入浴施設のレジオネラ症予防対策
近年、多数の人が利用する入浴施設を感染源とするレジオネラ症注が、全国で発生しています。中高年に多く抵抗力が弱い人ほど感染しやすいため、高齢者などが利用する入浴設備では特に注意が必要です。
適切な管理がされていない入浴設備の浴槽水は、レジオネラ症の原因となることがありますので、施設管理者は常に適切な維持管理を行い、施設を衛生的に保つ必要があります。
そこで、レジオネラ症予防対策のための衛生管理のポイントを説明します。
レジオネラ症とは、レジオネラ属菌という細菌が原因で起こる感染症で、この菌を含んだ細かい水滴などを吸い込んで肺まで達することにより感染します。 急激に重症化し死亡する場合もあるレジオネラ肺炎と、インフルエンザのような症状を示し数日で自然に治るポンティアック熱とに分けられます。 人から人へは感染しません。 レジオネラ属菌は、もともと、土壌や水環境に普通に存在する菌ですが、生育しすい環境にある入浴施設での発生があります。 |
浴槽やシャワーが循環型かを確認する
入浴設備は、循環型と入れ換え型の大きく2つに分類されます。
それぞれの特徴を理解し、レジオネラ症の予防対策をとる必要があります。
まずは、あなたの施設の設備がどちらに該当するかを確認しましょう。
循環型(機械)浴槽がある場合
循環型(機械)浴槽は、付属設備であるろ過器、加温装置などへ浴槽水を送るため、配管が長くなり、配管の
内壁等にレジオネラ属菌などの細菌類が付着しやすい構造となっています。
特にろ過器内部は、細菌の増殖により生物膜(ぬるぬるした薄い膜)が形成されレジオネラ属菌が生育しやすいため、維持管理上最も注意が必要です。
循環型一般浴槽の構造例
浴槽の水は毎日、交換する
使用状況などにより、毎日、交換できない場合でも、最低限、週一回以上は完全に入れ換えることが必要です。また、浴槽水は、常に満杯状態にして浮遊物の除去のためあふれさせてください。
レジオネラ属菌の水質検査は年1回以上実施する
毎日、浴槽水を換えることなく使用している場合は年2回以上実施してください。- レジオネラ属菌の基準:公衆浴場や旅館などの浴槽の湯から、検出されないこと
浴槽水の遊離残留塩素濃度は、0.2~0.4mg/Lを保つ
浴槽水は、殺菌のため、常に0.2~0.4mg/Lに保ち、最大でも1.0mg/Lを超えないように努めることが必要です。入浴前及び入浴中に遊離残留塩素濃度を測定して記録しましょう。
ろ過器を設置している浴槽では、塩素系薬剤をろ過器の直前に注入又は投入することで、ろ過器内の生物膜の生成を抑制することができます。
集毛器は毎日清掃し、ろ過器は週1回以上逆洗浄を行う
ろ過器の前に設置する集毛器は、毎日清掃することが必要です。また、週1回以上、ろ過器は逆洗浄などにより、ろ過器及び浴槽水が循環する配管内は高濃度塩素消毒(5~10 mg/L)などにより、付着する生物膜等を除去してください。洗浄消毒で特殊な薬品や器械を使用する場合は専門業者に相談しましょう。
毎日水を換えない場合には、気泡発生装置等は使用しない
毎日、完全に浴槽水を入れ換えることなく使用している場合は、気泡発生装置やジェット噴射装置、打たせ湯等エアロゾルを発生させる設備を用いないでください。貯湯槽内温度60℃以上、給湯栓温度55℃以上に保つ
循環給湯設備によるシャワー水は、殺菌のため、貯湯槽内の湯温を60℃以上、末端の給湯栓を55℃以上に保つことが必要です。規定の温度を確保できない場合には、末端の給湯栓で、遊離残留塩素濃度を常に0.1mg/L以上に確保してください。入浴施設の衛生管理責任者を決める
施設の管理者または従業者の中から日常の衛生管理を行う責任者を定め、施設設備の構造を適切に把握し、保守点検や清掃など衛生管理を怠ることのないようにしてください。そして、自主管理点検記録を残しましょう。レジオネラ症患者が発生した場合は保健所に連絡する
施設内で、レジオネラ症と疑われる患者さんが発生した場合は、原因と考えられる設備の使用を直ちに停止し、その現状を保持したまま、保健所に連絡してください。また、独自の判断で浴槽内等への消毒剤の投入を行わないでください。参考になる資料
- 三重県感染症情報センター http://www.kenkou.pref.mie.jp/topics.htm
- 「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(平成15 年7月25 日厚生労働省告示第264 号)」厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/