第2章 Ⅱ 基本方針2 林業の持続的発展
このため、森林資源の循環利用を促進することは、森林の多面的機能の発揮につながることから、これを支える林業の持続的発展を図ります。
【数値目標の達成状況】
指標 |
実 績 |
目 標 |
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H20年度 |
H22年度 |
H27年度 |
H37年度 |
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(2008) |
(2010) |
(2015) |
(2025) |
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県産材(スギ・ヒノキ)素材生産量 |
291千 |
324千 |
328千 |
345千 |
※実績値は、暦年の数値です。また、H22年は、県民しあわせプラン第二次戦略計画の目標値です。
1 林業及び木材産業等の振興
林業及び木材産業等を活性化するため、生産から流通・加工に至る連携を強化するとともに、森林施業の効率化、基盤整備等による生産性の向上をはかります。
(1) 森林施業の団地化・共同化の促進
零細分散化している森林所有者の森林整備や木材生産を進めるため、森林組合などの林業事業体を中心として森林を適正に管理し、作業の団地化・共同化による採算性の向上をはかるとともに、流通・加工と連携した計画的な木材供給を進める仕組づくりに取り組んでいます。
平成20年度は、地域林業推進体制整備事業により、県内各地域の森林組合が中心となり、地域リーダーを活用しながら団地化を推進しました。
その結果、4森林組合で7団地(676ha)を設定し、提案型施業により 66haの利用間伐を実施し、5,380m3の間伐材の搬出を行いました。
【団地設定及び利用間伐の実施状況】
森林組合名 |
団地数 |
団地面積(ha) |
間伐面積(ha) |
搬出材積(m3) |
中勢 |
2 |
385 |
34 |
2,818 |
松阪飯南 |
2 |
130 |
25 |
2,187 |
大紀 |
2 |
123 |
7 |
375 |
尾鷲 |
1 |
38 |
0 |
0 |
計 |
7 |
676 |
66 |
5,380 |
(2) 林業の生産基盤整備の促進
森林施業が効率的に実施できるよう、自然環境に配慮し、地形や施業形態に応じた林道や作業道等の計画的な整備を進めています。
また、伐採・搬出作業の効率化や安全性の向上をはかるため、高性能林業機械の導入や現場条件にあった低コスト作業システムの普及を進めています。
平成20年度は、林道事業により、林道開設 16路線 26工区、改良4路線4工区、舗装6路線6工区他、激災復旧5路線を実施するとともに、林道災害復旧事業により、平成20年災害で被災した26箇所の復旧を行いました。
また間伐対策事業により、低コスト林業確立のための路網開設と高性能林業機械の導入を進めており、平成20年度は、作業路3路線の開設と、高性能林業機械等5台を導入しました。
【林道開設】 |
【災害復旧状況】 |
|
木屋村山線(南伊勢町) |
口窄線(尾鷲市)被災状況 |
復旧完了 |
【高性能林業機械】 |
【林業機械】 |
|
プロセッサとフォワーダ |
プロセッサ |
グラップル付トラック |
(3) 木材の流通・加工・供給体制整備の促進
木材の加工コストの低減、流通の合理化、製品の規格化等による県産材の安定供給システムづくりを進め、競争力のある良質な木材を市場に供給し、県産材の需要の拡大をはかっています。
平成20年度は、木質バイオマスを有効に利用するため、木質バイオマスボイラー施設や木材乾燥施設の整備に助成しました。
また、大口ロット協定取引による流通加工体制を確保することで、コスト削減をはかり、山元への増加させる「新生産システム」の取組を進めるため、木材加工処理施設の整備に助成しました。
(4) 特用林産の振興
安全で安心な県産きのこや木炭などの特用林産物を供給するため、生産体制の整備を促進するとともに、消費者ニーズや市場動向などの必要な情報を生産者に提供しています。また、きのこの生産や利用に関する研究を進めています。
平成20年度は、国産しいたけの需要の増加に対応するため、県内2箇所において菌床しいたけ生産施設の増設に対し助成しました。
また、生産者の交流会や食の安全・安心に関する研修会を開催するとともに、県産特用林産物を消費者に紹介するイベント等を開催し、三重県の特用林産物のPRを行いました。
きのこの食の安全・安心研修 |
