なすび伐り林業
名称の由来
木材の伐採収穫を太く実ったものから摘んでいく野菜のなすびの収穫に例えて呼ばれている。
位置
太平洋に流れこむ熊野川上流に位置する大又川流域の熊野市北部の五郷、飛鳥地区
経緯と現状
かつてのいかだを流して搬出しなければならない地理的条件と温暖多雨な樹木生長の良い気象条件により発達した。
いかだ流しを行うため4m材の末口直径15cm以上の径級に達した材でなければ採算が取れなかったことから、その規格に達している天然林の優良木を択伐することから始まり、その方法が人工林へ移行していったのではないかと言われている。
ダム建設、陸路輸送の発達、一斉林施業の集材機による搬出の普及及び人件費の高騰により、現在ではわずか数林家が施業するまでに減退している。
施業方法
なすび伐りは、択伐(ぬき伐り)施業の一つである。
- 目通り周囲1.5m以上になったものから伐採し搬出する。
- その切り株の周囲に5、6年生の大苗5~6本を植栽する。
- 数年に渡って伐採と植栽を繰り返す。
- 保育管理
・つる切り、不良木の除伐と下層木育成のための枝払いを行う。
・下刈りは下草が繁茂しないため必要が無い。
・間伐も行なわない。 - 自然に数段の樹冠層が形成維持されていく。
長所、短所
長所
- いつでも伐採可能
- 育林のための経費が少ない
- 林地の地力が減退しない
- 伐採材積の把握ができる
- 優良材が生産できる
短所
- 林木の成長が悪い
- 伐採、搬出が難しい
- 台風等の被害を受けやすい
- 作業道の整備が必要不可欠