第1章トピックス
- I 森林再生「三重の森林づくり」
- II ニホンジカの保護管理に向けた特定鳥獣保護管理計画の見直し
- III 強度間伐による針・広混交林化技術に関する研究
- IV 列状間伐による低コスト木材生産の推進
- V 国産材の安定供給体制の整備に向けた取組
- VI 「三重の木」の利用促進に向けた新たな取組
- VII みんなで育む「木の文化県・みえ」フォーラムの開催
- VIII 森林環境教育にかかる取組の充実
- IX 「企業の森」づくりの推進
- X 三重のもりづくり月間の取組
I 森林再生「三重の森林づくり」の展開
森林は、水源のかん養や県土の保全などの多様な公益的機能により、私たちの暮らしを支えています。また、平成20年1月から京都議定書に掲げる第一約束期間が始まり、二酸化炭素吸収源としての森林の機能に大きな期待が寄せられています。
このように重要な役割を担う森林ですが、木材価格の低下や需要の減少等から林業活動が停滞し、手入の不足した森林の増加により、森林の公益的機能の低下が懸念されています。
このような状況の中、平成19年度からスタートした県民しあわせプラン「第二次戦略計画」において、森林再生「三重の森林づくり」を重点事業として取り組み、「三重の森林づくり基本計画」に掲げる「森林の多面的機能の発揮」、「林業の持続的発展」、「森林文化及び森林環境教育の振興」、「森林づくりへの県民参画の推進」の4つの基本方針を効率的に推進できるよう森林・林業施策を展開していくことになりました。
平成19年度は、森林の持つ公益的機能を発揮させるため、間伐を主体とした森林整備の推進に引き続き取り組みました。また、県産材の利用促進を軸として林業・木材産業の活性化をはかるため、「三重の木」認証材の利用拡大に取り組むとともに、森林の団地化、低コスト化などの安定供給体制づくりや大型製材工場などからの並材大口需要と生産現場とのマッチングに取り組みました。
さらに、多様な主体の参画による森林づくりを促進するため、企業や漁業関係者、NPOなどの森林づくりを支援するとともに、森林環境教育の充実に取り組みました。
森林再生「三重の森林づくり」の展開
~間伐や県産材利用を進め、みんなが森林づくりに参加できる仕組みをつくります。~
具体的な取組内容
- 森林の公益的機能の発揮とともに、良質な県産材の提供に向けて、間伐などの森林整備を促進
- 林業就業者の確保と育成を支援
- 「三重の木」認証材を一定量使用する木造住宅建築を支援
- 「企業の森」や「ボラ・塔eィアの森」づくりのため、森林所有者との仲介や技術支援の実施
- 森林環境教育を進めるため、指導者の育成や学校林の整備・森林体験学習の実施
などの事業を行います。
II ニホンジカの保護管理に向けた特定鳥獣保護管理計画の見直し
ニホンジカの高い生息密度を緩和し、農林業被害を軽減するとともに、地域個体群の長期的、安定的な維持をはかるため、平成14年度に「特定鳥獣保護管理計画(ニホンジカ) 第1期」を策定し、県内の4つの個体群のうち、台高山地及び伊勢志摩地域について、狩猟によるメスジカの捕獲禁止を解除して、個体群の管理を行ってきました。
しかし、農林業被害は減少せず、平成18年度の被害額は約2億円で深刻な影響を及ぼしています。また、生態系に及ぼす影響も大きく、「三重県レッドデータブック2005」ではニホンジカの食害による生息地の環境悪化が減少要因となっている希少種の存在も指摘されています。
このため、ニホンジカの保護管理の目標を定め、計画的な保護管理により農林業被害と生態系への影響の軽減し、「人とニホンジカとの共生」をはかるため、「特定鳥獣保護管理計画(ニホンジカ)第2期」を策定しました。
現在、県内のニホンジカの生息数は約5万3千頭、生息密度は15.7頭/km2と推測されることから、目標生息密度を自然植生への影響や農林業被害が軽減できる3頭/km2程度とし、各区域での年間捕獲目標を定めるとともに、狩猟制度を有効に活用して個体数調整が行えるよう全区域でメスジカの狩猟禁止の解除と1日当たりの捕獲数を3頭(オスの上限は1頭)に緩和しました。
また、有害鳥獣捕獲についても、「第10次鳥獣保護計画」においてメスジカの捕獲頭数や許可期間の基準を緩和し、捕獲促進と被害防止をはかることとしました。
ニホンジカの推定生息数及び生息密度
地区 | 分布面積(km2) | 推定生息数(頭) | 生息密度(頭/km2) |
---|---|---|---|
四日市・伊賀 | 679.9 | 8,363 | 12.3 |
津・松阪 | 1178.7 | 21,688 | 18.4 |