県産きのこ普及イベント |
また、林業研究所では、三重のハタケシメジの生産力向上をはかるため、平成20年度は、野生菌株を交配して選抜した菌株LD96-4⑦の品種登録に向け、栽培試験を行いました。
また、ヒラタケについても、林業研究所で選抜し、子実体が大型で日持ちの良い菌株について、野外及び簡易施設における発生試験を行い、培養期間と発生量の関係を調査し、4ヶ月以上の培養で発生が良好なことを確認しました。オオイチョウタケの簡易施設を用いた自然栽培において、林地栽培同様5年以上の継続発生が可能なことを明らかにしました。
ハタケシメジ交配株(ビン栽培) |
簡易施設利用によるヒラタケ栽培 |
簡易施設利用によるオオイチョウ |
(5) 効率的な木材生産のための研究
林業の生産性の向上をはかるため、森林施業の省力化、効率化に関する研究に取り組んでいます。
林業研究所では、平成18年度から 3カ年の計画で、間伐の省力化を目的の一つにして「巻き枯らし間伐」の効率性と、間伐木が病虫害の発生源となる危険性について研究を行いましたその結果、巻き枯らしたスギ、ヒノキから多様な昆虫類が発生しましたが、深刻な被害をもたらす林業害虫はほとんど含まれず、この施業の害虫発生リスクは低いことがわかりました。
また、平成19年度から高齢人工林の森林管理技術を確立するための研究を開始し、平成20年度には県内高齢人工林の成長特性を解明しました。
巻き枯らし |
高齢人工林での調査 |
2 担い手の育成及び確保
将来にわたり適切な森林の整備が行えるよう、森林づくりの担い手の確保や林業事業体等の育成強化をはかります。
(1) 林業の担い手の育成・確保
新たな担い手を確保するため、森林・林業の就業等に関する情報提供や普及啓発などを行うとともに、新規就業者の定着率の向上や人材の育成をはかるため、職場環境や雇用条件の改善、林業労働災害の防止、技術向上研修への参加などを進めています。
平成20年度は、高校生職場体験学習(20名)を実施するとともに、(財)三重県農林水産支援センターと連携して新規就業者セミナーや作業士研修(52日間)を実施し、10名の研修生が林業に必要な技能・資格を習得しました。また、43名(40歳未満は29名)が林業に新規就業しました。
林業労働災害防止のため、作業現場への巡回指導や安全衛生指導員研修会を開催し、事故防止の啓発を行いました。
なお、平成20年の休業4日以上の死傷者数は82名で、平成19年に比較して10名増加し、うち死亡者は3名となっています。
【新規林業就業者数の推移】 |
【林業労働災害の状況】 | ||||
区分 |
人数 |
|
区分 |
被災者数 |
うち志望 |
平成16年度 |
40 |
|
平成16年度 |
100 |
1 |
平成17年度 |
23 |
|
平成17年度 |
103 |
1 |
平成18年度 |
29 |
|
平成18年度 |
84 |
2 |
平成19年度 |
33 |
|
平成19年度 |
72 |
2 |
平成20年度 |
43 |
|
平成20年度 |
82 |
3 |
高校生職場体験学習 |
就業・就職フェア |
林業作業士研修 |
(2) 林業経営体、林業事業体の育成・強化
地域林業の中核的担い手となる林業経営体や林業事業体を育成するため、経営支援や機械化の促進などにより経営改善や林業生産の効率化を進めています。
平成20年度は、森林組合に対し森林育成促進資金の貸付を行いました。
平成20年度末現在、認定林業経営体は、9経営体、7,352haが認定されています。また、認定林業事業体は、平成20年度に6事業体が更新し、新規に1事業体が認定されたことから、50の事業体が認定されています。
(3) 山村地域の生活環境の整備
山村地域における生活環境を向上して担い手の定住を促進するため、林道整備や治山事業等により安全で快適な生活環境の確保をはかっています。
平成20年度は、林道舗装2路線、林道改良2路線、防火水槽2基を整備するとともに、集落周辺において山地災害防止に必要な施設や森林の整備を実施しました。
【林道改良】 |
【防火水槽】 |
西出管合線(大紀町) |
有馬町内(熊野市) |
3 県産材の利用の促進
県産材の利用は「緑の循環」を通した森林整備の促進につながることから、住宅建築や公共事業等への積極的な利用を進めます。
(1) 県産材利用に関する県民理解の促進
県産材の利用を促進するため、環境や健康面での木材の特性や三重の森林づくりにおける県産材利用の意義について、広く普及啓発を行い県民の理解の促進と意識の高揚をはかっています。
