第2章 森林づくりに関する施策の実施状況等
Ⅰ 基本方針 1 森林の多面的機能の発揮
このため、森林の適切な整備及び保全を進めることにより、将来にわたる森林の有する多面的機能の持続的な発揮を目指します。
指 標 |
実 績 |
目 標 |
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H20年度 |
H22年度 |
H27年度 |
H37年度 |
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間伐実施面積 (H18からの累計) 〈H20年度実績〉 |
25,693ha ―――――― 〈9,167ha〉 |
40,000ha |
80,000ha |
140,000ha |
※H22年度は、県民しあわせプラン第二次戦略計画の目標値です。
1 森林の整備及び保全
効果的かつ効率的に森林整備を行うため、森林の区分に応じた多様な森林整備を進めるとともに、森林の保全に必要な施設等の整備を進めます。
(1) 環境林整備の促進
環境林については、針広混交林への誘導など公益的機能が継続して発揮される森林づくりを進めています。
平成20年度は、森林環境創造事業により、新規に439haの計画を樹立するとともに、間伐 1,407ha、下刈 98haを実施しています。これにより、平成13年度からの着手面積の累計は 10,221haとなり、計画面積 16,000haの 63.9%の進捗状況となっています。また、認定林業事業体が策定する環境林整備計画の協議・調整を行う地区森林管理協議会も21市町に設置されています。
間伐については、治山事業 1,769ha、環境林整備治山事業 546ha、自力等その他 345haを含め 4,067haを実施しました。
【針広混交林造成のイメージ】 |
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間伐放置林 |
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強度間伐 |
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針広混交林 |
【地区森林整備協議会設置状況】
区 分 |
地区森林整備協議会設置市町 |
平成13年度 | いなべ市、鈴鹿市、亀山市、津市、松阪市(松阪、嬉野、飯南、飯高)、多気町、大台町、伊勢市、志摩市、大紀町、度会町、南伊勢町、伊賀市、名張市、尾鷲市 |
平成20年度 | 熊野市、御浜町、紀宝町、鳥羽市 |
(2) 生産林整備の促進
間伐や伐採後の着実な再造林など、林業生産活動を通じた森林整備を進めています。
平成20年度は、造林事業により間伐 1,614ha、植栽 36ha、下刈り 253haなど、高齢林整備間伐促進事業により高齢級間伐 1,147ha等を実施しました。
間伐については、治山事業 426ha、森林農地整備センター 766ha、自力等その他 1,147haを含め5,100haを実施しました。
整備されたスギ林 |
間伐 |
整備されたヒノキ林 |
(3) 県行造林地の適切な管理の推進
森林環境教育や林業体験活動の場としての活用もはかりつつ、多面的機能が発揮されるよう、木材生産と環境保全を調和させた森林づくりを進めています。
平成20年度は、県内14市町35ヶ所で地上権設定した県行造林地 3,528haで、間伐 75haを実施しました。
【県行造林種類別契約状況】 (平成21年3月末現在)
県行造林の種類 |
契約 件数 |
面積(ha) |
契約期間 |
分収率 (県:所有者) |
模範林 |
12 |
1015.25 |
M39~H75 |
9:1 , 5:5 , 6:4 |
大礼記念林 |
5 |
481.65 |
S 5~H72 |
5:5 |
紀元2600記念林 |
11 |
661.12 |
S25~H85 |
5:5 |
講和記念林 |
8 |
425.77 |
S28~H56 |
5:5 |
皇太子殿下御成婚記念 |
6 |
261.41 |
S37~H58 |
6:4 |
県庁舎落成 記念林 |
7 |
340.35 |
S41~H67 |
6:4 |
県政100年 記念林 |
3 |
342.5 |
S52~H72 |
6:4 |
計 |
52 |
3528.05 |
十社県行造林 |
宮前県行造林 |
(4) 保安林制度等による森林の保全管理の推進
保安林制度や林地開発許可制度などを適正に運用することにより、森林の適切な保全や利用の促進をはかっています。
平成20年度には、県内の保安林指定面積は 1,818ha増加し、20年度末現在、県内の森林面積の約32%にあたる 116,313haの森林が保安林に指定されています。
