第1章 トピックス
Ⅰ 森林吸収源対策の推進
京都議定書による森林吸収源対策を推進するため、国では従来の造林事業を拡充するほか、平成19年度から自主的な整備が進まない森林に対し、所有者に代わり、公的に森林整備を実施する未整備森林緊急公的整備導入モデル事業を創設するなど、森林吸収源対策を推進してきました。
このような中、平成20年度から、京都議定書の第1約束期間が始まり、平成24年度までの集中的な間伐等の実施の促進を図るため、「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法」(間伐特措法)が、平成20年5月16日に交付・施行されました。
この法律に基づき、県内24の市町では、「特定間伐等促進計画」を策定し、市町が主体となって間伐等の推進に努めておりますが、この促進計画を作ることによって、森林整備事業における優遇措置、美しい森林づくり基盤整備交付金の交付、地方債の特例措置、伐採届出が不用になるなどの利点があります。
三重県では、従来県単独事業として取り組んできた間伐関係事業を、促進計画に基づいて市町が事業主体となって取り組む場合の補助や、森林整備事業の補助率の上乗せなど、より取り組みやすいように補助制度を改正しております。
平成21年度からは、「特定間伐等促進計画」に位置付けられた施業の中で、地形が急峻であったり、林道から遠いなど林業を行う上で条件が不利なために森林整備が進まなかった森林の間伐について、定額補助をする条件不利森林公的整備緊急特別対策事業が創設されます。又これとほぼ同じ内容の定額補助ができる森林整備加速化・林業再生事業が創設され、3年間の基金事業として定額補助が実施されますので、これらを活用して間伐等の施業を実施し、森林吸収源対策を推進していきます。
【 条件不利森林の間伐 】
間伐前 |
間伐後 |
Ⅱ 北勢地域の災害とその復旧
平成20年9月2日(火)から3日(水)にかけて、紀伊半島沖の低気圧や寒冷前線の南下により、南から暖かく湿った空気が流れ込み、県北部では集中豪雨となりました。
いなべ市の藤原岳で時間雨量 91ミリ、24時間降水量 596ミリ、菰野町武平峠で時間雨量 86ミリ、24時間降水量 453ミリを記録し、甚大な被害が発生しました。
治山、林道及び自然公園関係の被害状況は、治山施設 17箇所、1,049百万円、林道 93箇所、1,450百万円、自然公園施設 27箇所、232百万円に及びました。
このため、緊急に復旧が必要な箇所については、平成20年度に治山災害復旧等事業(治山施設災害復旧事業、災害関連緊急治山事業)で、林道は、林道災害復旧事業において対応しました。また、自然公園施設については、国交付金事業の追加配分を受け対応しました。
残事業については、次年度以降、国補治山事業や県単治山事業、林道災害復旧事業などにより、早期復旧に努めていきます。
○治山施設 |
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・被災状況 |
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菰野町田光地内 S40年鋼製治山ダム損壊 |
菰野町千草地内 S29年練石積堰堤損壊 |
・治山事業(山地災害対策関連事業) |
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三重郡菰野町 「施工前」 |
「施工後」 |
○林道事業(林道災害復旧事業) |
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いなべ市北勢町 「施工前」 |
「施工後」 |
Ⅲ 森林施業の集約化・団地化の推進
県内の人工林(スギやヒノキ)は、8齢級(36年生)以上の壮齢林が約8割を占め、柱材が得られる程度にまで成長しています。また、木材を取り巻く国際的な環境の変化により、外材の輸入量が減少し、大手製材工場等では、材料となる原木の確保が困難な状況となり、国産材への注目が高まっています。
しかし、木材価格の低迷や機械化の遅れなどから、間伐の多くは、間伐材を林内に放置する「伐り捨て間伐」となっています。これを有効に利用する「利用間伐」へ変えていくためには、林地の集積(団地化)や施業の集約化により、作業道開設や機械化などを計画的・合理的に展開していくことが重要です。
このため平成20年度には、津市、松阪市、度会町の3市町において、団地化・集約化を目指す地域林業推進体制整備事業を実施し、各地での合意形成を進める地域協議会の開催や、集約化に向け所有者への働きかけを行う「地域リーダー」を19名設置し活動支援することなどにより、計4団地を設定しました。またこれ以外にも、林業普及指導員の指導の下、森林組合を中心とした取組を推進した結果、大紀町と尾鷲市において3団地を設定することができました。
団地化に向けた事業説明会 |
団地化計画を検討する地域協議会 |
