆除 |
ウイルス | Bウイルス病 | マカク属サル(アカゲザル、二ホンザルなど) | 多くは無症状 | かみ傷、ひっかき傷、尿・体液に接触 | 水泡性病変、神経症状 | 防護具の着用、汚染されたものにふれない |
リケッチア | Q熱 | 猫・野生動物・家畜・犬 | 多くは無症状 | ふん・尿・獣皮などから経気道感染 | インフルエンザ様症状など | 過剰な接触を避ける |
クラミジア | オウム病 | 鳥類 | 下痢、元気消失 | ふん中の病原体の吸入 | 風邪に似た症状 | 過剰な接触を避ける |
細菌 | レプトスピラ症 | 犬・牛・げっ歯類・野生動物 | 腎炎 | 感染動物の尿に接触 | 発熱、肝臓や腎臓の障害 | 汚染されたものにふれない |
細菌 | パスツレラ症 | 犬・猫 | 多くは無症状 | かみ傷、引っかき傷による | 傷口が腫れて痛む | 過剰な接触を避ける |
細菌 | カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症 | 犬・猫 | 多くは無症状 | かみ傷、引っかき傷による | 発熱、腹痛、吐き気、頭痛など | 過剰な接触を避ける |
細菌 | 猫ひっかき病 | 猫(特に子猫) | 多くは無症状 | かみ傷、引っかき傷による | リンパ節が腫れる | 手洗い・ノミ駆除 |
細菌 | サルモネラ症 | 犬・猫・サル・ウサギ・げっ歯類・鳥類・爬虫類 | 多くは無症状 | かみ傷、引っかき傷による | 胃腸炎、敗血症 | 手洗い・ノミ駆除 |
細菌 | イヌブルセラ症 | 犬 | 多くは無症状、流死産 | 流産時の汚物などからの接触感染 | 多くは無症状、風邪に似た症状 | 汚染されたものにふれない |
細菌 | 仮性結核 | 豚・犬・猫・サル・タヌキ・げっ歯類・鳥類 | 多くは無症状 | かみ傷、引っかき傷による | 胃腸炎、虫垂炎 | 生水を飲まない |
細菌 | 細菌性赤痢 | サル(特に輸入されたもの) | 発熱、下痢、急性大腸炎 | ふん中の菌が口の中へ入る | 発熱、下痢、急性大腸炎 | サルの下痢に注意 |
真菌 | クリプトコックス症 | ハト・猫 | 無症状、(猫で呼吸器症状、神経症状もあり) | 経気道感染 | 発熱、胸痛、中枢神経症状、死亡 | 免疫力の低下している人はハトに近づかない |
真菌 | 皮膚糸状菌症 | 犬・猫・牛・ウサギ・げっ歯類 | 脱毛、フケ | 感染した動物との濃厚な接触 | 脱毛等の皮膚障害、かゆみを伴う | 感染動物と接触しない |
寄生虫 | トキソプラズマ症 | ネコ科動物(犬や他の動物にも感染するが、人の感染源として重要なものは猫) | 猫で肺炎・脳炎、犬で下痢 | ふん中の病原体が口の中へ入る | 流産、胎児に先天性障害 | 生肉の取扱に注意 |
寄生虫 | 回虫幼虫移行症 | 犬・猫 | 食欲不振、下痢、嘔吐 | ふん中の病原体が口の中へ入る | 幼児で肝臓、脳、目等に障害 | 手洗い |
寄生虫 | エキノコックス症 ※県内感染状況調査結果 |
キツネ・犬・げっ歯類 | 多くは無症状 | ふん中の病原体が口の中へ入る | 肝機能障害 | 流行地ではキツネ等への接触を避ける |
寄生虫 | かいせん | 犬・猫 | 皮膚の強いかゆみ、脱毛 | 感染した動物との濃厚な接触 | 皮膚の強いかゆみ、脱毛 | 感染動物と接触しない |
(関連リンク)
・動物由来感染症(厚生労働省ホームページ)
・国立感染症研究所