また、林地開発については、平成20年度に9件、44haを許可しています。
【三重県における保安林の指定状況】
区分 |
面積(ha) |
|
水源かん養 | 74.009 | 58.40% |
土砂流出防備 | 39.778 | 31.40% |
土砂崩壊防備 | 160 | 0.10% |
防風 | 174 | 0.1% |
潮害防備 | 6 | 0% |
干害防備 | 20 | 0% |
防火 | 13 | 0% |
魚つき | 637 | 0.5% |
落石防止 | 25 | 0% |
航行目標 | 6 | 0% |
保健 |
※11 933 |
9.4% |
風致 | 79 | 0.1% |
計 | 116.313 |
※保健保安林は、兼種10,527haを含む
水源かん養保安林 津市 |
防風保安林 御浜町 |
(5) 災害に強い森林づくりの推進
豪雨などの自然災害による土砂や立木の流出等を防ぐため、治山事業などにより保安林の機能強化をはかるとともに、人家等の周辺において山地災害防止に必要な施設整備や森林の整備を進めています。
山腹崩壊、地すべり及び崩壊土砂流出等による災害が発生するおそれがある地区を山地災害危険地として地域防災計画に掲載し、異常気象時における適切な対応をはかるための情報として提供しているところです。平成20年度末現在、山腹崩壊危険地区 1,912地区、地すべり危険地区 12地区、崩壊土石流出危険地区 1,887地区となっています。平成20年度末でのこれらの山地災害危険地における治山事業の着手率は 1.5ポイント増加し 51.3%となりました。
平成20年度の主な取組として、平成20年9月発生した集中豪雨により山地災害が発生した地域において、災害関連緊急治山工事 1箇所及び、林地荒廃防止施設災害復旧工事 9箇所で実施しました。また、平成16年9月の台風21号に伴う豪雨により山地災害が発生した地域等において、山腹崩壊地や荒廃渓流を復旧整備し災害の防止、軽減を図る復旧治山事業を 36箇所、水源地域において荒廃森林の整備を行う水源地域整備事業を 30地区で実施しました。
また、機能が低位な保安林を対象とし、その健全な生長を促進させるための本数調整伐(間伐)2,741haを実施しました。
【山地災害の復旧】 |
【保安林の整備】 |
山腹崩壊の復旧状況 (大紀町大内山) |
森林整備(津市) |
(6) 野生鳥獣との共生の確保
野生鳥獣との共生をはかるため、野生鳥獣の適正な保護管理に努めています。また、森林造成のために必要な防除対策の実施や野生鳥獣の生息環境に配慮した森林整備等を進めています。
平成20年度の野生鳥獣による林業被害額は 239百万円で、ニホンジカによるスギ・ヒノキへの食害、剥皮被害が約95%を占めており、ニホンジカによる被害は年々増加しています。
植林地への防除対策として、防護柵やチューブ等の設置を普及しており、平成20年度は新植地へ防護柵を 21,700m設置しました。(造林事業:15,252m、特別天然記念物カモシカ食害対策事業:6,448m)
特に、ニホンジカによる農林業被害と生態系への影響の軽減をはかるため、「特定鳥獣保護管理計画(ニホンジカ)第2期」を策定し、狩猟による捕獲頭数の規制を緩和(1頭から3頭(メス3頭又はメス2頭+オス1頭))するとともに、第10次鳥獣保護事業計画を変更し、許可捕獲による捕獲等数を1申請当たり3頭から必要数としました。
しかし、平成20年度の狩猟登録者数は3,564人で、狩猟者の高齢化により狩猟登録者数は減少しています。
林業研究所では、平成18年度から3カ年の計画で、林業および森林生態系に対するニホンジカによる被害の実態を明らかにし、被害管理指針を策定するとともに、樹皮食害の効果的な防除法の開発を目的とした研究を実施しており、県内のスギ、ヒノキ樹皮の剥皮害は春~夏に発生し、餌不足によって引き起こされるのではないこと、生息密度と被害量には明瞭な関係がないことが明らかになりました。また、生分解性ビニールテープを巻き付けることで樹幹部に拡がる剥皮をほぼ回避できることもわかりました。
ニホンジカ |
食害により盆栽状 になったヒノキ |
シカによるスギ剥皮 |
防護ネット |
防護柵 |
剥皮害防除テープ |
(7) 森林病虫害対策及び森林災害対策の強化
森林に多大な被害を与える病害虫の早期かつ重点的な防除を行っています。また、林野火災予防の普及啓発を行うとともに、森林保険への加入を進めています。