団地での低コスト間伐(列状間伐) |
団地(集積された林地)のイメージ図 |
Ⅳ 「三重の木」の利用促進に向けた取組
「三重の木」認証材の県内の出荷量は、平成17年度 4,290m3、平成18年度 5,137m3、平成19年度 8,416m3、平成20年度 8,740m3と順調に推移し、制度の定着とともに一定の評価を得てきています。
平成20年度は、「三重の木」利用推進協議会が継続して実施した、「三重の木」認証材に関するホームページの更新、住宅見学会の開催、パンフレット等の作成、新聞・雑誌広告の掲載等の普及・啓発活動に対して支援を行いました。
「三重の木」認証材を使用した施主への住宅建築補助については、平成20年度の実績は300戸となりました。
この中の20戸については、認証建築事業者から、建築する「三重の木」モデル住宅を提案してもらい、住宅建築予定者が十分に説明を受け納得したうえで建築された住宅に対して補助する「提案型住宅補助」として、6月(津市:メッセウイングみえ)と11月(四日市市:四日市ドーム)に行われた「住まいと暮らしの総合フェア」において、認証事業者が展示ブースを出展して募集を行いました。
また、平成19年度に三重県と関東圏木造住宅ビルダーとの間で締結した、「「三重の木」の利用の促進に関する協定」に基づき、関東方面への「三重の木」の販売の拡大に取り組んでいます。
「三重の木」認証材の一層の利用促進をはかるためには、普及・啓発に関しては、これまでの取組を継続するとともに、今後は、各地域における「三重の木」認証事業者を中心とした利用拡大の取組や複数の認証事業者が協働して行う、「三重の木」認証材に関するPR活動について支援を行います。
また、企業活動の中で「三重の木」認証材の使用が拡大していく取組が実施されるよう働きかけを行っていきます。
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「提案型」による「三重の木」モデル住宅の募集 |
住宅見学会 |
Ⅴ 三重県産スギ横架材スパン表の作成
県内のスギ人工林は伐期の長期化に伴って大径化しつつあり、中大径材の有効活用が課題となっています。県産平角材が梁・桁など断面の大きな横架材として多く利用されるようになれば、県産材の需要拡大に大きな効果があり、林業関係者から期待されています。
また、県産材の利用に高い関心を持つ工務店、設計者などからの要望もあり、県産スギ材の横架材としての利用を促進するため、県産材スギ横架材スパン表を作成しました。
■スパン表のねらい
1 県内における木造軸組工法で建築された住宅の梁・桁材は、マツを使う慣習やスギの強度性能及び乾燥に対する不安などからベイマツや欧州産材ラミナによる集成材など外材が多く使われています。設計者や工務店等が、外材から県産材への移行や今まで経験で決定してきた断面の確認を行う場合、このスパン表を利用して簡単に安心して行うことができます。
2 スパン表の作成に当たっては、大学、林業・木材関係団体、建築設計士等と連携を図り、県内で多く使われている荷重パターン等を採用しました。
3 スパン表における断面寸法は、代表的な条件を設定し、建築基準法で定められた許容応力度計算により算出していますが、部材の使用条件が当スパン表の設定条件より安全側でなければ使用することができません。このため、適用条件をフローチャートで整理しています。
4 適用条件は、
・2階建て以下及び延べ床面積500m2以下の木造軸組工法住宅
・モジュールは910mm
・床小梁、床大梁、胴差、小屋梁、軒桁
・材幅は120mm、135mm(小梁は105mm、120mm) 等としています。
なお、スパン表は関係機関へ配付するほか、ホームページ(「三重の環境と森林」及び「林業研究所」)にも掲載し、公開しています。今後、県産スギ材の需要拡大が進むことを期待しています。
Ⅵ 森林環境教育にかかる取組の充実
県では、県民の皆さんが、自発的に「森林づくり」や「木づかい」に取り組んで頂けるよう、「森林とのふれあい・学び事業」を実施しています。
平成20年度は、昨年度に実施した森林環境教育に関する県内小中学校のニーズ調査結果に基づき、20校の小中学校に対して、体験・学習プログラムづくりへの支援や、指導者とのマッチングなど、総合的なコーディネートを進めるとともに、森林環境教育のモデルづくりとして「森林の活動体験教室」を 11回開催したほか、学習フィールドづくりとして、地域のPTAやボランティア団体と協働し、学校林の整備活動を2校で支援しました。
また、「県民の森」などの公的な森林公園施設等においても森林環境学習のモデルづくりとなる「森林の活動体験教室」を6回開催したほか、森林環境教育の指導者を養成することを目的とする「森林の学習指導者養成講座」を4回開催するなど、小中学校の学校林や公的森林施設を中心に、県内の森林環境教育活動の活性化に向けた取組を進めています。
【森林の活動体験 |
教室】 |