伊勢 | 704.9 | 11,137 | 15.8 |
尾鷲・熊野 | 823.9 | 11,864 | 14.4 |
計 | 3387.4 | 53,052 | 15.7 |
地域別年間捕獲目標
年度 | H19 | H20 | H21 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
区域 | オス | メス | 計 | オス | メス | 計 | オス | メス | 計 |
四日市・伊賀 | 700 | 900 | 1,600 | 500 | 800 | 1,300 | 400 | 600 | 1,000 |
津・松阪 | 1,100 | 1,700 | 2,800 | 1,100 | 1,700 | 2,800 | 1,100 | 1,700 | 2,800 |
伊勢 | 800 | 1,000 | 1,800 | 800 | 1,000 | 1,800 | 600 | 800 | 1,400 |
尾鷲・熊野 | 600 |
800 |
1,400 | 600 | 800 | 1,400 | 600 | 800 | 1,400 |
計 | 3,200 | 4,400 | 7,600 | 3,000 | 4,300 | 7,300 | 2,700 | 3,900 | 6,600 |
H22 |
H23 | 計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オス | メス | 計 | オス | メス | 計 | オス | メス | 計 |
300 | 500 | 800 | 300 | 400 | 700 | 2,200 | 3,200 | 5,400 |
1,100 | 1,700 | 2,800 | 1,100 | 1,700 | 2,800 | 5,500 | 8,500 | 14,000 |
400 | 700 | 1,100 | 400 | 700 | 1,100 | 3,000 | 4,200 | 7,200 |
600 | 800 | 1,400 | 600 |
800 |
1,400 | 3,000 | 4,000 | 7,000 |
2,400 | 3,700 | 6,100 | 2,400 | 3,600 | 6,000 | 13,700 | 19,900 | 33,600 |
III 強度間伐による針・広混交林化技術に関する研究
管理不足の過密人工林を対象に強度の間伐を行い、林内光環境を改善することによって高木性広葉樹の侵入を促し、針広混交林へ林型を誘導する森林管理技術の開発を目的として、H19年度まで「強度間伐による針・広混交林化技術に関する研究」を実施しました。
県内各地の強度間伐実施林分や津市白山町に設定した36年生ヒノキ林(本数間伐率61%) において、広葉樹等の下層植生の侵入状況を調査し、研究結果を「三重県における針広混交林化施業のポイント」としてまとめました。
1.間伐によって侵入した高木性広葉樹の稚樹が定着・成長しやすい環境を維持するためには、無理のない間伐率で林内の相対照度を20%以上に保つ必要がある。
2.広葉樹林からの距離、上層木の樹種(スギ、ヒノキ)、標高、年降水量等の因子から、間伐によって林床に侵入する高木性広葉樹の稚樹数が予測可能となった。また、侵入困難(稚樹数30本/100m2未満)と予測された場合は間伐を繰り返す等の対策が必要になる。
3.三重県における高木性広葉樹の侵入パターンは標高500mを境に異なり、標高に応じた対策が必要である。
しかし、強度の間伐は、急激な環境変化を林地に与えることになり、下層植生に覆われていない間伐直後には、土壌の流亡などが危惧されます。そこで、上記モデル林において、 間伐直後から下層植生の変化を追跡調査しました。
1.間伐後18ヶ月経過した時点で主に草本類が林床の全面を覆い(被度100%),良好な場合には、強度間伐後2~3年で下層植生の被覆が見込める。
2. 間伐後4~5年経過しても,下層植生(草本類)が生育しない場合は,間伐の繰り返しや播種・植栽等の追加的措置を検討する必要がある。
今後、より確実な針・広混交林化技術を確立し、下層植生の侵入・生育に伴う林地保全効果を明らかにするためには、侵入した高木性広葉樹の成長パターンの把握、水・土砂の流出実態等の継続調査が必要です。
IV 列状間伐による低コスト木材生産の推進
県内の人工林(スギやヒノキ)は、8齢級(36年生)以上の壮齢林が約8割を占め、柱材が得られる程度にまで成長しています。また、木材を取り巻く国際的な環境の変化により、 外材の輸入量が減少し、大手製材工場等では、材料となる原木の確保が困難な状況となり、国産材への注目が高まっています。