平成20年度は、松くい虫防除対策として薬剤散布による予防措置を 39ha、被害木を伐倒処理する駆除措置を 71?実施しました。また、山火事予防運動の一環としてポスター掲示やステッカーの配布などを行い、林野火災の予防思想の普及をはかりました。なお、森林国営保険は、508件 4,401haの加入があり、平成20年度末現在、14,004haの加入となっています。
【松くい虫被害及び林野火災発生状況】
区分 |
松くい虫 |
林野火災 |
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面積(ha) |
材積(m3) |
件数 |
面積(ha) |
|
平成18年度 |
1,912 |
6,066 |
39 |
2 |
平成19年度 |
1,780 |
5,588 |
63 |
6 |
平成20年度 |
1,653 |
5,309 |
21 |
19 |
※林野火災は暦年
【松くい虫被害】
マツノザイセンチュウ |
マツノマダラカミキリ |
海岸松林 伊勢市 |
2 森林の区分に応じた森林管理の推進
効果的かつ効率的な森林整備が進められるよう、三重県型森林ゾーニング等により重視する森林の機能に応じた森林管理を進めます。
(1) 市町等と連携した森林管理の推進
地域の実情に即した効果的かつ効率的な森林整備を進めていくため、市町と連携して森林計画制度の適切な運用を図っています。また、国有林や隣接府県と連携し、適正な森林管理を進めています。
平成20年度は、南伊勢森林計画区において、地域における課題や森林資源の内容を踏まえ、平成21年4月1日を始期とする地域森林計画を樹立するとともに、計画区内の4市7町において、市町村森林整備計画が樹立されました。
【地域森林計画樹立(予定)】
区分 |
森林計画区名 |
対象市町 |
平成20年度 |
南伊勢 |
松阪市、伊勢市、鳥羽市、志摩市、多気町、明和町、大台町、玉城町、度会町、大紀町、南伊勢町 |
平成22年度 |
北伊勢 |
津市、四日市市、桑名市、鈴鹿市、亀山市、いなべ市、東員町、菰野町、朝日町 |
平成23年度 |
伊賀 |
伊賀市、名張市 |
平成24年度 |
尾鷲熊野 |
尾鷲市、紀北町、熊野市、御浜町、紀宝町 |
(2) 森林資源データの整備と情報提供
森林の適正な維持・管理を進め、森林の持つ公益的機能を高度に発揮させていくために、森林GISを活用した森林資源データの整備や情報の提供を行っています。
平成20年度は、南伊勢地域森林計画の樹立に併せて、森林計画区の森林簿データを更新しました。また、民有林の樹種別面積をはじめとする森林資源に関する各種データについて、冊子および環境森林部ホームページ「三重の環境と森林」にて提供しています。
参照アドレス http://www.eco.pref.mie.jp/
【三重県森林GIS】
オルソ写真+森林計画図 |
樹種別 |
森林ゾーニング |
(3) 森林の公益的機能発揮に向けての研究
水源のかん養や土砂の流出防備など森林の公益的機能を効果的に発揮させる森林造成の研究に取り組んでいます。
林業研究所では過密人工林に対して、林床光環境を改善し、下層植生を生育させるための間伐率(量)について調査を実施しました。その結果、下層植生が生育するために必要な光の強さ(相対照度20%以上)を得るための適切な本数密度の目安を明らかにしました。
平成20年度から管理不足となった林分における間伐が、上木の成長(幹の太り、樹高の成長等)や林内の環境に及ぼす影響を明らかにするため研究を開始し、間伐前の林分における樹形の特徴(直径、樹高、幹の細り、樹冠長等)をまとめるとともに、間伐実施林分において毎木調査を実施しました。さらに、強度間伐後の下層植生の地表被覆率と土砂流出量の関係を継続調査したところ、間伐前→間伐直後→地表被覆率30%以下→地表被覆率30-100%の変化に伴い、土砂流出量が徐々に減少し、下層植生の被覆効果が明らかとなりました。
また、針広混交林や広葉樹林に誘導しようとする針葉樹人工林において広葉樹が天然更新する可能性を判断するための技術開発に平成19年度から取り組んでいます。平成20年度には人工林に侵入する高木性広葉樹の本数を予測するモデル式を開発するとともに、高木性広葉樹の侵入特性を解明しました。
京都議定書に基づく森林の炭素吸収量算定に必要となる基礎データを収集するために、平成15年度から森林の地上部バイオマス、地下部バイオマス、土壌、枯死木、落葉落枝に含まれる炭素貯留量の調査を県内の森林で行っています。平成20年度は土壌、枯死木、落葉落枝に含まれる炭素量を4箇所の森林で調査を実施するとともに、近年分布範囲を拡大している竹林1箇所について地下部バイオマス量の調査を実施しました。
魚眼レンズで撮影した 間伐後のヒノキ人工林 (相対照度約30%) |
土砂受け箱による林地 の流出土砂量の測定 |
竹林の地下部 バイマス量調査 |