平成20年度は、県産材を使う運動を推進するため、10月4日(土)にメッセウイングみえで開催された「三重の森林(もり)と木づかいフェア」で「三重の木」ベンチ大賞を行うとともに、熊野古道センター等で入賞作品を展示し、県民への普及啓発を行いました。
「三重の木」ベンチ大賞 |
熊野古道センターでの展示の様子 |
(2) 信頼される県産材の供給の促進
県産材「三重の木」認証制度の普及などにより、品質の確かな県産材の供給を進めています。
平成20年度は、認証製材工場 120社により 8,740?の「三重の木」認証材を供給するとともに、「三重の木」認証材を使用した木造住宅 300戸に補助金を交付しました。
【「三重の木」出荷量】
年 度 |
平成17年度 |
平成18年度 |
平成19年度 |
平成20年度 |
出荷量(m3) |
4,290 |
5,137 |
8,416 |
8,740 |
【「三重の木」を使った住宅建設】
(3) 木造住宅の建設の促進
県産材を利用した家づくりが進められるよう、木材関連業者と工務店、建築士等との連携による住宅相談窓口の設置などの取組を進めています。
平成20年度は、イベント、住宅フェア、雑誌等において、県産材及び「三重の木」認証材の良さを消費者に広くPRしました。また、住宅の着工から完成までの様子をホームページで紹介するとともに、構造見学会や完成見学会の開催を支援するなど、「三重の木」認証材を利用した家づくりの普及に取り組みました。
木組みモデルの展示・説明 |
「三重の木」住宅相談 |
(4) 公共施設等の木造・木質化の推進
県産材の利用拡大をはかるため、県有施設の木造・木質化を積極的に進めるとともに、国、市町等が整備する公共施設や民間施設等の木造・木質化を働きかけています。
平成20年度は、県立高校の武道場やトレーニング場、警察の駐在所を中心に計11箇所の県有施設において県産材を利用し、市町等が整備する保育所や学校施設、集会所等を中心に計19箇所において県産材を利用しました。
城東中学校(伊賀市) |
三瀬谷保育園(大台町) |
南小学校(松阪市) |
(5) 間伐材等の利用の促進
県が実施する公共工事等で間伐材の利用を積極的に進めるとともに、国、市町が実施する公共事業への間伐材利用を働きかけています。また、森林づくりや製材過程で発生する残材等の未利用資源の有効活用を図るため、木質バイオマスエネルギーなど新たな利活用を進めています。
平成20年度は、県の公共土木工事において間伐材の利用促進を進め、治山施設、林道で 2,172?の間伐材を使用しました。
また、松阪市において木質建築廃材や林地残材を燃料とする木質バイオマスボイラー施設が完成し、近隣の製油工場へ熱供給を開始しました。この施設により年間約23,000tの二酸化炭素が削減され、地球温暖化防止に貢献するだけでなく、林地残材など未利用材の新たな需要先として期待されています。
なお、松阪市では、平成18年度から市内の全小学校を対象に県リサイクル認定製品に登録された間伐材製の学童用机・椅子の導入を進めています。
【公共工事等の利用事例】
落石防護壁工(熊野市) |
木柵工(菰野町) |
木製カーブ、柵工(紀北町) |
工事用看板 |
工事用バリケード |
学習机・椅子 |
【間伐材等の木材を使った三重県リサイクル認定製品】
区 分 | 土木資材 | 建築資材 | 物 品 |
用途及び認定製品数 | 工事用看板8、バリケード3、ガードフェンス1 | 床板・壁板1 | 学習机・椅子1 |
また、林業研究所では、製材所から排出される樹皮の資源利用をめざした研究で、オゾン処理による液化の効率化と接着剤等への利用についての検討やヒラタケの栽培への活用を行いました。
液化樹皮接着剤を用いた樹皮ボード | 樹皮を利用したヒラタケ栽培 |
(6) 新製品・新用途の研究・開発の促進
消費者ニーズを反映した、付加価値が高く、使いやすい木材製品の研究・開発を進めています。
スギ、ヒノキ人工林の高齢林化により中大径材の増加が見込まれ、梁桁材への利用が望まれることから、木造建築の設計に応じた断面を選択できるスパン表の作成を平成19年度から進めており、本年度はスギ横架材スパン表を作成しました。
また、県内でのスギ梁桁材の流通実態の調査を行い乾燥に伴う割れの許容範囲などを探るとともに、損傷が少なく、効率的な乾燥方法を確立するため、様々な条件による乾燥試験を開始しました。
柱材に使用されてきた尾鷲ヒノキ材を内装材等へも利用できるように、表面固さの向上を目的に表面圧密処理についての試験を行いました。
桟積みされた乾燥試験材 |
乾燥後搬出される試験材 |
乾燥後モルダー掛した材面 |