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間伐体験 |
樹木観察 |
ネイチャーゲーム |
炭焼き体験 |
ネイチャークラフト |
里山体験 |
【指導者の養成】 |
【学習 |
フィールドの整備】 |
森林の学習指導者養成 |
セミナー(上野森林公園) |
学校林整備(常磐西小学校) |
Ⅶ 「森林文化」「木の文化」の振興に向けた取組の推進
【フォトコンテスト2008】 森とのふれあい部門 最優秀作品 |
多くの県民のみなさんが、その暮らしの中において森林や木とのかかわりの大切さを認識し、「森林づくり」や「木づかい」といった多様で豊かな森林や木とのかかわりを一人ひとりの生涯を通じて持っていただけるよう、県では、「森林文化」及び「木の文化」の振興に向けた取組として、広く県民のみなさんを対象に、森林や木とふれあい、その文化にふれていただけるような機会づくりを進めています。
平成20年度は、19年度に引き続き、フォトコンテスト、木工作品コンテスト、地域での木工教室等を開催するとともに、その入賞作品を県内の県立施設等において展示することで、広く県民のみなさんの森林や木とのふれあいを促進しながら、森林や木と人とのかかわりも感じていただけるように、その機会づくりを行いました。
また、原木しいたけの生産といった森林とかかわりある生活(林業)体験会の開催、木づかい達人による木づかい教室や木づかいの技の実演会の開催など、森林や木とかかわりを持ちながら生活されている方々の営みにふれながら、森林や木の文化を感じていただける機会づくりにも取り組んでいます。
【木工教室&木工作品コンテスト】 |
【森林の生活体験会】 |
木工教室&木工作品コンテスト入賞作品 |
原木しいたけ生産の体験会 |
【木づかい達人】 | |
尾鷲ひのきのマイ箸づくり教室 |
チェンソーアート実演会 |
Ⅷ 「企業の森づくり」の推進
多様な主体による森林づくりを促進するため、平成18年度から「企業の森づくり」に取り組んでいます。県は、社会貢献の一環として森林整備を考えている企業に対し、資金や労働力を求めている森林を紹介し、協定期間や森林整備内容をコーディネートすることで、双方のマッチングを進めています。
平成20年度は、新たに5カ所の「企業の森」が設定され、県下の契約地は14カ所となりました。中でも、エレコム社の寄付により(社)三重県緑化推進協会に新たな基金を造成できたことは、地域での長期的な森林づくりに大きく寄与するものとなりました。また、地理的な要因で、これまで契約が難しかった東紀州地域においても、2件の企業の森が誕生し、今後の活動の広がりに期待がもてる結果となりました。
○新たに「企業の森」に取り組み始めた企業
企業名 |
フィールド |
活動内容 |
面積(ha) |
百五銀行 |
津市 |
広葉樹植栽 |
0.5 |
三重中央開発 |
伊賀市 |
間伐、作業道、公園作り |
12.3 |
紀州製紙 |
熊野市 |
広葉樹植栽 |
0.5 |
四日市西ライオンズクラブ |
菰野町 |
広葉樹植栽 |
0.1 |
エレコム |
尾鷲市 |
広葉樹植栽(基金原資寄付) |
18.0 |
計 |
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31.4 |
百五銀行の植樹活動(津市) |
紀州製紙の植樹活動(熊野市) |
エレコムの調印式 |
四日市西ライオンズクラブ(菰野町) |
Ⅸ 三重のもりづくり月間の取組
平成17年10月に制定された「三重の森林づくり条例」では、県民のみなさんが森林のもたらす恩恵についての理解を深め、森林づくりに参画していただけるよう、毎年10月を「三重のもりづくり月間」と定めています。この期間中、森林づくりに関するイベントを県内各地で開催しました。
中央行事として、平成20年10月3日(土)に、津市のメッセウィング・みえで、「三重の森林(もり)と木づかいフェア」を開催し、約 3,700人の方々に参加していただきました。このフェアでは、森林フォーラム2008を開催し、「森林を守るために私たちができること」をテーマに講演・活動発表・パネルディスカッションが行われました。森のクイズ大会、森の人形劇では県民の皆さんに楽しみながら森林について学んでいただき、森林セラピーなどの森林体験、家具・竹製品などの展示、木工教室、森林の恵みの試食や物産販売など、46団体の方々に出展していただき、森林や木にふれあうことのできる様々な催しが開催されました。
また、地域行事として、森林の働きに関する講話や木工教室など、森林、林業、木材について考えたり、体験したりする「森の講座」を県内7地域で開催し、819人の方々に参加していただきました。
【三重の森林と木づかいフェア】
木工教室 |
ジョン ギャスライト氏の講演 |
きのこの試食・販売 |
【森の講座】
四日市市 |
津 |
松阪 |
伊勢 |
伊賀 |
尾鷲 |
熊野 |