低コスト作業システム
高性能林業機械
平成19年10月現在の三重県内に導入されている高性能林業機械は次の表のとおりであり、グラフでその推移を示します。これを見ると、近年は特にスイングヤーダ、プロセッサ、フォワーダが台数を伸ばしていることがわかります。
これらはセットで導入される場合が多く、三重県でもこれら3種類の機械を核とした作業システムの導入が進んでいます。
(高性能林業機械の導入台数)
(三重県における高性能林業機械の普及状況)
高性能林業機械の定義と機能
名 称 | 定 義 | 機 能 |
---|---|---|
フェラーバンチャ | 立木を伐倒、集積する自走式機械(集材機能もある) | 林内を走行して伐倒、集積を行う。 一般的にスキッダ、プロセッサとセットで用い、全木集材の大規模作業地に適する。 |
ハーベスタ | 伐倒、枝払い、玉切りを行う自走式機械 | 林内を走行して伐倒と枝払い、玉切りを行う。 作業半径10m以上となる伸縮型のアームを持つ機種もある。 |
プロセッサ | 枝払い、玉切りを行う自走式機械 | 主に全木集材された木材の枝払いと玉切りを行う。 |
タワーヤーダ | タワー(人工支柱)を装備した移動可能な架線式集材機(車) | 移動や架設が容易なようにタワーと集材機が一体となっている。 自走式と牽引式のものがある。 |
スイングヤーダ | 油圧ショベルをベースマシンとしたタワーヤーダ | 油圧ショベルのブームやアームをタワーとして用い、機体を旋回することにより集材木の仕分けを行うことができる。 タワーヤーダよりさらに簡易な索張りが可能で、条件により機動的かつ効率的に作業ができる。 |
フォワーダ | 木材を荷台に積載して集材する方式の集材専用トラクタ | 主に短幹材を荷台に積載して運ぶ。 ブーム式の油圧グラップルを装備しているタイプが多い。 |
スキッダ | 木材を牽引する方式の集材専用トラクタ | 主に全幹(全木)材をウインチ、グラップル等を用いて牽引して集材する。 |
三重県における作業システムの目標
県内の森林は急傾斜地が多く、人工林では傾斜25度以上の森林が全体の70%を占めています。このことから、林内走行車両を使用した作業システムの普及を図ることは難しく、林道、作業道等の路網と架線集材を組み合わせた作業システムを中心に考える事が必要となります。
現在、三重県で普及している従来型の作業システムは、1.「チェーンソーによる伐木造材」+「集材機による架線集材」+「トラックによる運材」で、専業型の作業システムによる労働生産性は、1人1日当たり2.0m3となっています。(平成18年度素材生産費調査)
また、この作業システムにおける作業所要時間を分析すると、伐木造材工程では、伐木20~30%、枝払い・玉切り70~80%の割合となっています。伐木作業は、地形上の制約からチェーンソーを使用せざるを得ませんが、枝払い・玉切り工程については、プロセッサによる機械化が可能となります。
集材工程では、架線の架設・撤去に要する時間が生産性を低下させている現状から、架設・撤去が簡易で、機動性のあるタワーヤーダやスイングヤーダ等の架線系の高性能林業機械を核とした作業システムを確立することが効果的となります。
以上のことから、今後、労働生産性を向上させて低コスト生産を実現させるための目標として、次のような作業システムを構築していく必要があります。
急傾斜地における作業システム
急傾斜地における作業システムとして、2.列状間伐を前提とした「チェーンソーによる伐倒」+「スイングヤーダによる集材」+「プロセッサによる造材」の組合せが適当と考えられます。しかし、県内の路網密度は18.3m/haに過ぎないことから、材をトラックに直接積み込める箇所は限られてきます。
そこで、「作業路の開設」と「フォワーダによる運搬」まで組み合わせた作業システムを基本に考える必要があります。
なお、この作業システムを有効に活用するには、路網の整備が不可欠であり、スイングヤーダの適正最大集材距離を80~100mとすると、ha当たり70~90m※の路網を整備することが必要となります。
(※ 路網密度=2500×f×(1+n)/X、路網配置係数:f=1.0、迂回率:n=0.44、平均集材距離:X=40~50mとして算出)
緩傾斜地における作業システム
林地の傾斜が25度未満の緩傾斜地における作業システムとしては、3.「チェーンソーによる伐倒」+「グラップルによる集材」+「プロセッサによる造材」+「フォワーダによる搬出」又は、4.「ハーベスタによる伐倒・集材・造材」+「フォワーダによる搬出」、4'.「チェーンソーによる伐倒」+「ハーベスタ/プロセッサによる集材・造材」+「フォワーダによる搬出」の組合せなど、できる限り路網密度を高めて林内走行が可能な車両を使用した作業システムが効果的であると考えられます。
小規模型の作業システム
また、このような大型機械による作業システムだけでなく、5.「チェーンソーによる伐倒・造材」+「小型の林業機械(林内作業車等)による集材」といった、個別林家でも導入が可能な小規模型の作業システムを構築することも必要となります。
なお、このような低コスト作業システムで県内の全ての現地をカバーすることは困難であるため、これらのシステムを基本として在来型の作業システムにより補完していく必要があります。
三重県における低コスト作業システム
三重県における低コスト作業システムの目標を類型化すると、
の5タイプに大別することができます。(各タイプの体系図はこちら)
(スイングヤーダ/プロセッサ/フォワーダによる作業システム)