しかし、木材価格の低迷や機械化の遅れなどから、間伐の多くは、間伐材を林内に放置する「伐り捨て間伐」となっています。これを有効に利用する「利用間伐」へ変えていくためには、木材生産における「低コスト化」が課題であり、作業道などの路網整備と併せ、スイングヤーダやプロセッサなどの高性能林業機械を用いた「列状間伐」が注目を集めています。
県内では、11森林組合のうち中勢森林組合など4森林組合が列状間伐に取り組んでおり、平成19年度は、約6千?の間伐材を搬出しました。大紀森林組合では、高性能林業機械を使用した列状間伐等で低コストで搬出した木材を京都府舞鶴市の合板工場に直送する取組を開始しました。
また、低コスト化の普及を図るため、低コスト間伐マニュアルや普及用DVDを作成するとともに、県内の素材生産業者や森林組合を対象に、列状間伐施業を含む「低コストで災害に強い作業道研修会」を松阪市(55名)や熊野市(35名)で開催しました。
スイングヤーダーによる列状間伐 |
プロセッサによる造材 |
大型トレーラーに積込 |
低コスト作業道開設研修会(松阪市) |
V 国産材の安定供給体制の整備に向けた取組
平成19年度から林野庁の新規事業として、国産材を安定的に供給する体制を国有林・民有林が連携して構築することを目的とした「施業集約化・供給情報集積事業」がスタートしました。
この事業では、全国、地域ブロック、都道府県の各段階において行政と原木供給者等で構成する協議会が設置され、三重県は近畿ブロックの協議会に参加しています。
全国の森林組合等では、この事業により施業の集約化を進めており、利用間伐などによる原木供給可能量情報の集積・提供や、森林所有者に対して間伐等の施業に必要なコストや収益を明らかにした施業プランを提案し、所有者との合意形成を図る「森林施業プランナー」の育成等を実施しています。
三重県では6森林組合において、集約化対象森林として374ha、原木供給可能量情報として6,115m3の情報集積・提供を行いました。
また、モデル森林組合である松阪飯南森林組合において「森林施業プランナー育成地域実践研修」を行い、近畿ブロック各府県の森林組合等から29名が参加し、それぞれの地域の実情に応じた施業提案書を作成する等の具体的な研修を実施しました。
近畿ブロック国産材安定供給協議会 |
森林施業プランナー育成地域実践研修 |
森林施業プランナー育成地域実践研修【現地】 |
VI 「三重の木」の利用促進に向けた新たな取組
「三重の木」認証材の県内の出荷量は、平成17年度4,290m3、平成18年度5,137m3、平成19年度8,416m3と順調に推移し、制度の定着とともに一定の評価を得てきています。
「三重の木」の一層の利用促進をはかるためには、これまでの県内の取組を継続するとともに、県外での利用拡大を進めていく必要があります。
このような中、関東方面への「三重の木」の販売の拡大に取り組み、平成20年2月28日には、三重県と関東圏木造住宅ビルダーとの間で、「「三重の木」の利用の促進に関する協定」を締結しました。今後、松阪木材コンビナートを核とした供給体制を強化し、関係機関と協働して「三重の木」利用拡大を推進していきます。
三重県と古河林業(株)との調印 |
品質・性能が保証された「三重の木」 |
「三重の木」関東戦略のイメージ
VII みんなで育む「木の文化県・みえ」フォーラムの開催
木を使うことで、「木を植え、育て、伐って利用し、また植える」という「緑の循環」が持続され、健全な森林が育てられることを県民のみなさまに広く理解いただくことを目的に、平成20年3月22日(土曜)に多気町民文化会館において、みんなで育む「木の文化県・みえ」フォーラムを開催しました。
木材の良さについての講演や木づかいについての事例発表を中心としたフォーラムの他にも、楽しく木に親しんでもらえるように、クラフト教室やチェンソーアートなどのイベントも同時に開催しました。
また、会場ロビーでは、木造住宅や木製品のPRのため、日本建築家協会東海支部三重地域会によるパネル展示やスギの圧縮材を使った家具等の展示が行われました。
フォーラムプログラム
基調講演
「木を使って健康で快適な生活を」影山木材株式会社影山弥太郎氏
木づかい事例発表
- 「木づかいプラン」作成に携わって
- 木とのふれあいのある学校
- 環境づくり人づくり~家づくりを通して~
イベント
チェンソーアート、クラフト教室ほか
基調講演 |
事例発表 |
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パネル展示 |
チェンソーアート |
クラフト教室 |
VIII 森林環境教育にかかる取組の充実
県では、「社会全体で支える森林づくり」の実現に向けて、森林環境教育の振興に重点的に取り組み、県内の「森林づくり」や「木づかい」にかかる気運を醸成していくこととしており、県民のみなさんに「森林」や「林業」への理解と関心をより深めていただけるよう、平成19年度から「森林とのふれあい・学び事業」により、森林環境教育の取組の充実をはかっています。
初年度の平成19年度は、県内の森林環境教育指導者の情報や小中学校等における学習ニーズの調査、教室の実施が可能な学習フィールドの調査など森林環境教育の総合コーディネートに必要な各種情報を収集しました。
また、出前講座による森林環境教育指導者の育成2件、学校林を学習フィールドに活用するための整備2件、学習プログラムのモデルづくりとしての「森林の活動体験教室」13件を実施しており、小中学校の学校林や森林公園等を中心に、県内の森林環境教育活動の活性化に向けた取組を進めました。
【指導者の育成】 |
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【学習フィールドの整備】 |
出前講座(大河内小学校) |
出前講座(常磐西小学校) |
学校林整備(内部東小学校) |
【森林の活動体験教室】 |
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昆虫&樹木観察(常磐西小学校) |
広葉樹の植樹(美杉南小学校) |
きのこの観察(内部東小学校) |
樹木診断(上野森林公園) |
間伐体験(熊野少年自然の家) |
森の生物観察(創造の森横山) |
IX 「企業の森」づくりの推進
多様な主体による森林づくりを促進するため、平成18年度から「企業の森づくり」に取り組んでいます。県は、社会貢献の一環として森林整備を考えている企業に対し、資金や労働力を求めている森林を紹介し、協定期間や森林整備内容をコーディネートすることで、双方のマッチングを進めています。
平成19年度は、新たに5カ所の森林で「企業の森」が設定され、昨年度と併せて9カ所となりました。中でも、亀山市での取組については、市民と企業、亀山市の3者で協議会を立ち上げ、森林整備や利活用の検討を始めるなど、自主的な森林づくりが動き出しています。
新たに「企業の森」に取り組み始めた企業
企業名 | フィールド | 活動内容 | 面積(ha) |
---|---|---|---|
全労済三重県本部 | 津市 | 広葉樹植栽 | 0.8 |
損保ジャパン | 津市 | 広葉樹植栽 | 0.4 |
ネッツトヨタ三重 | 松阪市 | 広葉樹植栽 | 1.0 |
シャープ亀山工場、日東電工ほか | 亀山市 | 間伐、下刈、広葉樹植栽 | 8.0 |
INAX | 伊賀市 | 広葉樹植栽 | 1.3 |
計 | 11.5 |
損保ジャパンの植樹活動(津市) |
全労済三重県本部の植樹活動(津市) |
ネッツトヨタ三重の調印式 |
INAXの植樹活動(伊賀市) |
X 三重のもりづくり月間の取組
平成17年10月に制定された「三重の森林づくり条例」では、県民のみなさんが森林のもたらす恩恵についての理解を深め、森林づくりに参画していただけるよう、毎年10月を「三重のもりづくり月間」と定めています。この期間中、森林づくりに関するイベントを県内各地で開催しました。
中央行事として、平成19年10月13日(土曜)に、桑名市において、「森と水~どう守り、次世代に引き継げばいいのか~」をテーマに森林フォーラム2007を開催しました。気象予報士河合薫さんの講演、森林保全や利用活動の発表のほか、木工教室、森林セラピー体験、森の写真展等を行い、約160人の参加者がありました。
また、地域行事として、森林や林業を体験する「森の講座」を県内7地域で開催しました。(参加者数489人)
森林フォーラム2007
河合薫さんの講演 |
活動発表 |
展示 |
森の講座
間伐体験(桑名市) |
森の話/紙芝居(津市) |
巣箱づくり(松阪市) |
竹で”スタードーム”づくり(伊勢市) |
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ウッドバーニング(伊賀) |
尾鷲ヒノキの歴史(尾鷲市) |
熊野古道周辺の森の健康診断(熊野市) |
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